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なぜ、いま「思想」が重宝されるのか
「リーダー」というと、カリスマで人を引っ張っていくようなイメージがいまだに強いのではないでしょうか。
しかし、ここ数年の間に、成功するリーダー像が「引っ張る人」から「思考する人」に変わりつつあるような気がしています。
今求められているリーダーは、まるでブルドーザーのように道なき道を行く人ではなく、ひとつの場所でじっと思考を巡らすことができる修行僧のような人なのかもしれません。
なぜ思想家型のリーダーが人を惹きつけるのか。
それは、現代が「正解のない時代」に突入しつつあることが大きな要因です。
昔は「これが正解だ」と言われているレールがあり、そのレールをいかに早いスピードで進むかが成功への道でした。
だからこそ、強い力で引っ張っていける人、チームの士気をあげられる人が重宝されてきたのです。
しかし、現代はレール自体が多様になっているどころか、そもそも「なんでレールを走らなきゃいけないんだっけ?」という疑問すら持ってしまうほど、私たちは必死にがんばらなくても生きていける社会を作り上げてしまいました。
誰もが生きる意味や自分の存在価値を求めているからこそ、最近のベストセラーも「サピエンス全史」や「LIFE SHIFT」といったこれまでとこれからの人のあり方に迫る本が多かったのではないかと思います。
また、ミニマリストや瞑想も、自分の内面にアプローチすることで思想をかため、自分の軸を作ることを無意識に求めている人が多いことがブームの理由のような気がしています。
正解は「探す」ものではなく、答えはすでに自分の中にある。
だからこそ、思考を深めて作られた強固な軸に、人は惹かれるのではないかと思います。
これまでの資本主義で考えれば、「思想家」など一文にもならない、仕事と言えるのかどうか危うい肩書きでした。
しかし、これからは人の人生に意味を与えることにこそ、大きな価値ができてきます。
進む方向を示し、人に生きがいを与えること。
そういう意味で、思想家と起業家の距離は今後少しずつ縮まっていくのかもしれません。
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最近読んだ「お金2.0」の中で、今後は自律分散が次世代の成功モデルのキーワードになるという話がでてきました。
大小様々なコミュニティが独自の経済圏をもち、人はみな複数の経済圏を行き来する。
そんな世界がもうすぐそこまできています。
もはや、誰もが一国一城の主になるチャンスをもっている時代なのです。
そこで人を惹きつけるのは、その国の「世界観」、つまり思想です。
何を正義として、何を不義とするのか。
これまで以上に、正解のない世界で自分なりの正解を出す勇気が求められるようになるのです。
司馬遼太郎が書いた「峠」の中で、主人公の河井継之助が学問についてこんなことを言っていました。
「即決対処できるには自分自身の原則をつくりださなければならない。その原則さえあれば、原則に照らして矛盾の解決ができる。原則を探すことこそ、俺の学問の道だ。」
本を読み、学び、思考を巡らすということは、自分の判断軸をより深く、より強くするということです。
そして、その判断軸をもとに「動く」ということです。
行動の伴わない思考は、思想ではなくただの空想に過ぎません。
学問のための学問ではなく、暇つぶしとしての学問でもなく、思想を作り上げるための学問をすること。
一見遠回りに見えても、これからの時代を生きる上で大切なのは、思想家として自分なりの正義の判断軸を練り上げていくことなのではないでしょうか。
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