「嫁」の誤用がいつの間にか定着していた話
ツイッターで「#意外にこれ知られてないんですけど」というハッシュタグがトレンドに上がっていて楽しませていただきました。内容は生活で役立つ豆知識から、自分では踏み込んだことのない領域の知識まで様々です。知らない事がまだまだたくさんあるのだと、改めて驚きました。富士山のある静岡県でも、富士山から見たら浜松市より東京の方が近いというのは言われてみれば確かにという小さな気づきを得られました。
私も何かしら「#意外にこれ知られてないんですけど」な話題がないかと考えてみました。一つ思いついたのが「嫁」です。嫁とは家に嫁いできた女性を指す言葉です。そして意外と知られてないのが、自分の配偶者のことを嫁とは呼ばないという点です。例えば田中太郎さんが花子さんと結婚した年します。花子さんは田中家の嫁であるとは言います。しかし田中太郎さんの嫁とは言いません。この場合は「妻」とか「奥さん」とか言うのが適切です。
個人を主体とするのであれば、自分の息子の配偶者のことを嫁ともいいます。先の例でいうと「田中太郎さんの嫁」は花子さんではなく、2人の間に生まれた男の子の配偶者となります。
ちなみにネットスラングで「俺の嫁」という言葉があります。これは自分の推しキャラを指す言葉です。この場合は新語として認識しているので個人的には特に違和感はありません。主にアニメキャラクターを差して使われていたのが発端だったと記憶していますが、最近はアイドルや芸能人など幅広く使われています。私にとっての俺の嫁は西木野真姫ちゃんです。
「嫁」の誤用について偉そうに講じてみましたが、残念ながら今は自分の配偶者のことを嫁と呼ぶのは正しい用法として定着してしまっているようです。ウィキペディアを見てみたところ、以下のように書いてありました。
嫁(よめ)は自分の息子に対する女性の配偶者を、あるいは自分の配偶者の女性を指す呼称である[1]。自分の男孫に対する女性の配偶者は「孫嫁」と呼ばれる。対義語は婿。
[1]の引用元は2018年に出版された広辞苑第7版とされています。本当に広辞苑にそう書いてあったのかを調べる術が無いので鵜呑みにするしかありませんが、本当であれば私としては衝撃的でした。既に誤用が正しい意味として定着してしまった証のようなものだからです。
言語は時間の経過と共に揺れていきます。間違った使い方でも一般的に通用する使い方となってしまえば、それが普通の日本語になってしまうのです。例えば「全然、大丈夫。」のような言い回しがあります。「全然」は否定形を修飾するものなので「大丈夫」には付かないはずです。これについては20年前の私が中学生の時に通っていた塾の先生が嘆いていました。しかし先生の嘆きも虚しく、今はこの誤用が定着してしまっています。
私たちは高校で古典を習いますが、その古典と比べたら現代の言葉は全く別の言語かと思うほどに異なります。それほどに揺らいでいくものです。言葉を誤用している場面を見かけるととても歯痒い思いを抱きます。しかし、これは受け入れていくしかありません。言葉の正しい意味を知ると同時に、誤用の違和感を吸収して受け入れる気持ちも必要なのだと肝に銘じる所存です。