身長195センチの小学生VSエロガッパ「粘膜人間」

 ある日、小学生の弟がデカくなった。しかし小学生の未熟な精神に、その体格と力は危険すぎた。殺されることを心配した兄達は、村に住む河童達に弟の殺害を依頼する。
 変な話である。こんなファンタジー小説は初めて読んだ。ちなみに舞台は戦時中で、日本軍みたいなのも出てくる。河童と日本軍。すごい組み合わせだ。
 どんな生活をすればこんな発想ができるのだろう。作者の頭を覗いてみたい。
 しかし、この小説を万人には勧められない理由がある。そう、グロすぎるのである。
 特に第弐章はヤバい。この章では軍による、非国民に対する拷問がずっと続く。自分はグロに弱いので、気持ち悪くなった。スプラッター映画のようだった。
 どんな生活をすればこんな発想ができるのだろう。作者の頭を覗いてみたくない。
 突拍子もない世界観とグロテスク。この小説を表すには後一つ、口に出したい日本語というものがある。
 そう、ところどころ謎に語感の良い言葉がある。少し、引用する。

「それは俺とグッチャネをしてもいいと言っているのかっ?」
「グッチャネって何だ?」
「女の股ぐら泉に男のマラボウを入れてソクソクすることだっ」

 本作は、大体こんな感じの空気感である。

 ・・・いや、引かずに是非読んでほしい。

 ここでは河童がセックスについて話している。グッチャネ、股ぐら泉、ソクソク。独特なワードである。
 なんだか印象に残らないだろうか?インパクトが強烈なのである。
 しかし、よくよく考えると、これらの言葉、とても腑に落ちるのである。
 グッチャネやソクソクは恐らくセックスをする際の様子や音から来ている。股ぐら泉は見た目だろう。

 性教育を受けていない人間はセックスの事を何と言うだろう?

 この発言は河童によるものである。つまり、人間のように性行為をセックスと言うはずがないのだ。恐らく河童自身が、そう名付けたのだろう。
 そう考えれば、とてもよく練られたキャラクター造形なのである。
 イカれた世界観とそれを支える細かな設定。本作は、この二つが両立した素晴らしいダークファンタジー小説なのである。

 なお粘膜人間は作者飴村行のデビュー作である。これは第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞した。その後シリーズ化し、粘膜蜥蜴、粘膜兄弟、粘膜戦士、粘膜探偵と続く。なお二作目の粘膜蜥蜴では、日本推理作家協会賞を受賞している。

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