パースケ

はじめまして。神奈川在住の既婚のサラリーマンです。50代を目前にして、何か新しいことを…

パースケ

はじめまして。神奈川在住の既婚のサラリーマンです。50代を目前にして、何か新しいことをやってみたい、発信してみたいと思い、参加しました。文章は下手ですが、書くのは好きです。政治、経済、社会、から、旅行、グルメ、子育て、小説の真似事まで、雑多になりそうです。宜しくお願いいたします。

最近の記事

【ショートショート】夢の南の島

新婚夫婦が旅行で海外に飛びたちました。飛行機は悪天候のなか、あいにく南の島に不時着してしまいました。 しかし、その南の島は、どこまでも広がるカリビアンブルーの海に、白く長く続く遠浅の砂浜を波飛沫が洗い流し、日常の些末なことなども、洗い流してくれます。 島には、低木が茂っていて、大きな樹の実が採れます。島の人たちは、樹の実を主食にしていて、栄養があり、とても美味しい樹の実を、毎日食べて健康に暮らしています。 その低木からは、ハープを作ることもできます。島の人たちは、ハープ

    • 【ショートショート】俺じゃね?

      仕事の外回りで、通勤電車のロングシートに座り、ついウトウトしてしまった。 目が覚めて、ヤバい乗り過ごしたか、とドキッとしたが、まだ降りる手前の駅で、ホッとした。 ふと向かいの席の男に目が向いた。硬質の天然パーマに、福耳でタレ目で眼鏡をかけ、タラコ唇のその男は、俺ソックリで、思わず目玉が飛び出そうになった。 ヤバい、俺じゃね? 幸い、俺と同じように、ウトウト寝ている。 これ、起きて目が合ったら、気まずくね? 気が小さい俺は、男が起きて目が合う前に、手前の駅でそっと降

      • 【エッセイ】美術論、そしてしょっぱい美術展

        大学時代、教養学部の総合科目で、「美術論」という講義を聴講していました。 印象派のモネの絵画は、それまで価値のあるとされた、宗教的な人物像なりエピソードなりを描いた伝統的宗教画から解放され、空や光や水面や雲や睡蓮といった、自然や環境の織り成す風景を生き生きと描いた作家であり、積藁や、ルーアン大聖堂などの連作によって、一つの対象が刻々と光と影により変化していく様を絵画で表現したといったことを、美術批評の先生が、講義で淡々と話されていました。 ただの美術史ではなく、絵画の視方

        • 【エッセイ】カップ麺と自由

          カップ麺は、如何に精巧に製造されていても、例えば有名店の監修であったにせよ、本物の店とは似て非なる麺であり、店では決して供されることのないという事実。そこに存在するのは、「店で供されることのない麺」と「店で供される麺」との間に横たわる埋めがたい断絶。この単純な事実を、私たちはまず謙虚に受け止める態度が必要だと思います。 その上で、その断絶を、私たちは本物の麺と比べてどうかなどといった論評や批評の類の野蛮な行為に陥ることなく、むしろ、軽快さと、幾分の驚きと感性で愉しむことに集

        【ショートショート】夢の南の島

          【エッセイ】オイスターリベンジ

          牡蠣は大好物です。会社の同僚に、ある街に美味しい牡蠣の店があると聞いて、とある店に奥さんと行きました。玄関を開けると、カウンター席で、ホスト風の男が、美女を口説いています。 これはちょっと入りづらいな、と思ったのですが、黒服の店員に、いらっしゃいませ、こちらへどうぞと、ホスト風の隣のカウンターに案内されました。隣は何だかいちゃついたムードを醸し出していて、そそくさと出ようと思いました。 とはいいつつ、カナダやアメリカ、厚岸、広島など、国内外のいろいろな牡蠣が並んでいて、形

          【エッセイ】オイスターリベンジ

          【読書感想文】東大入試至高の国語「第二問」(竹内康浩著)

          本書は、かつて東大現代文に出題されていた「200字作文」の問題を精選し、筆者が解説を加えたものです。ただ、現在では「200字作文」の問題は、出題されていません。受験参考書というよりは、東大の問題を手がかりに、東大が受験生に何を求めているのかを、徹底した精読と背景となる思想を加えながら、論理展開していきます。受験生が読んでもよいとは思いますが、むしろ大人になってから教養書として読むのに、十分な読み応えがあり、読み終えたときには、爽快感を感じました。 金子みすゞの詩や、映画「男

          【読書感想文】東大入試至高の国語「第二問」(竹内康浩著)

          【ショートショート】手術

          気がつくと、私は手術台の上にいた。私は、医者に最高の頭脳と肉体を手に入れたいと依頼したのだった。 医者は、手術着ではなく、寿司屋の大将の格好をしていた。メスというが、刺身包丁を手に持ち、私の皮膚を手際よく捌き、ペロリと裏返しにした。その間、私の脳みそには、電気技師がハンダゴテで回路をなにやら取り付けて、頭に再度取り付けていた。裏返しにした体に、今度はミシンを持ち出し、裁縫を始めた。   手術が終わり、私は最高の頭脳と肉体を手に入れた。鏡を見て納得した。私は、完璧なくまの

          【ショートショート】手術

          【旅行記】流氷オホーツク

          社会人になったばかりの頃、流氷を見たくなり、2月に有給休暇をとってオホーツク沿岸へ旅に出かけました。 飛行機で新千歳空港に着き、札幌まで出て、当時走っていた夜行列車の網走行きに乗り込みます。普通車の座席ですが、ディーゼルカーの振動と室内の暖房が心地よく、消灯してからすぐに寝込んでしまいました。 途中、ハッと目が覚めると、しばらく駅に停車しています。シンシンと雪が降っていて、窓からは冷気が伝わり、積もった雪の雪あかりは青白く、車内まで照らしていました。 途中の遠軽に4時に

