#135 メンバーはあなたが望む答えを「アテ」にきます 24/4/9
みなさん、こんにちは。
今日は、マネージメントするとは、を考えてみます。
きっかけは、ある課長が、従業員メンバーが申し出たことをそのままを聞き入れて処遇を判断していたことです。
それを知ることになったのは、評価キャリブレーション会議です。当該従業員の評価は、かなり厳しい下げ評価でした。評価理由の詳細を聞くと、課長は以下のように説明されました。
「従業員から『今の役割を担うのがしんどいため、退職したい』と申し出があり、期の途中でその役割を解きました。ゆえに今回の査定評価としました」
この課長が所属する事業は、給与水準と役割(役職に近い役割)をある程度相関して処遇を決めて人事運用をしています。しかしながら、評価制度は職務等級ではなく、純然な職能評価ではありませんが、実態はかなりそれに近い制度です。
ですから、役割を解いたからといって、変更後の役割に応じた給与待遇に急降下、急変させることは避けたほうが良いと考えます。
今回の従業員は、当人と希望のもとであることは確認を重ねているようでしたから、労務トラブルのリスク自体はあまりない、と考えられます。確かにその点はクリアしています。
一方、自社の従業員に対するわたしたちの価値判断基準、マネージメントのスタンスがそれで良いのか、試されるケースでもあります。わたしはその観点で疑問をもちました。そこで、問いかけてみます。
「本人自ら役割を下げてほしいとの希望だった点は理解しました。しかし、まず、この従業員はそれまでの役割を果たせないパフォーマンスだったのでしょうか」
「いいえ、その役割自体は担えるパフォーマンスの程度でしたし、そのスキルも持っています」
「彼女が担当するチームの中での品質改善の取り組みを働きかけました。しかし、彼女の上役からOKが得られず、上手く進められない時間が長引きました。その間、葛藤が続いた結果、段々と自分にはこの取り組みを進める力が足りない、スキルがない、と思うようになりました。そして、役割を下りたいとの決断に至りました」
これが、ことの背景でした。わたしは人事の立場でこの背景・詳細を聞き、やはり疑問を深めることになります。
そして、当該課長と出席者の課長陣、部長にこう投げかけました。
「この理由や背景で、従業員本人の申し出のとおりに役割を変更したからといって、直ちにこの給与の下げ方をするのが果たして適切でしょうか」
従業員の言っていること、それはタテマエの可能性があります。ホンネはどういうことなのか、課長職、部長職それぞれに、自分の意見を考えてほしいと考えたからです。
一方このときに、当社人事制度が職務型制度ではなく、ミッショングレード、実質的には職能型制度である、と形式的なルールを持ち出して、規則的な権力で制すことも選択肢としてありますが、そのような考えは初めから持っていません。
「自社の従業員に対するわたしたちの価値判断基準、マネージメントのスタンスとしてどうありたいか、それで良いのか」
こうした自分たちのBeingにかかる、思考スタンス、価値判断のあり方に至る視座で考えてみてほしい、との想いをわたしは持ちます。ですから、それ以上は、わたしからは提示しません。
とかく、人は役職や年齢の上下、権力構造を意識してしまう性質です。とりわけ、会社の中の役職や年齢はそれを一層強化します。
ですから、自身が役職者の立場だったり、仕事を教える先輩の立場であれば、なおのこと、注意が必要です。
注意とは、相手の同僚、チームメンバーは、あなたやわたしの意図を汲んで、答えをアテにくる、ことです。上長や先輩が、そう望んでいることを想起してアテにきます。その前提を持ち、言動の背後にあるホンネを想像したいところです。
さらに、自分たちの行動スタイルが、思考判断がどうだと思うのか、考えてみた上で、従業員の言うがままに、処遇を変更するのか、あるいは違うアプローチ方法を見つけ、対応していくのか、です。
みなさんは、相手に希望、ニーズをそのまま受け取った場合、どのように立ち居振る舞いますか。
それでは、また。