【図解】赤文字・青文字はもう古い。細分化される私たちの新しい「カラー」
「赤文字系」「青文字系」という言葉をご存知でしょうか。
古くからある女性誌の分け方のひとつで、端的にいうとモテ系か否か、というざっくりした区分です。
赤文字系で代表的なのが、CancamやJJなどのモテ系女子大生向け雑誌。
彼女たちにとっては、「かわいい」が最高の褒め言葉です。
対して、青文字系は「Zipper」や「Cutie」など、個性的な装いを好みます。
洋服選びのポイントは、男性からの評価よりもとにかく「自分らしくあること」。
「おしゃれだね」「個性的だね」が彼女たちの喜ぶワードです。
このように、雑誌を含めた女性向けマーケティングは、赤文字系・青文字系の二軸で語られてきました。
しかし、ネットの発達によって好みがより細分化された結果、私たちはマーケティングにおいて、より多くの「カラー」を意識する必要がでてきました。
そこで今回は、私の主観ベースで最近の新しい「カラー」について解説したいと思います。
社会が二極化するにつれて、ラグジュアリー志向/カジュアル志向もますますはっきり別れるように。
▲「新・女子マーケティングのカラー分布」(作成:最所あさみ)
※青枠はすべてWebメディア
こちらの図が、私が作成したカラー分布です。
横軸が従来の赤文字・青文字のくくりになっており、縦軸にラグジュアリー志向とカジュアル志向をそれぞれ置いています。
これまでもラグジュアリー/カジュアルの区分はありましたが、社会的な二極化の進行によってその差はますます広がっています。
特にミレニアル世代と呼ばれる、現在20〜30歳にあたる年代の若者は総じてラグジュアリー志向が薄く、お金をかけずにおしゃれな生活をしたいと望む傾向があります。
上記の図にもそうした傾向が顕著に現れており、ミレニアル世代に支持されているWebメディアは総じてカジュアル志向のカテゴリに入っています。
もちろん、ラグジュアリーなブランド醸成に不向きなWebの特性もありますが、雑誌も含め、より自分の生活に身近なコンテンツがウケていると言えそうです。
これからの女性マーケティングで抑えておくべき6つの「カラー」
上記の図で分けたカラーは以下の6つ。
①パステル系
②ネイビー系
③アースカラー系
④モノクロ系
⑤シルバー系
⑥ゴールド系
ここからは、それぞれのカラーについて解説します。
①パステル系
パステルカラーを好み、男性を含めた他者の視線への意識が強い層です。
世の中の「女子向けマーケティング」は、主にこの層をイメージしていることが多いように感じます。
パステル系がこれまでの赤文字系と異なるのは、CanCamやJJなどのコンサバお嬢様なスタイルではなく、よりカジュアルで淡いカラーを好むということです。
パキッとした赤ではなく、ふんわりしたベビーピンク。
それがパステル系のイメージカラーです。
メディアで言うとMERYがまさにこのカテゴリの筆頭格で、その消費性向は「かわいさ絶対主義」とも言えます。
女性誌で言うと「おフェロメイク」というワードで一世を風靡したarが当てはまります。
ゆうこすこと菅本裕子や紗栄子のファンが多いのもこの層です。
▼紗栄子のInstagram。女性らしいかわいらしさが人気。
②ネイビー系
赤文字系から分化したのが、パステル系とこのネイビー系。
基本的な嗜好は赤文字系の流れをくんでいます。
同じモテ系軸でも、ネイビー系がパステル系と違うのはそのフォーマル感。
彼女たちに刺さるのは、「かわいい」よりも「綺麗」というワードです。
なぜ「ネイビー系」なのかというと、この層の代表的な雑誌であるVERYでネイビーが重視されているから。
上品かつクラシックな装いが好まれます。
保守的なネイビー系にWebがハマらないのか、Webメディアがターゲットとして狙っていないのかは定かではありませんが、この層をターゲットにしたWebメディアはほぼないに等しい状態です。
