まずやってみよう、得意を活かそう、変化を楽しもう。創業15年、三つの価値観の起源に迫る。 株式会社アールナイン
みなさんの職場には、社内の人に共通する考え方や行動の癖はありますか。
私たちアールナインでは大切にしている考え方を「3つの価値観」として掲げており、メンバー同士でもよく口にします。内容はとてもシンプル。
まずやってみよう。得意を活かそう。変化を楽しもう―。
言うは易し、行うは難し。今日は、創業者で代表取締役の亮さん(※全員あだ名で呼び合う文化)に3つの価値観ができた背景を、長期インターンシップ中の内々定者(大学4年生)が直撃インタビューします。
2009年に富山市で創業し、11年に東京移転、この7月で創業15年目を迎えたアールナイン。変化と成長を支える価値観の原点に迫ります。
■意外に古い、3つの価値観の起源
――社内でよく聞く3つの価値観、改めてそれぞれの意味を教えて下さい。
文字通りですが「まずやってみよう」は、すぐ行動です。アールナインは企業の採用や人材育成を支援する事業をしています。組織の人を巡る課題には正解がない。決め打ちではなく、お客様と色々試してみることが私たちの価値だから、行動を大事にしたい。私自身せっかちなのもありますが…。
――「得意を活かそう」「変化を楽しもう」はいかがでしょう。
得意を活かそうは、苦手を抱え込まず人と仕事を分け合うこと。苦手に向き合うことももちろん大切ですが、得意は磨くことで人は一層伸びます。変化を楽しもうは困った状態ですら楽しめる方法を考えること。ビジネスでは色んなことが起きる。いちいち驚いていたら成立しませんね。
――3つの価値観はバラバラではなく、円環しているのですね。
そうですね。全部繋がっていると思っていますよ。
――改めていつからどんな経緯で誰が掲げ始めたのですか。
3つとも私自身が大切にしてきたことなんです。創業当初から頭の中にはありました。ただ、言葉にして発表したのは、従業員が増え始めた2014~15年頃。社内の会議や集まりで「これが大事だよ」と伝え始めましたね。
■まずやってみよう~こうしなさいではなく、こうではないか~
――「まずやってみよう」について、決め打ちではなく色々試すことが価値とのことですが、答えを出さないことが価値ということですか。
社内やお客様と対話し、本当の課題を探し続けることに価値を置きたいんです。事業内容としては法人の採用支援なので、企業の採用面接や会社説明会などを第三者として代行するビジネスになりますよ。でも面接代行って、説明会代行ってこういうものだよねといった正解や限界を作りたくない。
――商材の形や定義を決めたくない、ということですか。
そうです。本当の意味での無形商材であり続けたい。対極は、完成した単一の答えを与えるだけのビジネス。商売としては簡単だけど、広がりがないよね。ワクワクもしない。お客様に「こうしなさい」を伝えるのではなく「こうではないか」を共に考えて新しい価値を創り続けたいんです。
――そのためにまずやってみる姿勢が必要ということですか。
そう。企業は最初に失敗のリスクを考える。私たちも考えますが、やっていく中で考えたい。新しいことも行動の中で「こういうことじゃないか」と言語化すればいい。失敗しても構いません。失敗かどうかやってみないとわからないじゃないですか。そもそも「失敗」かどうかも捉え方次第ですよね。
■得意を活かそう~周囲にどんな影響や化学反応があるのか~
――次に「得意を活かそう」です。これも社内でよく聞きますし、実際に人に任せる文化もありますが、正しくはどういう意味ですか。
生まれながら苦手なことは頑張って人並みにはなれても、なかなか得意にはなりませんよね。私自身、苦手なことがあります。役割分担した方がうまくいくという意味です。前職でパソコンの基本操作もおぼつかない派遣社員の方々と一緒に働いたことがあります。「ここだけ担当して下さい」と業務を切り分けたら、全体がうまく回った。活躍できる仕組みを作れば、個人のスキルに関係なく輝ける。得意な仕事の中にも苦手な部分はあります。
――苦手なことは頑張らなくていいのでしょうか。
最初から挑戦しないのは良くないね。やってみてわかることもあるから。私は営業畑ですが、企画系の仕事や別会社への出向で未経験のインターネット事業もしました。当時ネット事業は右も左もわからず、困り果てたけど経験は身に付いた。「得意を活かす」は得意の定義や範囲が曖昧だからこそ都合良く解釈しないで、まずは何でもやってみてほしいね。特に若い方は。
