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イキりドラマースターターセット【フィルイン編】

ドラムセットを始めた頃、なかなか上達できた気がしなくて辛かった思い出がある。

初心者って何をモチベーションにしたら練習に励めるんだろう」という回想が本稿の出発点だ。耳コピはできないし、パラディドルを応用した複雑なフィルインなんて無理。そんな人に、まずはコスパよく、かっこいいフレーズを叩けるようになってもらって、練習のモチベーションを上げてもらおう、本稿はそういう意図でまとめたフレーズ集だ。

(お断り:だからといって、コレを読めばすぐにかっこいいことができるわけではない。上達には地味な基礎練習は欠かせず、ある程度の時間投下も必要だというのが私の立場だ。金の弾丸はどこにもない)

イキりドラマースターターセット」と煽り気味のタイトルを付けてしまったけれど、当時の自分が身につけたかったレベル感のフレーズと、それを実現するコツを盛り込み、できるだけ応用のきくフレーズを選んだつもりだ。たくさん練習して正々堂々とイキってほしい。

対象ジャンルはポップス、ロック、フュージョンあたりで、エイトビートまたはシックスティーンと合わせて叩くフィルインを紹介する。

スティックを持つ前に

1. フィルインはオカズ

「オカズばっかり食べないでご飯も食べなさい!」なんて親に叱られた人も居るだろうが、フィルインはオカズであり、主食たる通常のビートの合間に置かれる演奏スタイルである。フィルインは一義的には "Fill in(間を埋める)"  だ。

ある時、4小節ないし8小節の度に必ずフィルインを入れるドラマーを見たことがあるが、良い演奏には聴こえなかった。フィルインには然るべき使命を与えてやるべきだ。例えばそれは音楽の流れを変えるきっかけであったり、バンド全体における盛り上がりの補助であったりする。白米を食べつつ、ここぞというところでオカズをかき込む演奏を目指していこう。

2. フレーズを歌って、前後と繋げよう

そのフレーズ、歌えますか?」は常に自問自答してほしい。「ツカタッカ、タデドン」こんなやつで良い。頭の中で思い描いたフレーズを口で歌える、というのが出発点になる。逆に言うと、口で歌えないフレーズは実際に叩いても微妙な仕上がりになりがちだ。楽器でいい音を出すためには、音のイメージを明確化しておく必要がある

余裕のある人はドラムス以外の旋律とつなげてみるのが良い。前後のメロディ、ベースライン、対旋律、何でも良い。「タララ〜、ララ〜ラ〜、ンツカタッカ、タデドン、チャラリラ〜!」のように。

歌いづらいところや違和感のあるところが出てきたら、そのフレーズが曲にハマっていない可能性がある。おかしなフィルインで音楽を壊していないか立ち止まって考えるべきだ。

本稿で紹介するフィルインはドラムス以外のパートを省略しているが、実際現場では「どんなフレーズがハマるのか」と、周りの音を聴きながら吟味する作業が必要になるだろう。

3. ハイハットを上手く使おう

3つ目だけ、やけに具体的な提案で恐縮だ。初心者ほどフィルインにハイハットを使わない傾向がある(俺調べ)。ハイハットは刻んでビートを示すのみならず、コンパクトなクラッシュシンバルのようにも使えると認識して欲しい。「クラッシュを使うにはちょっと大げさだけど、ちょっと広がった響きが欲しい」そんなときにハイハットをオープンにして鳴らすとハマったりする。

ハイハットは閉じて刻みによし、開いてフィルインによし。太鼓と合わせてフィルインに参加させると、グッと雰囲気が良くなる。本稿でもハイハットを用いたフレーズを多数紹介しているので、ぜひマスターしてほしい。

