太閤通駅と【閤】の簡体字
平成元年9月10日に開業された愛知県名古屋市の地下鉄駅・中村区役所駅が令和5年1月4日に【太閤通駅】に改称されました。
漢字・閤[コウ]の簡体字は本来《合》/hé/[ホヲ]で、大修館書店・刊『大漢和辞典(索引)』の簡体字一覧に記載されています。
もう一つの閤の簡体字は《阁》/gé/[ゴヲ]で、小説及びドラマ『太閤記』の簡体字表記である『太阁记』では《阁》が《閣》の簡体字としての正しい表記とされ、台湾華語や繁体字中国語、更には日本語でも『太閣記』表記が見られます。
閤の簡体字の異体字
令和5年1月20日時点での中国語版ウィキペディアの【太閤通車站】の項目では通常の簡体字切り替えでは《阁・閣》による❝太阁通车站❞, 中国大陸・マレーシア・シンガポールの各国別簡体字切り替えでは❝太閤通站❞となり、本来の簡体字である《合》に変化しない方針となっていて、太閤通駅の簡体字表記は【太閤通站】が正式表記とされている状況です。
簡体字のルールと異なる異体字でもんがまえ《門》の簡体字《门》を加えた異体字であるU+2CBA4《𬮤》(英語版ウィクショナリー内の項目参照)がチワン語の古壮字で“閉める・塞ぐ”の意である〈haep / həp〉[ハップ]を表す意として用いられ、かつては中華民国時代の1936年に提案された中国語の漢字簡略化案でドアの意の《闔》/hé/[ホヲ]の簡略字として考案され、本来《閤》は闔の異体字とされています。
フリーソフト『BabelPad』の繁体字↔簡体字変換機能では《閤↔𬮤》となります。
なお、闔の現行簡体字は《阖》となっていますが、これは閤の簡体字の異体字にもなっているようで、講談社・刊『50音引き中国語辞典』では《阖》が閤の簡体字とされています。
《𬮤》が“阁=閣・合・阖=闔”と閤の各種簡体字表記とは別扱いで、“小さな扉”を意味する〈gé〉[ゴヲ]と読む古典漢文《閤》の簡体字として商務印書館『新華字典』(日本国内での発売元は東方書店)に記載され、小学館・刊『中日辞典(第2版・第3版)』にも《𬮤》が記載されていることと、ウィキペディアの中国大陸・マレーシア・シンガポールの各種簡体字表記切り替え機能で《閤》の字形に変化しないことから、太閤通駅の本来の簡体字表記は古壮字を含む【太𬮤通】の可能性が高そうです。
太閤通駅のピンイン表記別
《閤》の簡体字表記は複数存在するため、ピンイン順表記でまとめておきます。
繁体字表記【太閤通站】の場合のピンイン表記は太閣通由来の〈Tàigétōng-zhàn〉[タイゴヲトン・ヂャン]と本来の簡体字《合》由来の〈Tàihétōng-zhàn〉[タイホヲトン・ヂャン]の2種類がありえそうです。
TÀIGÉTŌNG-ZHÀN【太阁通站】……愛知県の各種サイトで広まっている表記。
TÀIGÉTŌNG-ZHÀNまたはTÀIHÉTŌNG-ZHÀN【太𬮤通站】……チワン語〈Daihaepdongh-can / Daihəpdoŋƅ-can〉の古壮字表記及びネット上で繁体字の〈太閤通站〉で代用される表記。
TÀIHÉTŌNG-ZHÀN【太合通站】……本来の簡体字表記。
TÀIHÉTŌNG-ZHÀN【太阖通站】……阖の繁体字《闔》の異体字が《閤》である関連性による表記。
伝統的な太閤通の中国語正式表記は【太閣通・太阁通】
愛知県名古屋市の太閤通における伝統的な簡体字表記は、小説及びドラマ『太閤記』が中国語で『太阁記 / 太閣記 / Tàigéjì』と表記されることにちなむ簡体字表記【太阁通】/繁体字表記【太閣通】とされていて、愛知県関連のいろいろなサイトで確認できます。
『愛知県観光協会:あいち観光ナビ』
【簡体】https://aichinavi.jp/cn/
【繁体】https://aichinavi.jp/tw/
『JR名古屋駅:名古屋うまいもん通り』https://www.nsk-eki.com/nagoya/cn/
他にも『名鉄バス』や『中部国際空港セントレア』のサイト内の地図PDFファイルや時刻案内PDFファイルで【太阁通】表記が確認できます。
本来の太閤通の簡体字表記に合わせた【太合通】表記の他にも各種サイトで【太阖通】表記や〈太𬮤通〉が花園明朝-B・BabelStone Han・Xim Sans Handwritten・Prangothic P1などのCJK漢字拡張対応フォントをインストールしないと表示できない関係上の簡体字表記の代用表記としての【太閤通】も増えそうな予感で、太閤通駅における正式な簡体字表記の統一があってほしいと願っております。