【読書感想文】息吹(平野啓一郎)
奥さんが、最近、平野啓一郎さんの本をよく読んでいて、本を買ってきました。私は、本当にお恥ずかしながら、「マチネの終わりに」の映画は観たのですが、原作は読んでおらずじまいで、また、読もうと思います。
さて、奥さんが買ってきた本は、短編小説集「富士山」で、パラパラとめくってみると、大腸内視鏡検査の文字が飛び込んできました。数週間後に、大腸内視鏡検査の予約をしている私には、この「息吹」という短編を思わず読まずにはいられませんでした。大腸内視鏡検査は、私にとっては初めての経験になります。その直前に、この小説では、主人公の、大腸内視鏡検査をきっかけとする妻と子供にまつわる話が展開されます。家族構成も主人公と同じで、ちょうど読むべきタイミングにこの小説と出会い、幾分検査を不安にも感じているかもしれない私に、何かしらの示唆を与えてくれるかもしれないとも思いました。
とても読みやすく、自分事とも重なり、あっという間に読んでしまいました。ネタバレになるので、内容には詳しくは触れませんが、面白かったです。
小説の内容は、私には少し不思議な世界にも感じましたが、がんという病気が、人間の身体、生命を脅かす存在であると同時に、がんを患ってしまったかもしれない自分と向きあうことへの恐怖や、残される時間や、家族に対する関係性の変化にも大きく影響を与えるものであり、当事者や家族の、病や死への認知や心理がどうなっていくのかと、ハラハラしながら読み進んでいきました。
検査を控えている私にとっては、何もないという結果であってほしいのですが、もしも何か見つかったときに、その結果をどう受容できるのかを考えさせられました。主観的な認識の持ち方によって、世界の視え方も変わるのでしょうけど、無意識の内で抗えない部分もあるのかもしれません。
凡庸な感想になりましたが、検査は早めに受けることにこしたことはないと思いました。