パースケ

既婚サラリーマンで一児の父です。文章は下手ですが、書くのは好きなので、気軽に発信してみようと思います。雑多な内容になりそうですが、よろしくお願いいたします。

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最近の記事

【読書感想文】息吹(平野啓一郎)

奥さんが、最近、平野啓一郎さんの本をよく読んでいて、本を買ってきました。私は、本当にお恥ずかしながら、「マチネの終わりに」の映画は観たのですが、原作は読んでおらずじまいで、また、読もうと思います。 さて、奥さんが買ってきた本は、短編小説集「富士山」で、パラパラとめくってみると、大腸内視鏡検査の文字が飛び込んできました。数週間後に、大腸内視鏡検査の予約をしている私には、この「息吹」という短編を思わず読まずにはいられませんでした。大腸内視鏡検査は、私にとっては初めての経験になり

    • 【エッセイ】夢に向かって

      中学1年の息子は、中学受験を終えてから、ほとんど勉強をしていません。ゲームに熱中して、ずっと友達とオンラインで遊んでいます。親としては、若干心配ですが、まだ中1だし、遊びたい盛りです。しばらくは様子を見守ろうと思っています。 そんな息子が、ゲームコントローラーを分解して、何やら大きな部品を取り外しています。そんなことして壊れないかというと、ゲームに合わせて振動が指先に伝わる部品らしいのですが、かえってゲームがやりづらくて、コントローラーも軽いほうが、プレイに集中できるのだそ

      • 【ショートショート】パスタを巡る論争

        穏やかな日曜の昼に、彼女がスーパーでパスタを買って僕の部屋にやってきて、ランチを振る舞ってくれることになった。 キッチンに彼女が立ち、湯を鍋で沸騰させて、塩をひとつまみ入れて、パスタを茹でていた。同時に買ってきたトマト缶から、トマトソースも作っていた。僕は、横でコーヒー豆を挽いて、コーヒーメーカーでコーヒーを淹れていた。 パスタの茹で時間になったので、彼女は、熱湯とともにパスタをザルに入れてさっと湯をきり、皿に湯気の立ち昇るパスタを盛って、熱いトマトソースと絡めて、出来上

        • 【エッセイ】しょっぱい自己啓発セミナー

          あらかじめ断っておくのですが、標題の「自己啓発セミナー」といっても、現在では、医療機関や公的機関等から紹介される、マインドフルネスや認知行動療法を取り入れた、心理状態を安定改善させるための、一定の科学的根拠もあるセミナーもあったり、コーチングや、ビジネススキル、ビジネスマインドを磨くための真面目なセミナーもあると思います。すべてとはいえないのかもしれませんが、自分の足りない部分に合わせて、そのようなちゃんとしたセミナーを受講することは、ご自身の判断の上で、否定をするものではな

          【中学受験】鶏口牛後

          息子は今年の春に中学受験し、無事に中学に合格しました。 ちょうど1年前の秋頃は、SAPIXで追い込みの時期でした。息子はSAPIX偏差値で50~55くらいで、アルファクラスなど在籍はしていませんでしたが、それでも、授業のレベルは高く、復習のプリントも難解かつ膨大で、正直、家庭学習は消化できていなかったです。息子もかなり疲労していたように見えたので、親としては息子の健康やメンタル面を重視して、無理に勉強をさせるようなことはしませんでした。 マンスリーテスト、組分けテスト、復

          【中学受験】鶏口牛後

          【ショートショート】5つ目の力

          物理学では、この世界には4つの力が存在するそうです。重力、電磁気力、強い力、弱い力です。 普段の生活で感じる私たちの巨視的世界では、重力が大きな影響を与えています。例えばボールを投げると放物線の軌跡を描いたり、バネにおもりをつけて引っ張って放すと単振動の運動をするといった現象は、ニュートン力学で説明が可能です。 実際の生活世界には、この4つの力のほかに5つ目の力が存在しているが、まだその性質は明らかにされていないと言われています。 特にサラリーマンに働く、社内力学の世界

          【ショートショート】5つ目の力

          【ショートショート】夢の南の島

          新婚夫婦が旅行で海外に飛びたちました。飛行機は悪天候のなか、あいにく南の島に不時着してしまいました。 しかし、その南の島は、どこまでも広がるカリビアンブルーの海に、白く長く続く遠浅の砂浜を波飛沫が洗い流し、日常の些末なことなども、洗い流してくれます。 島には、低木が茂っていて、大きな樹の実が採れます。島の人たちは、樹の実を主食にしていて、栄養があり、とても美味しい樹の実を、毎日食べて健康に暮らしています。 その低木からは、ハープを作ることもできます。島の人たちは、ハープ

          【ショートショート】夢の南の島

          【ショートショート】俺じゃね?

          仕事の外回りで、通勤電車のロングシートに座り、ついウトウトしてしまった。 目が覚めて、ヤバい乗り過ごしたか、とドキッとしたが、まだ降りる手前の駅で、ホッとした。 ふと向かいの席の男に目が向いた。硬質の天然パーマに、福耳でタレ目で眼鏡をかけ、タラコ唇のその男は、俺ソックリで、思わず目玉が飛び出そうになった。 ヤバい、俺じゃね? 幸い、俺と同じように、ウトウト寝ている。 これ、起きて目が合ったら、気まずくね? 気が小さい俺は、男が起きて目が合う前に、手前の駅でそっと降

          【ショートショート】俺じゃね?

