今週読んだ海外記事と雑感(2020.6.20)
今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
有料部分はニュースへの雑感です。
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コストコが「化粧品売場」としてミレニアル世代の間で人気に
コストコがアメリカで次なる化粧品売場として人気を得ている話が面白い。これまでは65歳以上と比較的年齢の高い層がメイン顧客でしたが、SK-IIをはじめとするプレステージブランドの取り扱いをはじめたことでミレニアル世代からも人気が高まりつつあるとのこと。
またブランド側からしても、通常は20%ほどのマージンをとられる上に販売員も派遣しなければならない百貨店や専門店と比べて、11%のマージンで派遣の必要もないコストコは便利な売場。さらに大きいロットで買い付けてくれるため、お得意様となっているようです。
コスメの売価がどのくらい安くなっているのかが気になるところですが、1億人もの有料会員をもつコストコがコスメのみならずジュエリーや電化製品も取り扱いをはじめたことで百貨店を取り巻く状況も大きく変わっていきそうです。
Fllipkartがボイスアシスタントを使った買い物機能をリリースへ
インドのECプラットフォームFllipkartがボイスアシスタント機能をローンチ。インドは国内に複数の言語がありますが、国内各地を巡って言語をサンプリングし、自動で聴き分けられるように開発したとのこと。Flipkartは大株主がWalmartなので、AmazonがAlexaでインド市場に進出してくる前に先手を打つ意向が強かったのかもしれません。
一方で、スマートスピーカー所有者のうちボイスアシスタントを通して買い物をしたいと答えた割合は1/4程度であることから、声で買い物をする習慣が根付くにはまだまだ時間がかかりそう。日本も徐々にスマートスピーカーが広がりつつありますが、どのくらいの世代がスマートスピーカーを通して買い物をしているのか、データが気になるところです。
Shopify出店ブランドがWalmartのマーケット出店可能に
WalmartとShopifyが提携し、ShopifyユーザーがWalmartのマーケットプレイスに出店できるようになるとのこと。WalmartはAmazon同様、自分たちの商品とは別にマーケットの仕組みを持っており、その出店強化が狙いのようです。マーケットプレイスとしてはAmazonに遅れをとっているものの、Walmartの強みはすでに実店舗を多数持っていること。すでにマーケットプレイス購入品はWalmart店舗で返品できるようにするなどオムニチャネル連携も対応しており、クオリティの高いShopifyユーザーの商品が出品されることでAmazonとの差別化になりそう。
特にこれまでWalmartは出品者のクオリティにこだわっており、Amazonのように誰でも自由に出品できるわけではなかったため、品質の高いものがセレクトされたマーケットとして人気が高まっていくかもしれません。
レストランがミールキットに参入する理由
ロンドンやNYのレストランがオリジナルのミールキットを販売する事例が増えているとのこと。ミールキットといえばBlue Apronを筆頭に、すでにいくつもサービスがありますが、レストランのミールキットは30ドル以上と外食に近い価格設定で、日々の料理を楽にするというよりは自炊と外食の間の「特別な楽しみ」としての市場を狙っているようです。
テイクアウトよりも商圏が広く、また梱包の手間はかかるものの調理の必要はないため、人気レストランがこぞってECを立ち上げているとのこと。
日本の場合はもともとの自炊文化が根強いため欧米とまったくおなじ動きにはならないかもしれませんが、「作ることを楽しむ」「本格的な料理を楽しむ」といったコンセプトのミールキットは新しい市場となるかもしれません。
ジェフ・ベゾスが連邦取引委員会の答弁に出席へ
昨夏はじまったGAFAの独占禁止法違反に関する調査で、ついにジェフ・ベゾスが連邦取引委員会の答弁に出席すると発表。Amazonは特にPBの開発においてプラットフォームとして得たデータを活用し競争を妨げているという批判もあるため、ベゾスの答弁を受けて連邦取引委員会がどう判断するのかは重要な前例となりそうです。
またApple Musicに対するShopifyの批判声明も昨年話題になったように、巨大プラットフォームがコンテンツメーカーとなって他のプレイヤーの利益を阻害していると指摘される事例は枚挙に暇がありません。おそらく今後Netflixにも同様の問題が生じてくるでしょう。
米国は欧州に比べるとGAFAに対する規制はゆるやかですが(すべて米国企業なので当たり前でといえば当たり前)、4社が「独占」とみなされるかどうかは、今後のプラットフォームビジネスにおいて重要なターニングポイントとなりそうです。
【参考記事】
SnapchatがARを活用してソーシャルコマースへ参入
