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不思議と繋がるみっつの物語:ベイビーわるきゅーれ2ベイビー、仕掛人藤枝梅安2、そしてダンジョンズ&ドラゴンズ
先週のてんぐは金・土とダンジョンズ&ドラゴンズを字幕版と吹替版を二日連続で見てましたが、今週の金・土はベイビーわるきゅーれ2ベイビーと仕掛人・藤枝梅安2を見てきました。
作風も世界観も全く違いますが、どちらも“殺し屋”が主人公となるふたつの作品を同時期にスクリーンで見られる。こういう天の配剤もまた、劇場鑑賞の楽しみのひとつですな。
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というわけで、今日はこの2本の殺し屋映画の感想を述べてみます。
ベイビーわるきゅーれ2ベイビー:殺し屋たちのユルユルかつダルダルな日常
「もし殺し屋が社会人として暮らしてたら?」という不条理極まりない世界観を通した前作を半ば偶然CSで見て、「これはイカすな」とてんぐは気に入りました。
そのベイビーわるきゅーれの続編が公開されると聞いて、「さてどうなるものかな」「変に変わっちゃったら嫌だな」と思ったものでした。
では実際に見てどうだったかというと、「脈絡もとりとめのない」会話のリアリティが異様に高いちさととまひろを見て「全く変わってねえな、この子たち」と安心しました。いや、安心しちゃいけないんですけどね、スボラさのせいで今回は生活水準は急降下しちゃったし。
そんなユルユルかつダルダルな空気と、邦画トップランクのアクションを見せてくれた高石あかりと伊澤彩織、どちらもますますファンになりました。
特に、高石あかりの賭け将棋のシーンで見せた目力は時代劇適性の高さを感じましたし、伊澤彩織がラストバトルで見せたフィジカルの強さと狂気と紙一重の不敵な笑顔が生み出す強者のオーラは圧巻でした。
そして今回の敵役、ポンコツ人生とやはりAクラスのアクションを見せるゆうりまこと兄弟を好演した丞威と濱田龍臣を見てると、D&Dのようにシャドウランやサタスペを映像化する時はこの人たち呼んでほしいですね。
仕掛人・藤枝梅安弐:この世で最も愚かな商売、仕掛人
仕掛人・藤枝梅安といえば剣客商売や鬼平犯科帳と並ぶ池波正太郎の代表作です。
そして、代表作と呼ばれる所以は、その作者の見出した世界観、すなわち世界観を色濃く投影してることにあります。
池波正太郎の場合は、「人は良い事をしながら悪い事をする」という言葉でしょう。
鍼医者として患者の面倒を見る一方で、仕掛人としていかに「生かしておいては世の人の迷惑になる……」という者であっても人の命を奪うことを生業とする藤枝梅安の、自ら認める矛盾した生き方はその世界観の象徴です。
その世界観の持つ業の深さ、逃れきれない因縁と、死という終焉すら得られない救われなさ。まさに池波ノワールが今回は全開でした。どのくらいかっていえば、「いま舌鼓打ってる場合じゃないから」と言わんばかりに、池波作品名物のメシウマ描写がほとんど見られないくらい。
そんなダークで重いムードに浸れる二時間は心地よかったです。
そしてCパートに登場したキャラに「嘘だろ、おい」と声が出そうになりました。もしかしたら、この藤枝梅安二部作を入り口に、スーパー池波大戦的な企画が始まろうとしてるのかもしれません。
4DXダンジョンズ&ドラゴンズ:ダンドラは、何度見ても、飽きはない
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藤枝梅安は確かに素晴らしい時代劇ノワールでしたが、それゆえに重く苦い。
この気持ちを抱えて家路につくのもなあと思ったので、カラッとした気持ちになるべく、試写会から通算して4回目のダンジョンズ&ドラゴンズを見てきました。
