もし私が今もう一度、就活をするならば。
TwitterのDMを解放しているのでいろんなご連絡をいただくのですが(お仕事のご依頼以外は返せていないものが大半でごめんなさい!)、そろそろ就活の時期に差しかかってきたからか、進路相談のDMをいただく機会が増えてきました。
さすがに1人1人にお返事をするのは時間的に難しいので、今回はいただいたご相談にまとめて答えるべく、「もし私が今もう一度就活をするなら」という話を書きたいと思います。
私も百貨店を辞めてからずっと自分のキャリアについては悩んできたので、この記事が私と同じようなことをやりたいと思っている人の何かしらの参考になれば幸いです。
この命題に関しては論点が複数あるので、下記の項目に沿って順に説明していきたいと思います。
①就活に対しての前提
②私がもし今新卒なら受けてみたい会社
③キャリア形成について思うこと
前提として:「就活」でキャリアを決めるのは危険
そもそもの大前提なのですが、私は既存の「就活」というシステムをあまりよく思っていません。
私は新卒の就活時に何を思ったか「ここやー!」と決めて1社しか受けないという暴挙にでたのですが(それでたまたま受かったからいいけども!笑)、大学時代の経験からある程度業務内容も会社の雰囲気もわかっていて、OBの人たちと何度もお話させてもらって、それでも1年半足らずで退職しました。
もちろん長く働くことが正解ではないし、入社したこともわりとすぐ退職したことも後悔していないし、もしあの頃に戻ったとしても同じ判断をすると思いますが、やはり会社というものは「入ってみないとわからないもの」です。
特に、まだ社会に出たことがない学生のうちは「会社がやっていること」と「その中で個人がやるべきこと」の区別ができないままに会社を選ぶことが多いように思います。
実際、私が百貨店を選んだ理由も「人が集まる場所を作りたい」というものでした。
しかし、それはあくまで会社全体が社会に対して担っている役割であって、会社内の個人としての動き方はそこからさらに細分化されています。
そして、百貨店に関していうと「人が集まる場所を作る」という攻めの仕事を自分の判断でやれるようになるのは、バイヤー・マネージャーになってからの話。
それまでは10年弱もの間、現場の効率化を考えたり、バイヤー・マネージャーをサポートする「守りの仕事」が中心になります。
こうした現実はなかなか説明会やOB訪問では話してもらえない部分ですし、そもそも自分としてもイメージができていないので質問のしようもないものです。
だからこそ、私は常に「まずは会社という組織で働いてみること」をおすすめしています。
百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、100回OB訪問をするよりも、インターンとして1日働く方がよっぽどその組織に入るイメージができます。
私が就活していた時代は、インターンの募集をしている会社なんて立ち上げたばかりのスタートアップがほとんどで入り方もわからない状態でしたが、今はそこそこ大きな会社でもインターンや学生アルバイトを受け入れています。
意中の会社が募集をしていなくても近い業種で探してみればいいし、そもそも募集していなくても、「働かせてください!」と突撃するくらいの気概が持てない会社を受けるのは時間の無駄なんじゃないかと思います。(だからといって私みたいに極端な選択をするのはおすすめしないけど。笑)
なので、どの会社がいいのだろう?と悩む暇があったら、インターンなり短期のアルバイトなりイベントの手伝いなり、とにかく働いてみるための糸口を探す方が賢明だと思います。
私はそのプロセスをすっ飛ばしたので、3回会社を辞めるという遠回りをしましたが、学生時代の職歴は履歴書に書く必要もないし、いろいろやってみて「社会とはどんなものなのか」を学ぶ期間にあてるのがおすすめです。
あと、前に「"インターン"から"アシスタント"の時代へ」でも書いた通り、目指すロールモデルがいるならその人に弟子入りしてしまうのが一番の近道だと思います。
憧れとして見えている部分はあくまでほんの一部で、実際は血反吐を吐く思いをしながら地道な仕事を重ねている姿を間近で見れば、自分が本当にその道を目指したいのかを深く考えるきっかけになると思います。
既存の「就活」というシステムが問題なのは、そうした「何と引き換えに、何を得ているのか」が見えづらい点です。
もちろんそれは同じ会社や同じ業種でも人によって異なりますし、何にストレスを感じるのか、何がモチベーションにつながるのかは、社会に出て10年近く経っている私ですらいまだに新たな発見があります。
「こんなはずじゃなかった」という選択をしないために必要なのは、頭でっかちになりすぎず、きちんと自分の体を使って経験を積むこと。
そして自分を誤魔化したり人のせいにしたりせず、本当に納得いく選択をすることだと思います。
結婚と同じで、すべての希望を叶えてくれる場所はありません。
何を諦め、何を得るのか。
その二つを比べるための天秤を磨く期間が、学問を含む大学生活なのではないかと思います。
からの:私がもし今新卒なら受けてみたい会社
言いたいことほぼ全部書いたのでもうここからはおまけみたいな気持ちなのですが、みんな実はここらが一番読みたい部分だったりするのかな…。笑
私自身は、もし今また新卒に戻るとしても三越伊勢丹を受けると思いますが、それ以外で受けるとしたら今なら下記の3つかなと思います。
・ストライプインターナショナル
・TOKYO BASE
・アダストリア
そもそもファッションに興味を持ったのが百貨店というキャリアゆえなので、もし百貨店に行っていなかったらアパレル業界に興味があったかは微妙ですが、あくまで今の意識のまま新卒に戻るとしたら上記の3社を候補に入れて社員さんに話を聞いたり、インターンの口を探すと思います。
あと、小売のいいところは現場スタッフというめちゃくちゃハードルの低い入り口があること。
