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【エッセイ】連載:Ep5 窮地に立たされたマヌケ兎、水を求めて

さて二日目の行先はというと、Mt. Brown Lookout(マウンテン・ブラウン・ルックアウト)だ。
こちらは標高7487Ft(約2282m)の山である。
約7時間半のトレイル(ハイキングコース)である。
後にこのトレイルで大失態をおかすことになるとは、呑気な兎は知る由もない。

なかなか厳しいハイキングになりそうな予感


トレイルヘッド(登山口)までシャトルバスで向かった。
9am、ハイキング開始。
序盤は馬小屋があったり緑が美しかったりと、なんだか余裕な登山道だった。

しばらく歩くと途中二股になる道があり、私はMt. Brown Lookoutの方へ歩き出した。
このトレイルは数年前に山火事にあったらしく、木々が裸んぼうの状態だった。
焼け焦げた木々たちを横目に、どんどん前進していく。

まだ焦げ臭さの残るトレイル


徐々に日が高くなるにつれ気温も上がっていく。
日陰が一切無いトレイルを歩く私。
体がジリジリと焦がされていく。
喉が渇いたし水でも飲むか。と水筒を取り出した時に気づいた。

予想気温30度


しまった!!!


そう、私は初歩的な水の補給を忘れたのだ。
水筒は一つ。
中には700mlほどの水しか残っていない。

一人山の上で叫ぶ兎


引き返すべきか悩んだ。
だが四分の一ほど上り切っていたため、そのまま登頂を目指した。

水分補給は最低限に。
ちびちびと飲む。

何度地図を見ても水分補給をできそうな川は見当たらない。
そして相変わらず日陰もない。
というより、もはや焼け焦げた木々すらない。
もうここには限られた生物しか存在していないのか。
おでこや首からは滝のように汗が噴き出ている。
水筒の中身は300mlほどになっていた。

もはやゾンビ🧟‍♀️


やはり引き返すべきか……そうしなければ、私が焼け焦げた木になってしまう。
そう本気で思っていた時、前からゆらゆらと何かが近づいてくる。

陽炎の先に何か見える


これは幻か。
お迎えが来たのか。

目を凝らすと、徐々に近づいてきたものが人間だと分かった。
私は即座にその前方から近づいてきた男性に話しかけた。

ゾンビが近づいてきて驚く男性


トムボーイ:あとどれくらいで頂上に着きますか?

男性A:あと一時間半くらいかな!

トムボーイ:(まだ一時間半もあるのか……)もし十分なお水があるようでしたら、少しシェアして頂けますか?

男性A:え、水ないの?好きなだけあげるよ!

終始さわやかな笑顔の彼は、水を1Lほど分け与えてくれた。
彼はきっと神なのだ。
水の神様なのだ。

神は終始笑顔だった


彼は私に水を分け与えると、笑顔で走り去っていった。
どうやら彼はトレイルランナーだったようだ。
私はごきゅごきゅと水を飲んだ。

そうして奇跡的に水分をゲットした私は、何とか登頂を達成した。
山頂から見た景色よりも、男性が命の水をくれたことに感動し、正直その後のことはそこまで記憶に残っていない。
マーモットを見つけてはしゃいだくらいだ。

兎に興味ねぇっす的な態度のマーモット


こうして干からびずに無事下界へ戻れた私は、命へ感謝し浴びるようにビールを飲むのであった。

注)ハイキングは危険なため、無理せず安全に楽しみましょう



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