封切から一週間が立ち、最近はD&D有識者による詳細な解説も公開されてきてます。
そして、こういう解説に触れて見落とした要素に気付くと、また改めて見たくなるものです。そうてんぐが考えた時には、もう座席を取ってました。そう、とあるイタリアのギャングの言葉のように。
そして、どうせ見るんだったら、劇場でなければ味わえない体験をしようと思い、今回はちょっと奮発して4DXで見てきました。
4DXの評判は聞いてましたが、実際に体験してみるとそれ以上でした。
冒頭のレベルズ・エンド監獄での氷を削る作業ではエドガンよりホルガの方が激しく揺れることでふたりの筋力値の違いが尻でわかったし、ドリックの変身チェイスでは飛んできた矢の風が吹いてきたし、アンダーダークでのゼンクとサーイの刺客団との対決やデブゴンもといテンバーシャウドとのチェイスは身体からもテンションも上げてくれましたし、そういう揺れが加わると市街地でファイアボールやミーティアスウォームをぶっ放すソフィーナへの「イカれてやがる、この魔女!」指数もさらに上がりました。(なお、有識者によると、このソフィーナでさえレッド・ウィザード基準では必ずしも武闘派・強硬派というわけではないらしいです。じゃ武闘派・強硬派はどんだけヤバいんだよ)
吹替で見た人は字幕版、字幕で見た人は吹替版、2Dの後は4DX。
何度見ても飽きることがない映画、それがダンジョンズ&ドラゴンズ:アウトローたちの誇りです。
不思議と繋がる三つの物語の世界観
ベイビーわるきゅーれと仕掛人・藤枝梅安とダンジョンズ&ドラゴンズ。
それぞれ全く違う作風とジャンルの映画です。
でも、てんぐの目には、この三つの物語の世界観をグラデーション状に繋ぐものが見えた気がしてます。
キーワードは“嘘”と“真”、そして“恋愛ならざる人と人の繋がり”。
ちさとはしょーもない嘘をついてまひろを珍しく激怒させてMMAじみたストリートファイトを始めてしまいました。
梅安も彼が出会った侍も、どちらも仕掛けに関する“嘘”を重ねた会話を苦いものを呑み込みながら交わし、それによって誠実な暮らしを歩む矛盾を見せました。
エドガンもキーラに対して自分の本心についての“嘘”をつき、そしてゼンクに対して「宝は民に分け与える」という嘘の誓いを“真”に変えることでフォージとソフィーナの陰謀を打ち砕きました。
そして、この三つの物語の主人公たちは、いずれも恋愛感情ならざる絆によって結びついていました。
最近てんぐは「七割の普遍性、三割の独自性」という言葉を意識してます。
剣と魔法の異世界ファンタジーであれ、現代や江戸時代の日本であれ、人の営みや心というものはそう変わらない。
その変わらないもの、普遍的に共通するものに対して真摯に、あるいは「普通そうじゃね?」というくらい自然に受け止めたものこそが、それこそ世間の七割くらいから真に幅広く愛される作品になるのじゃないか。
ここ数週間の映画体験で、そんなことをてんぐは考えました。
てんぐが今後楽しみにしてる映画
今後楽しみにしてる映画としては、まずはスーパーマリオの映画かな。
D&Dのように、こちらも「ゲームの話を物語に落とし込む」ことができるかどうか。そこが見どころです。
時代劇からは、「大名倒産」が気になりますね。
それにしても、神木隆之介ってフラと愛嬌のお化け(要所でシリアス)ってキャラが定番になったもんだなあ。
いまや無視できない存在となった中国エンタメ界からは、アニメ映画「兵馬俑の城」の名前を挙げたいですな。
アメリカからなら、MCUのマーベルズも挙げたいですし、少し先になりますが、スターウォーズの新作映画も無視できません。
しかし、いま一番の注目作は、「岸部露伴ルーヴルへ行く」でしょう。
去年は月に一回くらいのペースで映画館に行ってましたが、今年もそれくらい映画館に行きそうです。楽しみ楽しみ。