そしてお店という「職場」にもいつでも行くことができますし、もしかしたらいつか先輩になるかもしれない現場スタッフさんから接客を受けてみることもできます。
その時点で「何か違うな」と思ったら、わざわざ時間と労力を使うことはないですし、小売やファッション業界志望の人はとにかくいろんなお店に足を運んでみることが大切な気がします。
ちなみに、上記の3社を選んだ理由は
「製造・物流・販売という小売の基礎が学べること」
「 "攻め"の姿勢が強いこと」
「会社規模とネームバリューがあること」
です。
もし今ファッション業界や小売の世界で働きたい、何か新しいことをしたい!と思っている人がいたら、自分が消費者として見ているのはほんの一部であることをきちんと学ぶべきだと私は思っています。
商品がどのように作られ、保管され、選定され、お客様のもとへ届けられているのか。
既存の仕組みに問題を感じていればこそ、問題の本質を捉えるためにも、今の仕組みを正しく学ぶことが必要なのです。
ちなみに、私は製造部分の知識がまったくないことの弊害を最近痛感しているので、今から慌てて勉強しようとしているところ。
もちろん会社に入ればすべての工程が学べるわけではないし、そもそも会社は勉強しに行くところではないので自分が価値を提供することが前提ですが、仕事をする中で実感した「これが不便」という思いは、後々大きな原体験になり、それが自分のミッションに繋がっていきます。
きちんと既存システムに不便を感じる体験をすることは、ファーストキャリアを選ぶ上で大切な観点だと思います。
一方で、あまりに伝統的な大企業だと、守りの意識が強すぎて、何かやりたいことがある人ほど疲弊してしまう可能性が高いものです。
だからこそ、「攻め」の意識があるかどうかは大切なポイント。
このあたりは、日頃からニュースを見て最新情報をキャッチアップすることが重要かなと。
あとは、就活イベント以外でその企業の代表や社員さんが登壇するイベントに足を運んでみると、また違った側面が見えるのではないかと思います。
そして最後に、「ネームバリュー」について。
私は既存の就活システムには疑問をもっていますが、とはいえ新卒ありきの仕組みはそう大きく変わるわけではないということも理解しているつもりです。
なんだかんだで、新卒が有利なことはたくさんあります。
いまだに大企業は新卒至上主義のところも多いですし、ベンチャー出身の人が転職するときは「何をしてきたか」が厳しく問われます。
私は百貨店を辞めたあと、第二新卒としてガラリとキャリアを変える選択をしましたが、今になって思えばそれができたのも1社目のネームバリューの力が少なからずありました。
学歴と同じで、1社目の名前は「あの会社に通った人」という一種のフィルターの役目を果たします。
良くも悪くも、初対面の場ではその人のイメージと前職企業のイメージを重ねて見られることが多いのです。
個人的には、はじめて選んだ会社は大概間違うものだと思っているので、転職を前提にするならば、できるかぎりネームバリューのある方を選ぶというのは賢明な判断かと思います。
もしこれが結婚だったとしたら、はじめて付き合った人とそのまま一生添い遂げることの方が奇跡なのだから。
一方で、すでにインターンとして働いていたり、フリーランスとしてやっていけるくらいの知名度や実力がある場合はその限りではなく、なるべく若いうちに自分の責任で仕事ができるところを選ぶのもありだと思います。
とはいえ、このあたりの判断は人によりますし、どの大人の話も結果論でしかないので、あくまで参考程度にしていただければと。
最後に:キャリア形成について思うこと
今日の記事はいつにも増して長いな〜!笑
ということで、グダグダ語ってきましたが、この年齢にしては人より多くの会社で働き、最近はフリーランスとしていろんな会社を見ていて思うのは、とにかく
「一緒に働いてみないことには何とも言えない!」
ということ。
以前「相性を決めるのは『WHY』ではなく『HOW』」の中でも書きましたが、とにかく一緒に働いてみるしかなくて、そのために「お試し」の場を用意することは、お互いの不幸を減らす上で重要なことだと思っています。
そして「違ったな」と思っても無理に我慢し続ける必要はないし、むしろ「違うとわかった」ということが大切で、結局どれだけ頭で理想を描いても、その理想と表裏一体の欠点に「あ〜!これを選ぶとそうなるのか〜!」と気づき、頭を抱えることは変わりません。
そうやって少しずつ自分の中の「許せること」と「譲れないこと」の輪郭をはっきりさせていくことこそが、納得感のあるキャリアを作る上で欠かせないものです。
私たちの世代は、22歳で社会にでてから、おそらくたっぷり50年は働く必要があります。
しかも、あと10年も経てば今の時代からは想像もできなかった仕事がたくさん生まれていることでしょう。
ダーウィンが「最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である。」と言ったように、これからのキャリア戦略で重要なのは変化を恐れないマインドだと思います。
私がここに書いたことも、来年にはもう通用しなくなっているかもしれない。
でも、「変化することを恐れない」というメッセージは、永久不変のもののはず。
私もまだまだ道半ばなので、これからも変化を恐れず、めいっぱい自分の仕事を楽しんでいきたいと思います。
★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。
日々のコラムの最後に、海外の小売トレンドのニュースを載せています。
月額マガジンの購読or単品での購入もできます。
今回ピックしたのは「アメリカのショッピングモールが迎える未来は死か繁栄か?」という話題です。
ーーーーー 以下、購読者限定コンテンツ ーーーーー
ここから先は
¥ 200
サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!