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人間らしさ

そういえば私はエッセイの中でよく
「私はロッククライマーだ」
と言っているが、
ロッククライミングについて
書いたことがなかった。


今回は私の
ロッククライミングライフ in アメリカ
について書かせていただきたい。



まずはクライミングと私の
運命の出会いから説明したい。



私が初めてクライミングというのを知ったのは、
その当時デートしていた男性に
ボルダリングジムに誘われたことが
キッカケだった。



当時の私は、正直そんなに乗り気ではなかった。
クライミング?
壁に登って何が楽しいのさ?
と、最初はクライミングに対して
ネガティブに考えていた。
性格悪いのが丸出しである。





ボルダリング当日。
赤や黄色、緑など様々な色や形の
クライミングホールドが人工壁に散りばめてある。
人工壁も垂直なのもあれば、
傾斜が強かったり、
円形状だったりもする。
見ているだけでも何だか楽しい。
地面は怪我防止のためか
分厚いマットが敷かれている。


ジムのレンタル用のクライミングシューズに
足を入れ込む。
窮屈な位がいいよ。と教えられたので、
通常よりワンサイズ小さいサイズを借りていた。
なんとも履き心地の悪い靴だ。
心の中でそんな悪態をついた。


チョークを両手につけて、
早速ビギナーのルートを登ってみた。
色は紫。
ホールドは持ちやすい。
どんどん上まで登っていく。
最後のホールドを掴み、
さて下に戻るかと下を見下ろした時、
自分が意外と高い場所にいることに気づく。
急に足がすくむ。
だがいつまでも
壁にへばりついている訳にはいかない。
恐る恐る降り、
着地できそうな高さからジャンプをした。





指先がジンジンしている。
心臓がドキドキしている。
息がハァハァしている。


え、クライミングって楽しいじゃん!




それから私はデートの相手はそっちのけで、
いくつかのルートを夢中で登った。
腕はパンパンになり、
最終的に手のひらの皮が剥け、
そこでその日をクライミングは終了した。



身体能力には多少の自信があったはずなのに、
全然上手く登れない。
なんなら子供の方がずっと上手く登れている。
競争精神のあった私に火をつけたわけだ。



外見から入る私は、
続くかも分からないのに
クライミングシューズとチョークバッグを購入。
数回ボルダリングジムに行き、
少しづつ上達していくかに思われた。





が、そのデートしていた男性とは長く続かず、
それと同時に
ボルダリングに対する気持ちも冷めていった。
せっかく購入したギアたちは、
クローゼットの奥に数年間眠ることになった。
しかも引っ越しの際に
もう使わないだろう。と、
それらを断捨離してしまったのだ。


数年後、私はハイキングやバックパッキングに
夢中になっていた。
そうなると自然に岩や大きな壁に興味がいく。
ここを登れたら楽しそうだな。と。
目標をアウトドアクライミングとし、
私はまたクライミングジムに通うようになった。




しばらくは一人で手軽に登れる
ボルダリングを楽しんでいたのだが、
腰や足首の負担が大きかったようで
よく怪我をするようになった。
更に壁から落ちた時の着地が上手くいかず、
左足膝のじん帯を痛めてしまったことがあった。
治療とリハビリには時間がかかった。
だがどうしても登りたかった私は、
オートビレイ(自動ビレイ機)を使って、
完治していない膝で登り始めた。
その頃の私は、
クライミング無しの生活は考えられなかった。


それらの怪我の経験と
長期目線でクライミングを続けたい
という思いから、
ロープを使ったクライミングに
シフトすることに決めた。
そこから私のスポーツクライミング人生が
始まった。


アウトドアで登れるように
基本スキルや知識を身につけ、
必要なギアを集めだし、
登れる岩場を探した。
そして一緒に登れるパートナーたちと
ニューヨークの岩場を楽しんだ。




ジムでのクライミングは続け、
難しいルートを登っている人たちに
胸をときめかせたりもした。
私にとって、
どんなにかっこいい俳優やモデルよりも、
強いクライマーが誰よりも魅力的なのだ。



そして共通の趣味で狸と出会い、
彼と一緒に住むために
私がサンディエゴに引っ越す形となった。
彼と一緒になってからは、
暇さえあれば岩場へ出向いている。
クライミングをメインとした旅に出て、
その土地の壁を楽しむようになった。
山の形状が違うように、
壁の触り心地や色もそれぞれ異なるのだ。
もっと色々な場所で登ってみたい。


兎アート



ロッククライミングを始めてから、
更に自然の中で遊ぶようになった。
自然を感じるだけで幸せを感じる。
岩場で出会ったクライマーたちとの会話も楽しい。
壁から見渡す景色は最高で、
涙が出そうになる時もある。




クライミングは私に人間らしさを取り戻させた。



子供のころに感じた
あのワクワクしたりドキドキする感じを、
大人になるにつれて忘れていったように思う。


今、私は次のクライミングの旅を楽しみに、
日々のトレーニングに励んでいる。



80歳になってもクライミングを続けていたい。



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