――逆に亮さんは、何でも自分でしたくなるタイプではないですか。
そうですね。ついつい自分で抱え込みます(笑)
でも、役割として人に任せないといけないこともありますね。任せることで業務やその人の成長、周囲にどんな影響や化学反応があるか考え、良い影響がありそうなら、期待を伝えた上で依頼します。最近ある企業への提案書を社員6,7人と一緒に作りました。私一人でもできるし、その方が早い部分もあるけど、一緒にすることで参加者も私も成長できたように思いますよ。
■変化を楽しもう~失ったものではなく、得たものに焦点を~
―3つ目の「変化を楽しもう」ですが、楽しむとはどういうことですか。
状況に対する自分の捉え方を変えることです。想定外の事態や結果が出ないことなど、仕事はつらいこともありますね。変えられるのは自分の考え方だけ。失敗しても原因を考える契機になればその失敗は有意義。失ったものではなく、得たものに焦点を当てると楽しくなると私は経験から学びました。
――どんな経験から学んだのですか。
前職(現リクルート)で転職支援をしていた頃、多くの転職希望者は不満から転職を望んでいましたが、もう少し見方を変えて頑張ってみても良いのにと思うこともありました。物事を一義的に捉えてマルやバツを付けるのはもったいない。私自身、キャリアの偶発性もあって前職では8年間で7拠点を異動しましたが、やってみればその時々でやりがいや楽しさはありました。
――ただ、人間は本来、変化が苦手な生き物ですよね。
そうですね。「昔は良かった」「あの時代はこうだった」などと口にして易きに流れるのは、どこの会社も同じと思います。でも過去の良さって意外と印象論だったりもすると思うんです。具体的に何が良かったか案外覚えていなかったり、単なる変化への抵抗だったりすることも。私はそれが嫌だった。自分が変わらなくても世の中は変わる。だったら変化を楽しみたい。
■周りに伝えてほしい、私にも言ってほしい
――3つの価値観は今、社内にどの程度浸透していると思いますか。
以前より随分浸透しましたね。10年前は反発や「亮さんがまた何か言っている」といった受け止めもあったけど、今は例えば社内の従業員インタビューでもみんな自分のエピソードを用いて「やってみるのが大事」と話してくれています。その時だけ話を合わせているわけではないことは、ちゃんとわかりますよ。社風に合う人材を採用している採用チームの力も大きいですね。
――従業員も120人近くになりました。更に浸透させ、今後アールナインに来る方々にも伝える上で、亮さんは何を大切にしていますか。
自分が実践することです。人に言って私がしないのはだめだから。皆さんも上司など関係なく悩んでいる人にも「まずやってみよう」と伝えて下さい。新入社員やインターンシップ生でも、私が間違っていたら「亮さん、それ言っていることと違うじゃないですか」と遠慮なく言ってほしい。建設的に対話できるフラットな社風を謳っていて、しないのは不健全だからね。
――頑張っても価値観をうまく体現できない時はどうしたら良いですか。
価値観に合う方を採用していますが、程度は人によりますよね。悩んだ時は周囲に相談して下さい。「まずやってみようよ」と返されて「あ、そうでしたね」と再認識する経験を重ねたら人は変わっていきますよ。
■儲かるから始めるか、理念を追求して儲けを作るか
――最後に、ここまで読んで「アールナインってフットワーク軽く何でもする会社なのか」と思った方もいるかもしれませんが、実はしないと決めていることも明確ですよね。理念に反することです。
そうですね。特に儲かるからという発想だけで物事を始めたくない。うちの理念は「人が介在することで活き生きと働ける世界を」。企業の採用や人材育成を通して、関わる人の雇用機会や可能性を広げる使命を持つ会社です。儲けを出発点に何でも手を出すと、何の会社かわからなくなりますね。
――売上は必要ではありますよね。
絶対に必要だし、皆さんにも還元したい。でも理念や目指す方向性の一致が先だと思います。社長をしていると有象無象の投資話や儲け話も来ますが、売り文句は全部「儲かりますよ」。儲かるから始めるか、理念を追求して儲けを作るか。微妙な違いですが、これが大事じゃないでしょうか。私たちは何のために存在するのか。3つの価値観は存在意義を常に問い続けるアールナインだからこそ必要なんです。今後も皆さんと成長できたら嬉しいです。
おわり