          【エッセイ】美術論、そしてしょっぱい美術展

          大学時代、教養学部の総合科目で、「美術論」という講義を聴講していました。 印象派のモネの絵画は、それまで価値のあるとされた、宗教的な人物像なりエピソードなりを描いた伝統的宗教画から解放され、空や光や水面や雲や睡蓮といった、自然や環境の織り成す風景を生き生きと描いた作家であり、積藁や、ルーアン大聖堂などの連作によって、一つの対象が刻々と光と影により変化していく様を絵画で表現したといったことを、美術批評の先生が、講義で淡々と話されていました。 ただの美術史ではなく、絵画の視方

          【エッセイ】美術論、そしてしょっぱい美術展

          【エッセイ】カップ麺と自由

          カップ麺は、如何に精巧に製造されていても、例えば有名店の監修であったにせよ、本物の店とは似て非なる麺であり、店では決して供されることのないという事実。そこに存在するのは、「店で供されることのない麺」と「店で供される麺」との間に横たわる埋めがたい断絶。この単純な事実を、私たちはまず謙虚に受け止める態度が必要だと思います。 その上で、その断絶を、私たちは本物の麺と比べてどうかなどといった論評や批評の類の野蛮な行為に陥ることなく、むしろ、軽快さと、幾分の驚きと感性で愉しむことに集

          【エッセイ】カップ麺と自由

          【エッセイ】オイスターリベンジ

          牡蠣は大好物です。会社の同僚に、ある街に美味しい牡蠣の店があると聞いて、とある店に奥さんと行きました。玄関を開けると、カウンター席で、ホスト風の男が、美女を口説いています。 これはちょっと入りづらいな、と思ったのですが、黒服の店員に、いらっしゃいませ、こちらへどうぞと、ホスト風の隣のカウンターに案内されました。隣は何だかいちゃついたムードを醸し出していて、そそくさと出ようと思いました。 とはいいつつ、カナダやアメリカ、厚岸、広島など、国内外のいろいろな牡蠣が並んでいて、形

          【エッセイ】オイスターリベンジ

          【読書感想文】東大入試至高の国語「第二問」(竹内康浩著)

          本書は、かつて東大現代文に出題されていた「200字作文」の問題を精選し、筆者が解説を加えたものです。ただ、現在では「200字作文」の問題は、出題されていません。受験参考書というよりは、東大の問題を手がかりに、東大が受験生に何を求めているのかを、徹底した精読と背景となる思想を加えながら、論理展開していきます。受験生が読んでもよいとは思いますが、むしろ大人になってから教養書として読むのに、十分な読み応えがあり、読み終えたときには、爽快感を感じました。 金子みすゞの詩や、映画「男

          【読書感想文】東大入試至高の国語「第二問」(竹内康浩著)

          【ショートショート】手術

          気がつくと、私は手術台の上にいた。私は、医者に最高の頭脳と肉体を手に入れたいと依頼したのだった。 医者は、手術着ではなく、寿司屋の大将の格好をしていた。メスというが、刺身包丁を手に持ち、私の皮膚を手際よく捌き、ペロリと裏返しにした。その間、私の脳みそには、電気技師がハンダゴテで回路をなにやら取り付けて、頭に再度取り付けていた。裏返しにした体に、今度はミシンを持ち出し、裁縫を始めた。   手術が終わり、私は最高の頭脳と肉体を手に入れた。鏡を見て納得した。私は、完璧なくまの

          【ショートショート】手術

          【旅行記】流氷オホーツク

          社会人になったばかりの頃、流氷を見たくなり、2月に有給休暇をとってオホーツク沿岸へ旅に出かけました。 飛行機で新千歳空港に着き、札幌まで出て、当時走っていた夜行列車の網走行きに乗り込みます。普通車の座席ですが、ディーゼルカーの振動と室内の暖房が心地よく、消灯してからすぐに寝込んでしまいました。 途中、ハッと目が覚めると、しばらく駅に停車しています。シンシンと雪が降っていて、窓からは冷気が伝わり、積もった雪の雪あかりは青白く、車内まで照らしていました。 途中の遠軽に4時に

          【旅行記】流氷オホーツク

          【読書感想文】忍恋(「葉隠入門」三島由紀夫)

          江戸時代、鍋島藩の武士であった山本常朝により記された「葉隠」は、武士の心構えを説いた書です。 「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」 という「葉隠」の一文は、とても有名で、過激な思想の書かと思ったのですが、その他にも、平常の仕事や生活の指南書的なことも多く書かれていて、現在でいう仕事のスキルやマインド本のような、サラリーマンなどにも通じる内容も含まれていると感じます。 この「葉隠」の魅力を、三島由紀夫が余すところなく解説しているのが、「葉隠入門」です。三島は、座右の書と

          【読書感想文】忍恋(「葉隠入門」三島由紀夫)

          【エッセイ】家庭教師

          今思えば、社会に出る前にいろんな経験を積むためにも、大学のときに、もっとたくさんのバイトをすれば良かったとも思いますが、時給も良くて効率が良いバイトということで、家庭教師しかしませんでした。 家庭教師の会社に登録はせず、下宿の近所のスーパーの伝言板などに、名前、大学、電話番号を自分で張り出して、直接生徒を募集していました。個人情報保護が厳しい今では考えられないのですが、30年程前は、まだ牧歌的な時代でした。中学生、高校生の英語、数学、物理、化学を教えていました。 一番楽だ

          【エッセイ】家庭教師