比較的結婚も早く、キャリアと同じかそれ以上に家庭を大切にする傾向があるネイビー系は、消費意欲は強くなくても結果としてベビー子供関連も含めた絶対的な消費額が増える傾向にあります。
この層のイメージは、女子アナやホリプロ、オスカーなどの清純派女優。
佐々木希や武井咲、加藤綾子などの正統派美人がロールモデルです。
VERYの看板モデル・滝沢眞規子に憧れる女子も多数。
▼ネイビー系からの支持を集めるヨンア。カジュアルな日もきちんときれいめなスタイル。
③アースカラー系
ボリュームとしては一番大きいのがアースカラー系。
このカテゴリの女子が多いというよりは、どの女子も少なからずアースカラー系の要素を持っている、といえます。
アースカラー系の特徴は、おしゃれすぎない親しみやすさ。
スニーカーやジーンズ、長め丈のスカートを好み、ユニクロやGUをはじめ、earth music&ecologyやLOWRYS FARMなど、プチプラカジュアルなお店で上手に買い物します。
ファッションよりも旅行やお散歩、ハンドメイドの雑貨への興味が強く、ほっこりする丁寧な暮らしに憧れをもっています。
フェスや美術館、アウトドア、マーケットイベントなど、カルチャー起点のおでかけ意欲が高いのも特徴です。
以上のポイントから、アースカラー系にアプローチするなら、ファッションを前面に押し出すよりも、カルチャーや暮らし、地域の魅力から入ることが重要。
知的なものへの憧れも強いので、ストーリーがもっとも刺さりやすいのもこの層です。
この層に対して影響力があるのは、ことりっぷなどの旅系メディアや、手紙舎、箱庭などの「暮らし」に強いメディアです。
人気キュレーションメディアの「キナリノ」もこのアースカラー系の立ち位置でしたが、最近はややモノクロ系に寄せていっている印象です。
この層に人気なのは、浅見れいなや吉高由里子などの等身大のアイコンたち。
抜け感のあるがんばりすぎない雰囲気が、目の前の幸せを大切にするアースカラー系女子に人気のポイントのようです。
▼秩父旅のCMにも出ている吉高由里子はアースカラー系の代表格。マイペースな雰囲気もこのタイプの女子の特徴。
④モノクロ系
アースカラー系から派生して、よりスタイリッシュさを極めているのがモノクロ系。
KINFOLKなどのシンプルな世界観を好む層です。
今、世界的に見ても特に支持者が増えているカテゴリで、「ラグジュアリー=ブランドロゴ」ではなく、上質な素材や機能性に価値を見出します。
また、エシカル、ミニマル、フェア、トランスパレンシー(透明性)などミレニアル世代の価値観と合致する部分も多いのも特徴です。
原価を完全に公開しているEVERLANEや、遊び心とイノベーティブな雰囲気が人気のWarby Parkerもこのカテゴリの人気ブランド。
日本のメディアでいうと、キナリノがややこの層を狙いにきているのと、人気ECの北欧暮らしの道具店なども徐々にこちらの層に寄ってきています。
LINE MOOKの先駆けである「TOSS!」も、アースカラー系とモノクロ系の間くらいの立ち位置です。(図では便宜上モノクロ系に入っていますが)
モノクロ系は、ブランドイメージとしてアースカラー系からの進化が多く、温かみを排除してよりミニマルな尖ったおしゃれ感を追求します。
また、Vikkaやnice things.など、比較的新しい雑誌が発行されているのもこのカテゴリの特徴。
特にライフスタイル系の台頭が著しい分野です。
この分野のロールモデルとなる人は日本ではまだ不在のため、これから新しいアイコンがでてくるのかもしれません。
▼KINFOLKのInstagram。白を基調としたミニマルな世界観が魅力。
⑤シルバー系
モノクロ系がラグジュアリーに昇華したカテゴリがシルバー系です。
シンプルな雰囲気はモノクロ系と似ているものの、素材感よりもモードなデザインを重視します。
雑誌でいうと、装苑やGINZA、SPURなどのTOKYOモード系。