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短めでハマるシンプルフレーズ

まずは2拍分の小フィルインから始めよう。

1. ドラッグを用いた「ツァカドン」フレーズ

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ドラッグ(2小節目4拍目の装飾音符)がポイント。参考音源ではフラムが詰まりすぎているが、もう少し音符同士のタイミングを広げてよい。4拍目1つ目のスネアはバックビート(2拍目、4拍目の強打)の代わりのため、このスネアを4拍目のオンタイムとして、アクセント気味に叩くこと。

このフレーズが汎用性が高い。シンプルながら、装飾音符が入っているのでちょっとオシャレに聴こえるのもポイントだ。

2. 裏拍ハイハットオープンのシンプル・オブ・ザ・ベスト

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やる気ねぇのかっていう声が聞こえてきそうなフレーズだが、4拍目の裏でハイハットを開けるだけでも立派なフィルインになる。むしろ、小盛り上がりくらいで留めておきたいシーンではコレくらいでちょうどよいこともある。次小節の1拍目でハイハットのクローズは確実に、メリハリを付けるのがコツ。

ハイハットをオープンするタイミングの右手は自ずと裏拍アクセントになるので、スティックをやや「ハイハットに入れてやる」イメージで行こう。やってみるとわかるが、次小節頭のバスドラムの足の動きと、ハイハットクローズの足の動きは一致する。フットワークが苦手な人は、左右の足の動きにも注目して練習すると良い。

3. バックビートを外してハイハットでブレイク

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あえてバックビートを外すというのもオシャレに聴こえる。バスドラムもスネアドラムも使わず、ハイハットだけで2拍分埋めることで、ブレイクのような雰囲気を醸し出せる。2拍目ウラのシンコペーションを効かせ、3拍目のオモテはフットペダルでクローズさせる動作で音を出す。4拍目裏の8分音符を16部音符2つに変えて演奏しても良いだろう(「ッチキチ/チッチー」から「ッチキチ/チキチー」になる)。

両手でハイハットを叩くことになるため、両手で均等に粒感を表現できるように練習すること。あえてスネアを叩かない浮遊感を楽しんで欲しい。

4. バスドラムがポイントのシャンシャンフレーズ

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両手はフラムで4分音符2つを演奏し、バスドラムで16分音符を入れていくパターン。両手でしっかりテンポ感をキープしつつも、バスドラムが細かい音符で刻むため、自分がしっかりビートを感じながらシックスティーンっぽい動きを出すことができる。

バスドラムで16分音符が演奏できるようになると音楽の幅が広がる。キックはいつも4分音符か8分音符でばっかり踏んでるという人には、練習も兼ねておすすめしたいフレーズだ。

5. 定番6連符のお決まりフレーズ

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RLLRRLという超有名な手順を使った6連符フレーズ。ポイントはアーティキュレーションにあり、6連符の頭はfp(フォルテピアノ)っぽく、頭をアクセントにして中間を抜き気味に、その後クレシェンドっぽく巻き込んで4拍目の山型アクセントにつなげる。4拍目の裏は譜例のようにタムで埋めたり、ハイハットオープンで埋めたり、バスドラムに任せて手はお休みにしたりと、お好みでアレンジしてほしい。シーンによっては4拍目のスネアはオープンリムショットにしても良いだろう。

まずはしっかりRLLRRLを練習すること。この手順の6連符は使えるテンポ帯が広い上、色々なパーツに振り分けることで様々なフレーズを生み出すことができ、とにかくコスパが良い手順の一つだ

5番外編. 6連符フレーズ+ハイハット

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4拍目にハイハットのオープンを突っ込ませた応用例。16分音符一つ分前にハイハットが入ることで、シックスティーンのグルーヴ感を醸しつつ、フィルインに「オチ」をつけることができる。適当なタイミングでハイハットオープンを入れていくパターンは応用が効くため、レパートリーに加えておくと良い。

6. スケベドンでまとめる3連符フレーズ

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一部のドラマーでは有名な「スケベドン!」を使ったパターン。3拍目がそう聴こえるのが由来らしい。3拍目のハイハットオープンで景気よくフレーズを始め、スネアとタムを3連符で回してフラムで着地させる。

