8月31日朝4時 「アメリ」のひらめき
ふとパリらしい風景を見たくなり、夜、久しぶりに『アメリ』を観た。
何年も前に見た時は晴れたパリや主人公アメリを演じるオドレイ・トトゥの美しさに気を取られていたのだけれど、今回はアメリの内面にある、結構な陰鬱っぷりや躊躇いの方が印象深く感じた。
物語の出発点は1997年8月30日、ちょうど今から27年も前の、イギリスのダイアナ妃が事故に遭った日の夜のこと。
洗面所でスキンケアをしていたアメリはテレビのニュースに気を取られ、ローションのふたを落とす。そのふたはコロコロと床をつたい、壁にぶつかって、壁のタイルが1枚外れてしまう。
アメリがタイルの向こうの暗闇の中を覗いてみると、"Bergamottes de Nancy"と書かれた古びた空き缶を発見する。
土埃をかぶった空き缶のふたを開けてみると、中にはモノクロ写真やツールドフランスのミニチュアなどの古いおもちゃが詰まっていた。
それはいつかどこかの少年がアパルトマンに隠していった「宝箱」で、アメリの表情は一気に明るくなった。
その晩、アメリはベッドで横になりながら、思いを巡らせる。
アメリは限られた情報をもとに、普段は顔を合わせるだけのアパルトマンの大家さんを頼ったり、昔の住人の記憶や同姓同名の人物をひとりひとり辿ったりと紆余曲折を経て、ついに宝箱の持ち主の少年を特定する。
すっかり大人になった少年は宝箱の存在を思い出し、「天使が奇跡を呼んでくれた」と涙を流して喜んだ。
大人になった少年の様子を見ていたアメリ自身もうれしくなり、これをきっかけに徐々に外との世界との触れ合いを広げていくのだけれど、この元少年や、その後にパリの街角で出会うことになるパリジャンとはどうも「直接」的な関わりを持つことができず、孤独を拭いきれないでいる。
自分の「好き」に浸り、空想をするのは楽しい。でも、それが夢の延長だったとしても、外の世界とつながるのは、いつも楽しいことばかりではない。
2024年8月31日の朝4時。
台風10号の影響か、雨の音で目が覚めたものの、新しいひらめきはなかったな。
ただ、フランスでの新しい生活を具体的にしていこうとする過程で早くもいろいろな壁に直面している中で、その苦しみはアメリが抱えていた苦しみや、パリの街中に潜んでいる闇の部分と重なっているような気がした。
決意をしたその時から、淡い思いにどんどん現実味が増しているような感覚だ。
少しは前進しているということか。
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