今週読んだ海外記事と雑感(2020.5.2)

今週もNewsPicksでピックしたニュースとコメントを転記してまとめておきます。
有料部分はニュースへの雑感です。

▼私のNewsPicksアカウント

Podcastを活用するブランドが増えたワケ

ブランドがPodcastをはじめる事例は近年増加傾向でしたが、コロナ禍によってコンテンツ作成が制限される今、どこでも収録がしやすいPodcastがオウンドメディアとして改めて注目されているもよう。特に面白かったのは、Trader Joeが従業員に注目した番組を配信しているところ。
「これだけ忙しく働いているのに、報いられていないのでは?」という声に対してCEOが直々に「無期限で時給を2ドルあげるなど対応しています」と回答するといった赤裸々なやりとりは注目度も高かったようで、通常の何十倍ものレビューがついたとか。
音声は費用対効果が測りづらいプラットフォームではありますが、最後にNIKEの担当者が言っているとおり、音声配信はあえて明確なコンバージョンを設定せず、顧客とのコミュニケーションツールとして捉えるのが最適なのかもしれません。

「オンラインカタログ」を目指すPinterest

消費行動がオンラインに移行しつつある今、Pinterestがソーシャルコマース機能を強化。認証済みアカウントとなった小売店アカウントは商品一覧をすべてPinterestにアップできるようになり、それぞれのHPに「Shop」タブを設置するとそのままPinterest上の商品一覧に飛べるように。
さらに保存したピンやショップの情報からPinterest上でおすすめが表示されるため、各ショップへの流入にも貢献しているとのこと。
一時はInstagramにとって変わられたかに見えたPinterestですが、小売店のオンラインカタログとして改めて注目されているようです。

コロナ禍でも売上を伸ばすTargetのデジタル戦略

小売業界が軒並みダメージを受ける中、Walmartと並んで売上を伸ばしているTarget。もともと百貨店というよりはディスカウントストア寄りのお店で、生活必需品や食料品を多く扱っていたことに加え、オンラインでオーダーして店舗で受け取る「クリックアンドコレクト」がソーシャルディスタンシングと合致したこともあり、効率よく売上を伸ばしているようです。
一方で生鮮食品はその範囲に入っていないため、流通の整備が今後の課題とのこと。
日本ではコンビニ受け取りの利便性もあってか店舗受け取りがあまり広がってこなかった印象ですが、今後真剣に導入を検討する必要があるのではないかと思います。

ECプラットフォームのスモールビジネス支援策

記事の中でも紹介されているShopifyが新たにローンチしたショッピングアシスタントアプリ「Shop」が、これからECの勢力図を大きく変えていきそう。閲覧履歴からおすすめのアイテムやブランドをレコメンドするだけではなく、Shopifyが提供する「Shop Pay」で支払いまで一貫して支援するとのこと。
FarfetchやGarmentoryの事例もあわせて紹介されていますが、これまでECを運営してこなかったローカルなセレクトショップや家族経営型のブランドがECをはじめる上で、いかに集客部分を支援できるかがプラットフォーム選びの鍵になりそう。
そのためにも、買い手とのマッチング精度をあげることで小規模なブランドやはじめたばかりのショップでも早めに成功体験を積めるようにすることが必要なのかなと思います。

これからのラグジュアリー市場を占う6つの予測

今後のラグジュアリー市場を読み解く6つのポイントについてまとめた記事。やはり注目は一足早く外出自粛が解禁されつつある中国の動向。これまで旅行先で買い物をしていた富裕層が国内で消費しはじめたこともあり、しばらくはどのブランドも中国国内での消費に力を入れることになりそうです。
また興味深いのは、外出できるようになったあとも、来店促進よりオンラインのエンゲージメントを高めることの方が重要となるだろうという予測。これは実際に中国でどういう動きが起きているかを見てみないとなんともいえませんが、この状況が長引けば「リアルの代替」としてではなく、「オンラインだからこそできること」の視点からの施策が増え、顧客にとっての選択肢が増える可能性はありそうです。
特に店舗での接客は「買わされる」「逃げられない」という先入観から避ける顧客も多いですが、オンラインでいつでも止めることができれば接客のハードルが下がるといった可能性も。
そうした今後も価値が発揮できる施策にどれだけ注力できるかが、これからの10年、20年後を変えていきそうです。

なぜ日本ではラグジュアリーECが普及しないのか?

世界的にもラグジュアリー消費額が大きい日本市場ですが、これまでラグジュアリーECの普及が難航してきたことが各ブランドにとって課題となっています。Net-A-Porterをはじめ、海外のラグジュアリーECがいくつか日本に上陸してはいるものの、依然として認知度も低く現在もアクセスや売上が増えているわけではないとのこと。
三越伊勢丹のECもアクセスが増えていないとの発言がありましたが、そもそも三越伊勢丹はオンラインストアも休止中なのでアクセスが増えないのは当然かなと。
とはいえ、外資のみならず国内事業者もラグジュアリーECを広げるために苦戦してきているので、日本人にとってラグジュアリーブランドはモノとしてほしいというよりは店舗での体験も含めた体験消費だったのかもしれないという気もします。
記事中では日本にラグジュアリー消費が根付かない理由として高齢化があげられており、それもひとつの理由だとは思いますが、そもそも中間層が圧倒的に多いこと、富裕層が集まる都心エリアの利便性が高いこと、インバウンド需要が高いこと(観光客はECで購入しないため)あたりも理由として考えられそう。
ラグジュアリーブランドの購入者の年齢層や居住地データ、国全体の年収分布などを比較してみないとなんともいえませんが、こうした消費行動の違いは個人的にも気になるところなので、どこか調査してみてほしい…!

顧客と創る商品写真撮影の新たなかたち

スタジオでの撮影ができなくなったブランドが、インスタを通してユーザーに自宅で着用写真を撮影してもらうケースが増えているとのこと。ここでのポイントは、単に写真素材が増えるだけではなく、リアルなユーザーのストーリーがプラスされることでコミュニティ形成につながっていくところ。
事例としてあげられているマタニティウェアブランドのStroqでは、実際の妊婦さんたちに依頼しているため予期せず早めに出産日がきたことで生まれてきたベビーと一緒に撮影できたといった予想外のストーリーが生まれ、顧客の共感を生んでいるようで、普通に撮影ができるようになったとしてもこのやり方は続けたいとCEOが発言しています。
単にインフルエンサーにギフティングして写真をアップしてもらうのではなく、自分たちのブランドイメージに近いユーザーとブランドの世界観を共創していくことが、今後のブランドのSNS戦略の柱となっていきそうです。

個人的に今週一番気になったニュースは、日本のラグジュアリー市場の特異性について書かれた記事。
さらにTargetやWalmartのように早くからデジタル施策を進め、現在もモバイルオーダーをピックアップする形式で店舗運営している成功例を見ると、なぜ日本はこれだけ消費が成熟した国でありながらデジタルシフトが起きていないのかに興味が湧いてきます。

日本流のデジタルシフトを考える

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