本当の強さは、 "耐える"ことからはじまる
楽しかった2泊3日の #mediacruise の旅が終わって、ふと思ったこと。
足を運ぶたびに感じるこの地域の強さの源泉は、 "耐える"強さなのかもしれない、ということ。
でもそれはじっと耐え忍ぶ "我慢"ではなくて、未来に希望があるとわかっているからこそ、一歩一歩確実にやっていこうという "希望"なのだと3回めの訪問でやっと理解することができました。
この土地の人たちは、自分の仕事がずっと先の未来でも価値があるものだと信じている。
その思いこそが、強さを生み出す一番の源泉なのだと。
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有田の取材で、瑠璃の発色が美しい坂本窯陶工房さんを訪れたときに印象的だったのは、坂本さんの『いい温度を見つけるまでに、10年はかかりましたね』という言葉でした。
瑠璃釉は深い群青色が綺麗な釉薬ですが、とても難しい釉薬ではじめは100個作って98個が割れて売り物にならないような状況だったのだとか。
コバルトなどの素材を入れれば安定するのはわかっているけれど、どうしても江戸時代から続く製法にこだわりたくて、窯の温度を一度ずつ下げてみてベストな温度を見つけ出したのだそうです。
焼くと簡単に言うけれど、窯をいっぱいにしなければ焼けないので、まず焼けるだけの品数を作るだけで2ヶ月ほどかかることもザラ。
それだけの時間をかけても売り物として完成するものの方が少ない状況だったと笑いながら話す坂本さんに、尊敬の念だけではなく10年待ち続ける時間軸で生きられることへの嫉妬にも似た憧れを感じました。
これがきっと東京で生きる人だったら、2、3回やってモノにならなければ本人の意思に関わらず続けることは難しいでしょう。
都会に生きるということは、最短で最適解にたどり着くゲームのようなものだから。望むと、望まざるとに関わらず。
ちなみに瑠璃釉は有田の他の作家さんや職人さんたちも、挑戦しては諦める難易度の高い釉薬なのだそうで、なぜそれでも続けられたのかを尋ねると『だって綺麗じゃないですか、この瑠璃の色。』とシンプルに答えていただいたのが印象的でした。
さらにそのあと訪れた百田陶園でも、同じく "耐える"ことの意味を考えさせられました。
今や人気ブランドになった1616の成功は、単にデザインをモダンにしただけではなく、流通もマーケティングも経営もすべて、これまでの慣習を一度取っ払ってゼロベースで構築し直したことが大きいのだということ。
もちろん古い伝統が残るまちでそうした挑戦をすることは苦労も多かったけれど、必ずうまくいくと信じて耐えたところにしか花は咲かない、という話。
すぐに結果がでるなんてことはないけれど、じわりじわりと、まるでオセロがひっくり返っていくように、周りの目も変わっていくのだと。
その小さな変化の兆しが目に見えるようになるまで耐えることが、長く愛される強いブランドを作るということなのだと学んだ瞬間でした。
ベンチャー界隈ではとにかく小さくはじめてPDCAを回し、どんどん改善することが求められます。
もちろん改善の意識は重要で、ものづくりは改善の連続なのだけど、諦めるのが早すぎる事例もまた多いのではないかと思うのです。
それは多分に『やりたい』『自分が解決しなければ』という情熱ではなく『これならうまくいきそう』『このままいい感じにならないかな』という他人事のような姿勢によって、判断軸がブレるからという理由が大きいような気がします。
つまり、耐える力はそのまま、信じる気持ちとつながっている。
この決断が自分たちの未来を作ると信じる気持ちから、すべては始まると言っても過言ではないように思います。
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私は常々、作り手がかけた時間と消費されるスピードは反比例の関係にあると思っています。
ただ、それだけでは単に時間をかけて丁寧につくればいいと考えてしまいがちです。
そうではなくて、どれだけ『耐えた』かの方が重要なのだと今回やっと言葉にして理解することができました。
長く耐えてきたものは、簡単に消費されない。
それこそが本当の意味で『強い』ということなのだと思います。
SNSが当たり前になった時代、ちょっとした口コミで火がつき、投稿を見た人たちが列挙して押し寄せるブームはいたるところで起こりやすくなりました。
でも、そこで消費されつくしてしまうのはあまりにもったいない。
哲学や思想という足場を持ち、どんなに悪天候の日々が続いても『もうすぐ太陽がでてくれる』と信じて風雪に耐える強さをもつこと。
そんな『本物』の作り方を、改めて学ばせてもらった佐賀の旅でした。
<追伸>
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