感情は『赤』でも『青』でもなく、常に『紫』である。
昔から紫色が好きなんです。
その理由は、よく言えば寒と暖、両方の要素を併せ持つ色だから。
悪く言い換えれば、中途半端な色だからです。
感情を色で考えてみましょう。
赤色から連想されるのは、どんな感情や性格でしょうか?
優しさ、思いやり、愛といった温かいもの。もしくは熱血、恥、怒りといった激しいものが多いでしょう。
では青色から連想されるのは、どんな感情や性格でしょうか?
悲しみ、寂しさ、憂鬱といった冷たいもの。または落ち着き、無関心といった、静かな感情と結びつけられることが多いでしょう。
しかし実際生きていて、「怒り一色」とか「悲しみ一色」という極端な感情に染まる経験は、なかなか少ないように思います。
だから感情を色で表した時、ただの赤一色とか、青一色ってことはあまり無いんです。ほとんどが中間の紫。しかし紫色といっても無数にあって、「赤寄りの紫」とか「限りなく青に近いが、よく見ると紫」とか。色々あるんです。
「紫色」と一口に表せないということはつまり、その感情を明確に識別する名前が無いということでもあります。
例えば、「嬉しい」にも無数に種類がありますよね。
恋が成就した瞬間は、「嬉しいし、安心したけど、ちょっと恥ずかしいし、不安や心配もある」だったりします。
姉の結婚が決まった幼い弟は、「嬉しいけど、嫉妬もしているし、姉がとられてしまうようで悲しいし、寂しいし、怒っている」かもしれません。
こうやって前後背景があったり、ストーリーに乗せると比較的共感は得やすいのですが、感情を正確に伝えることはなかなか難しいものです。
私は趣味で小説を書いていますが、登場人物の心情を描写するため、セリフや表情だけでなく、天気や音、文の間やリズムを駆使して、場の雰囲気全体で伝えようと出来る限り工夫しています。しかしそれでも、私が思い描いた全てが読者にそっくりそのまま伝わることは不可能です。
しかし、それで良いのです。
複雑だからこそ、人間味があって美しいと思うのです。
言い表せない色、名前の付いていないモヤモヤを抱えたまま歩んでいるからこそ、人生はこんなにも面白いのだと、私は思います。
以上、ラケットでした。
またね!('ω')ノ