          【旅行記】流氷オホーツク

          【読書感想文】忍恋(「葉隠入門」三島由紀夫)

          江戸時代、鍋島藩の武士であった山本常朝により記された「葉隠」は、武士の心構えを説いた書です。 「武士道といふは、死ぬ事と見付けたり」 という「葉隠」の一文は、とても有名で、過激な思想の書かと思ったのですが、その他にも、平常の仕事や生活の指南書的なことも多く書かれていて、現在でいう仕事のスキルやマインド本のような、サラリーマンなどにも通じる内容も含まれていると感じます。 この「葉隠」の魅力を、三島由紀夫が余すところなく解説しているのが、「葉隠入門」です。三島は、座右の書と

          【読書感想文】忍恋(「葉隠入門」三島由紀夫)

          【エッセイ】家庭教師

          今思えば、社会に出る前にいろんな経験を積むためにも、大学のときに、もっとたくさんのバイトをすれば良かったとも思いますが、時給も良くて効率が良いバイトということで、家庭教師しかしませんでした。 家庭教師の会社に登録はせず、下宿の近所のスーパーの伝言板などに、名前、大学、電話番号を自分で張り出して、直接生徒を募集していました。個人情報保護が厳しい今では考えられないのですが、30年程前は、まだ牧歌的な時代でした。中学生、高校生の英語、数学、物理、化学を教えていました。 一番楽だ

          【エッセイ】家庭教師

          【エッセイ】腕時計

          ある大学の先生は、何十年も同じ腕時計をつけていました。デジタル腕時計で、中学生が初めて買ってもらうような、とてもシンプルな時計です。先生は、「時計は時間がわかればいいのだから、壊れない限り使い続けて、これで十分。」と、話されました。とても合理的な見識で、先生らしいお考えだなと聴いていました。 先生は、それからチラリと私の腕時計を見て、「いい時計だね。」と言われました。私は、「ありがとうございます。」と先生に答えました。 この腕時計は、社会人になってから、今の奥さんが結婚前

          【エッセイ】腕時計

          【ショートショート】唐揚げビンゴ

          唐揚げが無性に食べたい。 焼肉とか、ラーメンとか、カレーなどは、無性に食べたくなるときがある。しかし、唐揚げは、私にとって、無性に食べたい頻度はそれほど多くないレアキャラだ。 会社を退社すると、腹はペコペコ。ちょっと寄り道して、居酒屋で唐揚げとビールでサクッと一杯という選択肢もある。しかし、その日は、なぜかビールという気分ではなかった。唐揚げには、白米というチョイスしかなかったのだ。 家にまっすぐに帰ることにした。とにかく腹がすいてたまらない。ただ、「今日は唐揚げをお願

          【ショートショート】唐揚げビンゴ

          【エッセイ】4÷3=2+2

          我が家は、私と奥さんと息子の3人家族です。 会社から帰宅するとき、ちょっと喜ぶだろうと、コンビニなどに寄ってアイスを買って帰ります。息子に甘いので、2つは息子に、奥さんと私は、1個ずつでいいだろうと、4つアイスを買います。 「パパ、ありがとう。」 「好きなもの食べていいよ。」 「とりあえず、冷凍庫に冷やしておきましょう。」 アイスは冷凍庫に仕舞われたまま、その日は寝てしまいました。 数日後に、会社から家に帰ってくると、冷凍庫に仕舞ったアイスがありません。 「あれ

          【エッセイ】4÷3=2+2

          【エッセイ】日帰り一人旅

          週末に日帰りで一人旅というのが、最近の私のリフレッシュになっています。 この短いエッセイも、電車に揺られながら書いています。目的地は、日帰りで帰ってこれる地域をおおまかに頭に描き、後は駅に向かうだけです。 ホームに来た電車に、おもむろに乗り込みます。行先は、日帰りで帰ってこれる範囲内なら、行き当たりばったりでOK。私は、あえて計画を立てません。席に座って、さあ出発です。 電車のガタンゴトンという音と振動が、まずとても心地よく、すぐに日常のことを忘れさせてくれます。これは

          【エッセイ】日帰り一人旅

          【読書感想文】人新世の資本論

          遅まきながら、新書でベストセラーとなっている斎藤幸平氏の「人新世の資本論」を読了しました。 資本主義にどっぷりと浸かった生活をしている私たちですが、気候変動という喫緊の課題に対し、どうすればよいのかという提案が、本書の主題であり、マルクス主義の再解釈にその根拠を求めています。 まず、資本主義の改善では、解決が難しいと主張しています。資本主義は、あらゆる財やサービスを希少性のある「商品」として貨幣と交換可能なものとするため、富のあるものが必然的に富んでいき、格差の拡大をもた

          【読書感想文】人新世の資本論

          【エッセイ】恩師の現代文講師

          大学受験は理系でしたが、二次試験にも国語がありました。現代文は特に苦手でしたが、当時代ゼミで教えられていた堀木という先生の夏期講習を受講したところ、一気に現代文に開眼しました。 90年代当時、代々木の教室には、学生もまばらでしたが、堀木先生は、パフォーマンスなど一切せず、淡々と本文を解説されていたことを思い出します。クーラーの少し効きすぎた教室で、講師の机にはお茶が一本用意されていました。渋い声の堀木先生の講義を聴講していた時間は、今思い出しても、とても贅沢な時間だったよう

          【エッセイ】恩師の現代文講師