ポイントは「スケベドン」の「ドン」のバスドラムで、ここのバスドラムはフィルインの一部として重要な音になる。手足の連携の練習も兼ねて取り組んでみてほしい。

7. ハイハットとトムトムのコンビネーションフレーズ

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装飾音を伴ったスネアからハイハットオープンにつなげ、トムトム2つで次小節頭に向かっていくフレーズ。4拍目のウラはバスドラムを入れても良い。フィルインで完結するというより、次小節への推進感が強く、私自身は盛り上げのつなぎに使うことが多い。

最初のうちはスネアだけで2拍分練習し、「タッタタ/ンタタン」が上手くできるようになること。その後装飾音を付け、ハイハットやトムに手順を振り分けると良い。スティッキングの練習にはいいお題だろう。

8. シンバル乱れ打ちの3/3/2 フレーズ

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16分音符換算で3/3/2で区切ってシンバルを3つ鳴らしていくフレーズ。想定では、鳴らすのは全て違うシンバルだが、数が少ない場合はハイハットをオープンにして参加させても良い。「太鼓を細かく鳴らすには大仰だけど、ちょっと盛り上げておきたい」なシーンで活躍するフレーズ。

譜例を見るとややこしそうだが「シンバルは常にバスドラムと一緒に鳴っている」「シンバルは常に右手でたたき、合間に左手でスネアを鳴らす」と考えるとそんなに複雑ではない。シンバルを右に左に叩くので見た目も派手でかっこいい。ライブ受けも悪くないのがミソ。

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長めでキマるロングフレーズ

ここからは4拍分の大きなフィルインをいくつか紹介していく。

9. スケベドンとハイハットオープン

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タム回しを中心に、本稿の5番外編でも登場したハイハットオープンの「タチー!」をオチに加えたフレーズ。クラッシュシンバルは用いず、ハイハットとタム、スネアとバスドラムだけで完結するため、音のまとまりがよく聴こえる

今回のスケベドンは3連符ではなく16分音符で構成される。3拍目ウラウラのバスドラムをうまくハメられるよう、よく練習すること。このフレーズがうまくキマる頃には、シックスティーンのバスドラムがそれなりのレベルに達していると言える。より難易度は上がるが、4拍目のハイハットオープンに合わせてバスドラムを鳴らしても収まりが良い。

10. フロアタムから始まるヘビーで力強いシックスティーン

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冒頭はスネアドラム、フロアタムとバスドラムを同時に鳴らして力強くスタート、装飾音を挟んで16分ウラウラのハイハットを鳴らし、スネアとタム回しに突入する骨太のフレーズ

32分音符を交えた「タカタッカ」を上手くキメつつ、16分休符を詰め過ぎたり、走ったりしないようにシックスティーンのグルーヴを感じて演奏していこう。ハイハットオープンは派手目に鳴らしつつ、後半のトムトムは畳み掛けるイメージで。

11. ブレイクが命のハイハット+スネアピックアップ

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2拍目ウラウラのハイハットでブレイクをかけ、4拍目のスネアでピックアップするトリッキーな構成。それなりに癖があるフィルインのため、利用シーンは限られるが、ここぞというところでこのようなフレーズを使える引き出しを持っておくのは悪くない。

参考音源ではあまりいい音になっていないが、2拍目ウラウラのハイハットの表記は、オープンで叩いたその瞬間にクローズして「ジャッ!」っという歯切れのよい音を出してほしい意図。バスドラムも硬い音で合わせ、フリーズした一瞬の緊張感を生み出そう。セッションでのフリーソロなどでこれを繰り出すと抜群に効果的だ。

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以上、難易度も様々だが、「練習する労力の割に複雑でカッコよく聴こえる」フレーズをご紹介したつもりだ。

Easy win first ! この記事があなたの練習のモチベーションに寄与することを心から願っている。

マナセ/(Twitter: @r_manase)



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