SnapchatがいつのまにかARを駆使したソーシャルコマース企業に生まれ変わっていた…!個人的に以前から「加工アプリはコスメ企業とタイアップして加工フィルターの配信→商品購入の流れを作ればいいのに」と話していたのですが、Snapchatがすでに実現していたとは。まずは「Shoefilter」と呼ばれる靴の着せ替えがメインのようですが、エスティーローダーなどコスメ系の企業も進出しようとしているようです。
若者世代にとってはセルフィーを加工するフィルターがそのままARに近い感覚で使われているため、新しいアイシャドウパレットやリップの雰囲気にあったフィルターを配信し、「この雰囲気になれるコスメ」という指名買いで店舗にきてもらうのが若者世代に対するマーケティングとしては有効なのではないかと私も思います。
とはいえ、本物の発色を再現したり、実際に身につけているように見えるほど精度の高いフィルターを作るのは現時点のテクノロジーではまだ難しいと思うので、あくまでイメージや世界観を伝える感覚で使うのがベストかなという気はしますが。
たとえば日本でいうとマジョリカ・マジョルカやThreeはコスメ単品以上にブランドとしてのイメージが顧客の中に明確にあるので、それと同じように今後はフィルター発の人気コスメブランドが出てきてもおかしくない気がしています。
米ブランドがこぞって中国市場に傾倒する理由
Ralph LaurenやCoachなどのラグジュアリーブランドの中でも比較的手の届きやすい価格帯のブランドがこぞって中国市場に舵を切るために米国店舗をクローズさせ、中国でのEC展開に力を入れ始めているとのこと。中国はミドルクラスの人口が5.5億人ともいわれ、アメリカの人口よりも大きい市場。対してアメリカは年々格差が広がり、ミドルクラスの人口は減る一方です。
Ralph LaurenやCoachといったブランドは高所得者層よりもミドルクラスの日常使いがメインということもあって、今後中国をメインにしていく戦略なのかもしれません。
ピックアップ店舗に注力するStarbucksは「サードプレイス」であり続けられるのか?
Starbucksが商品ピックアップ専用の店舗Starbucks Pickupを米国で展開開始。モバイルオーダーで注文した商品を受け取ることに特化した店舗で、座席がないのが特徴。すでにStarbucksでは売上の半分近くがStarbucks Rewardと呼ばれるリワードプログラム兼モバイルオーダーシステムを通して起きているようで、会社としても今後ピックアップ型店舗に力をいれていくようです。またUber Eatsとの連携でデリバリー対応も拡大しているため、ドリンクを作ることに特化した店舗を増やすのは理にかなっているともいえそう。
一方で、記事中でも指摘されている通りStarbucksは「サードプレイス」を理念としてきた背景もあり、単にコーヒーを売るだけではなく人に「居場所」をつくるようなアプローチが今後別途生まれるのかが気になるところ。
座席を作らない小型店舗を増やしていくのであればこれまで以上に店舗数を増やしていけるはずなので、自前で運営しているオンラインコミュニティと絡めて地域コミュニティの育成に寄与していくのか?そのあたりの戦略をどう考えているのかが気になるところです。
電子書籍の売上が増加中の米出版界
外出自粛によって電子書籍売上が増加する動きは当然のことながら、2014年から電子書籍売上は減少傾向にあったという話が衝撃。てっきり日本に先んじて順調に市場が伸びているものとばかり…!日本が2015年から2019年の間にほぼ2倍に伸びているのとは対照的です。
参考:全国出版協会(https://www.ajpea.or.jp/information/20200124/index.html)
ただ日本の場合は上記の参考ページにもあるとおりコミックの売上が伸びているようなので、ビジネス書や小説など細かいジャンルごとに見てみたい気も。
電子版の雑誌売上が減少しているというデータも興味深い。
ちなみにアメリカでは紙の本よりも電子版の方が高額のようで、それも減少傾向にある理由のひとつかもしれません。
個人的には最近Kidle派に移行したのですが、Kidleであれば絶版になることがない点が大きい気がしています。日本の場合はKindle版の方が価格が安いことも多いため、意外と日本の方がオンラインコンテンツの消費量が増えていくのかも?と思ったりもします。
中国人観光客の激減に揺れる欧州のラグジュアリーブランドたち
旅行客の激減によってヨーロッパのラグジュアリーブランドが軒並み大打撃を受けているという話。どのブランドも売上の35〜55%を中国や中東からの観光客に頼っていたようで、国内経済の見通しも暗いことからブランドの存続が懸念されています。
また今後のブランドがとるべき戦略として「humanistic capitalism」が提案されているのも面白い。高価格帯の理由として単にモノがいいだけでなく、社会的意義をもって新しいムーブメントやカルチャーを生み出していく必要がある、という話はこれからのラグジュアリーの新たな定義になっていくのではないかと思います。
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ラグジュアリーブランドのパトロンとしての中国の存在
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