コムデギャルソンやsacaiなど、デザイナーズブランドがワードローブの主軸です。
昔ながらのファッショニスタといえばこの層ですが、洋服にお金をかけられる人口が減ってきていることもあり、人口としては減少傾向です。
百貨店の衰退は、このシルバー系ファッショニスタ層の減少が大きな打撃になっているように思われます。
とはいえ、まだグローバルではTOKYOのデザイナーズブランドの地位は健在。
この層にをターゲットにしているブランドは、今後はさらにグローバルに目を向けていく必要があるように思います。
▼シルバー系の筆頭、秋元梢のInstagram。
⑥ゴールド系
ザ・ゴージャスなイメージのゴールド系は、同じラグジュアリー系統のシルバー系・ネイビー系に比べて、パーティーガール的な要素が強いのが特徴です。
シンガポールや香港のホテル、セレブのゴシップなど華やかなネタにもっとも惹かれる層でもあります。
ラグジュアリーブランドのアイテムも、ネイビー系のようにきっちり着るのではなく、ややカジュアルダウンさせて華やかさを出すのが彼女たちの流儀。
雑誌でいえば、VOGUEやNumeroなどのファッショニスタ向けの雑誌です。
25ansは、これらの雑誌と比べるとややコンサバなネイビー系寄り。
このカテゴリをカバーしているWebメディアはアメリカのNet-A-Porteくらいですが、実は憧れという意味でInstagramがややここに近いのではないかと思っています。
スタイリングなどを投稿するプラットフォームとして比べたとき、同じ縦軸上にある「WEAR」が普段のカジュアルだとすると、Instagramはもう少し憧れ要素が強いのが特徴です。
モノクロ系のKINFOLKスタイルに次いで人気が高いのは、華やかな旅やファッションを投稿するゴールド系のパーティーガールたちではないかと思います。
この層に熱い支持を受けている有名人といえば水原希子。
パリス・ヒルトンやブリトニー・スピアーズのような、我が道をいく芯のあるセレブリティが、憧れを醸成しているように思います。
▼ゴールド系の憧れといえば、パーティーガールな投稿が多い水原希子。
ミレニアル世代の女子たちは、複数クラスタを行き来する。
ここまで6つのカテゴリをご紹介してきましたが、忘れてはいけないのが、すべての女子はカテゴリにかっちりはまるのではなく、あらゆるクラスタを行き来しているということです。
パステル系もKINFOLKを読むことがあれば、アースカラー系がMERYをチェックすることだってあります。
大切なのは、ターゲット層を固めて見るのではなく、そういう"気分"にアプローチすることなのです。
それぞれの属性が全体の何割ずついるかというのは、対象の雑誌の講読者数やWebメディアのPV数を見ればある程度算出することができます。
しかし、そのメディアに接する層はそれしか見ていないわけではなく、他のカテゴリとゆるやかにグラデーションを形成しています。
だからこそ、ひとつの商品やブランドであっても、多面的に様々なメディアを通して情報を届ける必要があるのです。
「女子向けにはピンクを使っとけばいいんだろ」という短絡的な施策ではなく、複雑なグラデーションによって形成される女子ひとりひとりにきちんと刺さる施策のために、この考察が少しでもヒントになれば幸いです。
【この記事について】
こちらの記事は、個人でやっているマガジン「新・小売概論」の中で、実際の消費者にインタビューするシリーズ「私たちの買い物白書」で学んだことをもとにまとめました。
<記事例>
▶︎ママには、ファッションの転機が2回ある!?港区ママの買い物事情
https://note.mu/qzqrnl/n/na914181654a7
▶︎オフィスでハットもOK!?IT系渋谷OLのファッション事情
https://note.mu/qzqrnl/n/n3a9bde00d07a
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