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第29回 『オデュッセイア』第4歌

 スパルタに到着した、テレマコスとネストルの子ペイシストラスはメネラオスの館へ。
 メネラオスはいきなり、見知らぬ客人たちを快く歓迎する。
召使が「知らない人たちが来ていますが、どうします?」とか言うと、
メネラオスは「…まったく。お前がそんなに馬鹿だとは知らなんだぞ。せっかくお越しいただいた方たちだ。さっさとお通ししろ!」
…なんて言ってる。

 例の如く名乗る前から歓待を受けるテレ。豪勢な食事、着替えまで用意。

 メネラオスは何やらベラベラと話し出す。
「私帰還兵でして。いや〜、先の戦争では苦労しました。戦争(トロイア戦争)には勝ちましたが、帰りが大変で、あっちへフラフラこっちへフラフラ、帰宅に8年もかかりました。でも我が友オデュッセウスの苦労に比べたら…。あいつどうしてるかな、息子もまだ幼い時分に…」

「…」

 そうこうするうち、ひょっこりへレネが登場。「あらお客さん?」
ガァーン!
 へレネとは、あのヘレネである。本作『オデュッセイア』の前作『イーリアス』にて、旦那のメネラオスを捨てて、敵方トロイアの王子パリスの元に走ったあのヘレネ。戦争の原因を作ったへレネがそこいる。


説明します。『イーリアス』では、アカイア勢とトロイア勢の戦争が描かれているんだけど、それは上記の通りアカイア勢が勝った。だからメネラオスはピンピンしてる。で、負けたトロイアから逃げたへレネは、元のメネラオスん家に戻ったと言うわけ。そして女王に返り咲き…。

 いやぁ、逞しい!

 全く惚れ惚れするね。

 そして「あら客方、なんかどことなくオデュッセウスに似てるわね」
ヘレネがそう言うと、メネラオスも「あ本当だ。そっくりだ」

するとここでやっと「それもそのはず。さきほどから噂のオデュッセウスは僕の父、僕はその息子テレマコスですから。改めてどうぞよろしく」
「えぇぇー!」
 …となる。

 すると今度はへレネがオデュッセウスの思い出をベラベラ語り出す。
「戦争も終盤になる頃、オデュッセウスは木馬(あの有名な元祖トロイの木馬)の腹に潜伏して、トロイア城に入り、中に入ると「ジャーン! 愚かなトロイアども騙されたカァー、なんつって大暴れ…」
 実はこの時、オデュッセウスとへレネでひそひそ打ち合わせして、木馬作戦は成功したんだとか。
 で、何とかお咎めなし、へレネは元鞘に。しめしめ。

た、逞しい!

 見事だヘレネちゃん!

「ヘェ〜、そうなんですか父が。で、そのオデュッセウスは今どこ?」
やっと本題に入るテレマコス。
「え? あそうそうオデュッセウスね。あいつは…。いやその前に私の話を聞いてくれ。
私はうちに帰宅途中、まずエジプトに寄り、それからパロスって島に足止めを喰らったのだ。どうやら神々に祀る生贄の数が貧素だと言うので、その嫌がらせで。でパロスの海岸をオロオロしてたら、たまたま女神にあったのです。
自分はエイドテエという、海の翁プロテウスとか言うおじいちゃんの娘だと言うんです。で、俺たちスパルタ地方に帰りたいんです、っつったら、女神がいうには、ではプロテウスに方法を聞きなさいって。そのプロテウスさんは、昼になったらアザラシの大群と沖に上がってここらで昼寝するから、そん時尋ねなさい、って。
そう言われて、で、プロテウスを待ち伏せしてたら、娘の言う通り、アザラシの大群と一緒に人間のおじいちゃんが現れ、それがプロテウスらしいんだけど、
で、それっつって羽交い締めにしようとしたら、おじいちゃん暴れ出し、そのおじちゃんはなんか、ライオンやら蛇やら猪やら何にでも変身できるスーパーおじいちゃんなんだけど、しばらく格闘の末ようやく押さえつけて、大人しくなったら、ようやく帰路の道順教えてもらったんで、帰れた。


そしてその時、たまたまオデュッセウスの消息も聞いたんだけど、何やら彼の方はカリュプソっていう妖精になんか惚れられ、その娘の住む島に幽閉されてて出られないそうだ、と。これ君のお母さんには言わないほうがいいよ」

 退屈な長話に辟易したテレ君だったが、とりあえずオデュッセウスが生きていることだけはわかった。

「やった! あの女神の言うことは本当だった!」
「メネラオスさんありがとう。では一刻も早く国へ帰り、父を待とうと思います」

 一方、テレマコスの故郷イタケでは、荒くれ暗殺者の集団が、彼の帰りを今か今かと待ち構えていた。
 …続く。











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