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映画「碁盤斬り」が沁みた…不器用だからこそ美しい武士の生きざまが、今を生きる人の心を掴む!

映画『碁盤斬り』を近くのミニシアターで観てきました。
江戸を舞台にした映像は自然美を活かして鮮やかに映えて、ストーリーもラストに向けて一気呵成に盛り上がり胸に沁みるラストでした。

あまりネタバレない程度にご紹介を。
――浪人、柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘の絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、噓偽りない勝負を心掛けている。ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進と絹は、復讐を決意する……。

ラスト近くに映画の題名そのものが、ネタバレやんと気づくことになるのですが、古典落語の名作「柳田格之進」を完全映画化、と銘打っているので、大筋が分かって観る人も多いのですね。私は後で知りました。

感動のリベンジ・エンターテイメント、とのコピーですが、私的には江戸時代を背景にした人間群像劇でもあると感じました。登場するキャラクターたちが皆、丁寧な人物造形となっています。
格之進の仇である柴田兵庫さえ、一見悪の化身でありながら弱さと優しさを秘め、格之進に新しい生き方を提示する。映画では、多面的で多彩な人物造形に学ぶところが大きいのです。

武士だからこそ、貧しい暮らしにありながら誇りを失わずに生きる。
せっかく手にした仕事の報酬を、賭け碁に手を出して使ってしまう。
謝礼として差し出された礼金には手を伸ばさない。
貧しいゆえに疑われたら、抗弁はぜずに切腹も辞さない。
今だったらあり得ない生きざまですが、そうありたいと密かに憧れる現代人の思いが、格之進の不器用ながら毅然とした佇まいをより美しくいぶし銀のように耀かせる。俳優・草彅剛がこんなにも渋く逞しく年を重ねたことにも、胸が震えました。

時代小説を書くので、映像として江戸を見ることができるのも愉しく嬉しい時間です。訪れたことのある八幡堀の水辺の景色は、いつ見ても懐かしく胸がほっこりと温まります。
私って前世は絶対、江戸時代の浪人か絵師だったと思う。いや小間物屋の女将かな…もちろん戯作者で間違いない、なんて妄想してしまいます。

心惹かれた方はぜひ『碁盤斬り』 ご覧ください。

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