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【360°アート空間】『サルバドール・ダリ 永遠の謎』やっぱり天才に恋したい
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いざ、有給消化の時。
跳ね上げたヒゲが超セクシーな天才芸術家、サルバドール・ダリ。
私はとっくに彼の虜だったが、ついに先日、彼のアートの世界に没入する体験をしてきた。
正直、ここまで心奪われた展示は久しぶりだった。
なので今回は、写真と共に振り返りながら、なぜダリがこれほど魅力的なのか、そして彼が今の私たちに教えてくれることについて、少し語りたいと思う。
※展示のネタバレあり。
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東所沢駅から徒歩10分ほどで、隈研吾が設計した角川武蔵野ミュージアムに到着。
まずこの建物自体がトリックアートのようで、見る角度によって予想不可能に形が変わる。
外壁には約2万枚の花崗岩が使われているらしい。
それが多いのか少ないのかは分からないが、白とグレーのモザイク模様が、濡れた地面と曇天のあいだで存在感を放っていた。
そしていざ、ダリの世界へ。
わくわくして縺れそうな脚で階段を降りていけば、すぐにダリが出迎えてくれた。
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チャーミングな口ヒゲと、私たちには見えていない何かを見つめるような大きな目。
そして割れた卵のオブジェ。
このあとの展示で分かったことだが、ダリにとって「卵」はお気に入りのモチーフで、「誕生」や「再生」のシンボルらしい。
ただの「おいしいタンパク質豊富な食べ物」じゃない。
きっとダリは私なんかよりずっと、物事の意味合いを理解して、それを自分の感性でコントロールしていたんだ。本当に憧れる。
なんといっても今回の展示の特別な見どころは、「体験型デジタルアート」。
入口を入って少し進むと、ぱっと開けた巨大な空間に出た。
その空間は、見渡す限りすべてがアートだ。
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壁面と床面がシームレスで、プロジェクターによってダリの作品がダイナミックに映し出される。
目の前で、足元で、次々に変わっていく映像。
場面が変わるごとに、圧倒的な画力がぐわんぐわんと押し寄せてくる。
さらには頭の上から、ピンク・フロイドの曲が降る。
脳みそが宇宙人に乗っ取られそうなほど幻想的なメロディーが大きく響き渡って、胸の奥がどんどんと鳴った。
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歩いているとだんだん地面に立っている感覚がなくなって、宇宙空間に放り出されたような気分になってくる。
色んな光景が現れては消えていく。
同じ写真は二度と撮れない。
溶ける時計。
虎を吐き出す魚。
クモのような細い脚の象。
怪物の顔。
異世界のような広い空間の中、どこを歩き回っても、理解できるものに出会えない。
もちろん画力も凄まじいが、私が何よりも感じたのは、ダリの想像力、創造力、常識に囚われない意欲の強さだった。
同じものを見ていても、そこから何を思い浮かべるかは人によって違う。
それは当然だが、自分だけが持つイメージが強すぎることは、時には周りとの溝を深くする。
しかしダリはそんなことは意に介さず、自分の描きたいイメージの表現に全力を注いだんだ。
そう考えると、いよいよダリという人に心奪われてしまう。
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次の展示に進むためにしぶしぶデジタルアートの空間を出たとき、プールサイドに上がったときのような重力を感じた。
ダリの描く世界はまるで夢の世界のようだと言われることがあるが、まさに現実に引き戻された気分だった。
ダリの作品を身体中で感じた後は、ダリ自身の謎が明らかにされていく。
大きなレースが何枚もひらひらと天井から垂れ下がり、その一つ一つに、ダリの語った言葉が刻まれていた。
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“天才を演じつづけよ。そうすれば、おまえは天才となるのだ!”
ダリの思考の中に入り込むように、レースを見上げながら進んでいく。
手で押しのけてもふわりと揺れるだけのレースは、掴みどころのないダリ自身のようで少し切なかった。
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いや、現実世界を飛び越える。
“教室で、天井にある雨もりの汚点をじっとみつめるだけでよいのだ。
わたしは現実の形象を任意に変形することができる。
それらは、まず雲になり、ついで形態をもち、つぎには事物になる。”
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“わたしは存在するために、そして自我の全エネルギーを統合するために、絵を描くのだ。”
うん、間違いなく彼はそうだっただろうな。
ダリの絵の持つエネルギーを全身に浴びた後だから、心から納得せざるをえなかった。
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その先の展示もすごく良かった。
ダリの生い立ち。
同じ時代を烈しく生きた芸術家たち。
作品に込められたインスピレーション。
エンターテイナーで独創的なダリは、奇怪な行動も多かったそうだ。
ピカソと並んでスペインを代表する画家でありながら、シュールレアリスムのグループから除名されている。
展示の解説の中で、印象的だったエピソードをいくつかまとめておく。
・ダリには、同じサルバドールという名前の兄(1歳で逝去)がいた。このせいで、自分は兄の身代わりだという意識に生涯とらわれ、強烈に自身のアイデンティティを求めた。
・詩人ポールエリュアールの妻であるガラを、「母よりも、父よりも、金銭さえよりも」愛した。
・1945年、広島・長崎に原子爆弾が投下されたことに衝撃を受け、作品のテーマとして核爆弾を扱うようになる。
パーソナルな部分には驚かされることも多いが、彼の作品を見ていると、世界の見方が少しグレードアップする気がする。
特に、「モチーフ」というものについて深く考えさせられる。
卵が再生のモチーフであることはすでに書いたが、他にも、
・蟻…死
・眠り…細長い胴体をした、巨大な頭をもつ怪物
・時計…カマンベールチーズ
など、ダリの中では、様々なダブルイメージが渦巻いていたらしい。
印象派の画家たちが私たちに「光の描き方」を問いかけるように、ダリは私たちに、「物事が何を意味するか」、そして「自分が物事をどう捉えるか」を問いかけてくるのだ。
小さい頃はもっと自由に物事を捉えていたはずなのに、大人になったらどうしても、物事の持つ意味合いが固定されてしまう。
何かに自分なりの意味を与えることがなんだか恥ずかしくて、ふくらんだ想像を押しつぶしてしまうこともある。
でも多分、何歳になっても、「自分にとっての強烈なイメージ」を持つモチーフってあると思うんだ。
私にとってそれは何だろう?
私は、何を何に重ね合わせて見ているだろう?
絵には描けなくても、こんなことを考えるだけで、自分の人生と価値観を振り返るきっかけになると思う。
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ダリの表現力も貪欲さも、「天才」という一言でまとめてしまうのがもったいないくらい魅力的だ。
それを改めて感じられただけでも、行く価値があった。
ミュージアムでの展示は5月末まで開催中なので、時間が取れる人はぜひ行ってみてほしい。
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ではまた、次のnoteで。
過去にダリの作品を紹介したnoteはこちら
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