「昔悪かった自慢」を聞くとしんどくなってしまう、真面目な人へ
「俺、昔は悪かったんだよね~」
「親とか先生にも、めちゃくちゃ怒られてきたし」
「でもあの頃の経験が、今の自分を作ってるってゆーか」
「ああいう経験をしたからこそ、見えてくる世界もあると思うんだよね」……
「昔悪かったこと」「不真面目だったこと」をまるで美談のように語る人って、この世に一定数いますよね。
私はそういう話を聞くと、何だか息が詰まりそうになります。
軽蔑と、不愉快さと、少しの嫉妬と羨望で。
はじめに感じるのは、軽蔑とか不愉快さです。
シンプルにいうと、「この人、痛いな」という気持ち。
私は普段、できるだけ、人をむやみに嫌わないように気をつけながら生きています。
誰かのことを嫌いになっても、いいことなんてないから。
だけどさすがに、人にはとても自慢できないような話を平気で語られた時には、その厚顔無恥さに幻滅してしまいます…。
人に迷惑をかけたり困らせたりすることを恥だと思っていないような人とはたぶん気が合わないし、関わると痛い目を見そうですからね。
だからまぁ、不快ではあるけど、この時点ではまだその相手と距離を置くことを決心すれば済む話かもしれません。
適当に相槌を打ちながら、「恥知らずで幼稚な人だな」と、心の中で笑っていればいいのかもしれない。
ですが、相手の話を聞いているうちに、なぜだか私はだんだんと、自分を責めたいような、惨めな気持ちになってくるんです。
相手の勝ち誇った顔が、私にこう言っているのを感じるから。
「ねぇ、分かる?あなたみたいな、フツーの人生じゃないんだよ」と。
私はこれまでの人生を、ずっと真面目に、まっとうに生きてきました。
虫の居所が悪くてクッションを蹴り飛ばしたり紙をビリビリに破いたりしたことはありますが、所詮その程度。
誰かに暴力を振るったことなんて一度もないし、暴言を吐いたこともほとんどありません。
だから「昔はちょっと悪いことしてたんだ~」的なエピソードが、何もないんです。
だから正直に言うと、ちょっと思ってしまうんですよね。
「この人の過去は誉められたものではないけど、確かに私の平凡な人生よりは、刺激的かもしれないな」って。
それが、嫉妬と羨望の理由です。
数年前に、友人と複数人でご飯を食べていた時のこと。
友人の一人が、こんなことを言い出しました。
「ねぇねぇ、小、中学生時代の面白い話聞かせてよ~」
ここまで読んでくださった方にはお察しの通り、私はこの手の話がめちゃくちゃ苦手です。
真面目だけが取り柄で生きてきたから、皆を驚かせる面白エピソードなんて1つもない。
あったとしても、リアクションに困る微妙なものばかりです。
ご飯の味が分からなくなるくらい頭をフル回転させて何かを捻りだそうとしていると、友人の一人が「あー、あるよ~」と言い出しました。
その子はすごく女の子らしくて、小さなパンも両手で持って食べるような子でした。
どんな可愛らしい話なんだろうと期待していると、その子はこう言ったんです。
「小学生の時にね、運動場の真ん中で、友達と殴り合いのケンカしたの~」
皆がポカンとしたのもつかの間。すぐに、
えええええ、めっちゃ意外だねー!!
そんなことやってたんだー!
今からじゃ考えられない!!
と、大盛り上がり。
私も、ええぇ、そうなんだ!?とテンションが上がりました。
それからしばらくして、ふと冷静になって思いました。
昔の意外なエピソードって、人生経験として他の人に受け入れられて、好感度も上げるんだ、って。
じゃあ、私はどうなるの?
見るからに真面目で、その期待を裏切るようなマル秘話もない。
そんな私は、フツーで、平凡で……誰にも驚かれない、「つまらない人間」なの?
もちろん、自分がこれまで真面目に、品行方正に生きてきたことには、一定の誇りを持ってはいます。
悪いことをした経験がある人よりも、一度も道を踏み外さなかった人の方が偉いに決まってる。
後になってから更正した人の方がずっとまっとうに生きてきた人よりも立派だなんて、そんなはずはない。
人は確かに人生にドラマチックさを求めてしまうものだし、順調に進む物語より、紆余曲折ある物語の方が面白い。
でも、現代は戦国時代じゃない。
下剋上が、なんぼのもんなんだ。…
そんな気持ちはもちろんある。
それは嘘じゃない。だけど。
自分の過去の悪行をこれ見よがしに首から下げて悠々と歩く人を見ると、まるでその人が、私の経験できなかった「非日常」を経験してきた勇者のように見えてしまう……。
これもまた、事実なんです。
それが私は、悔しくて仕方ない。
そんな風に思ってしまう自分が、情けない。
自分のまっとうな人生。
やっていいことと悪いことを昔からちゃんと判断できたこと。
人に迷惑をかけてはいけないと思いながら生きてきた、真面目さと優しさ。
それらが私のすべてなのに、それらを否定してはいけないのに、ちらと頭をかすめる、物足りなさ。
もっと無茶しとけばよかった、なんて。
私自身が私を否定するかのような、そんな気持ち。
無意味だと思いながらも、どうしてもそんな惨めさが胸をふさぐ。
私は彼らのように、勇者にはなれないんだと。
だけど、たとえ今から過去に戻ったとしても、きっと私は親を泣かせるようなことはできないんだと思う。
それが私だから。
真面目だけが取り柄で、内向的で、こんな風に拙い文章でちょっとした愚痴を書き起こすくらいのアピールが精一杯。
突出したところなんて何もなくて、誰の目から見ても勇者じゃない。
だけどそんな人間が、私の人生の主人公。
結局みんな、人より少しでもいい人生を送りたいんだろうな。
だから自慢してマウントを取るし、見栄を張るし、こんなに色々経験してるんだって知らしめる。
「すごいだろ」って。
「こんなにも、自分の人生は濃いんだ」って。
まるで、自分は勇者だと認めてくれとでも言うように。
でも、どれだけ勇者っぽい人が目の前に現れたとしても、その人は私の人生の主人公にはなれない。
私の人生の主人公は、私。
どれだけつまらなくたって、平凡だって、冒険していなくたって、下剋上していなくたって、私が。私が、主人公。
そう思うと、自分を素直に応援できる気がします。
あなただけが、私の世界の中心だと。
他人への羨望って、確かに辛い。
無理をしてでも、自分のプライドを守りたくなる。
だけど、勇者にはなれなくても自分が人生の主人公であることは変わらないんだと思うと、少しは楽になれる気がします。
それに、周りの人のことも、大切にしようと思える😌
のびのびと、自分の人生を生きていきましょう🍀
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