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【認知症×ボカロ】「おばあちゃんの残りの人生はプラスの感情で埋め尽くしてあげたい」。孫が考えたボカロ曲構想

誰か、認知症がテーマのボカロ曲を作ってくれる人は、いませんかーー。

福山暁の星女子高等学校2年生の友滝万美子さんは、おばあさんが認知症になったことをきっかけに、お年寄りが暮らしやすい社会をつくりたい、と、活動を始め、認知症の専門医による校内講演会や、認知症に関するDVDを視聴する企画を実現しました。

もっと社会に広く伝えたいと、今は認知症がテーマのボカロ曲を作るために動いています。「社会問題、人間の問題をテーマにした楽曲や、感情が入っているような作品を作っているボカロPの方々とコラボできないかなと思って、今はDMでご相談を送ってみたりしています」

思いを聞きました。

キャプション:福山暁の星学院高等学校2年生の友滝万美子さん

MIRAIB.は、三菱みらい育成財団の助成を受け、2021年9月から始まった教育と探求社のプロジェクトです。実現したいもの、やりたいことがある全国の高校生たちが、アイデアで終わらせず、本当に実現させるための道のりを支援します。毎週オンラインセッション(任意参加)を開催、企業の第一線で働いてきたサポーターたちの助言を受けながら企画をブラッシュアップし、実践していきます。友滝さんも、MIRAIB.を通じて、アイデアを実践につなげてきました。プロジェクトの詳細は記事の終わりをご覧ください。

自分のことを「恥ずかしがり屋の目立ちたがり」だと話す友滝さん。MIRAIB.への参加が、自ら企画を起こし、実現する第一歩となったそうです。

友滝:学校でMIRAIB.の活動について紹介されて、面白そうだな、と興味を持ちました。自分は初めての人と話すのが苦手だったのですが、体験セッションに参加してみたら、楽しく話せて、そこから毎回、ワクワクしながら参加していました。うまく言葉に表しにくいことも、いっぱい言葉にして出すことができました。「自分はこう思ってたんだと」と納得できる体験でもありました。

何かに挑戦する経験は今までもありましたが、自分で一から企画したのはMIRAIB.が初めてです。

「認知症」をテーマに選んだのは、以前Adobeと朝日新聞が共同で主催した、SDGsに関するWEBページの制作コンテストに応募したのがきっかけです。そのとき題材にした「認知症」を、今回も引き続き取り組むことにしました。

認知症をテーマにしたのは、友滝さんのおばあさんが認知症になったことがきっかけでした。日本舞踊の師範だったおばあさんが、さまざまなことを忘れてゆくのを見ながら、友滝さんは「記憶が失われたとしても、感情が最後まで残っているのなら、おばあちゃんの残りの人生をプラスの感情で埋め尽くしてあげたい」と考えるようになりました。

キャプション:MIRAIB.実践共有会のスライドより

友滝:祖母は、私が小6の時にはすでに認知症の兆候が出ていました。私は5人兄弟の4番目で、皆、祖母に日本舞踊を教わっていたのですが、上の子たちには厳しく、下の子である私と弟には甘かったそうです(笑)。 私も中学2年生まで、日本舞踊の舞台に立っていました。

祖母が認知症になってから、同居していた祖父が足を悪くして入院することになり、家族が交代で祖母と過ごす時間が増えました。認知症の症状のせいで祖母とけんかをすることは特にありません。認知症は老いなのだから、みんなに起こりうることだと思って、変わらず生活を送っています。

母は薬剤師なのですが、勤務先の薬局で、認知症の方も担当しているそうです。最初は支払いもおぼつかなかったのに、だんだん症状が軽くなっていって、自分で支払いができるようになった、という話も聞いたことがあります。認知症でも治療や生活環境の改善などで、症状が軽くなる場合もあると知りました。祖母と過ごす時間や家族との話を通じて、認知症に対するイメージや価値観が少しずつ変わっていきました。

認知症の人たちが暮らしやすい社会を実現したい。友滝さんは、DVDの鑑賞会や専門医の講演会の開催など、認知症について周知する企画を校内で立ち上げていきます。

キャプション:MIRAIB.実践共有会のスライドより

友滝:認知症に関するDVDの視聴会を学校で開きました。認知症の人への接し方について、ある実際の家族を題材にしたものと、2本見ました。

中学1年生が3人、先生が10人くらい来てくれました。生徒より先生の方が多かったです(笑)。 私の活動に興味を持ってくださる先生や、認知症の身内がいらっしゃる先生、自分や家族が認知症になった時のことを考えている先生もいらっしゃいました。

今、学年全員でそのDVDを見る機会を作れないか、先生に相談しているところです。

友滝さんはその後、認知症の専門医を招いた学年全体の講演会も開きました。

友滝:講演後のアンケートでは「私の家族にも似たような人がいる」という回答もあって、「意外と身近にいるんだ」と思いました。部活が同じ友達の家族にも、認知症と思われる状態の方がいる、という話を聞いたので、「受診した方がいいかも」と伝えたりもしました。

講演会の実現に向けて、家族にはしょっちゅう相談していました。専門医の先生に送るメールの文面の相談などもしました。年配のシスターたちを招いたお茶会も企画していたのですが、コロナ禍で流れてしまいました。

MIRAIB.の参加者が、取り組んでいる企画を報告する実践共有会で、友滝さんは、いままでの活動を踏まえ、次は認知症が題材のVOCALOIDの曲をつくりたいというアイデアを発表してくれました。

キャプション:MIRAIB.実践共有会のスライドより

友滝:講演会やDVD視聴会の開催を通じて、「自分ごとにならないと、興味を持ってもらえない」ということにも気がつきました。そこで別のアプローチをとろうとかんがえました。

VOCALOIDを使った楽曲に「ヴィラン」という曲があります。トランスジェンダーの主人公を題材にした歌なのですが、この曲のYoutubeのコメント欄で、多くの人がLGBTについて話しているのを見て、理解が広がっていることを感じました。

友滝:認知症がテーマのボカロ曲を作って皆に聞いてもらうことができたら、もっと理解が広がるのではと思うようになりました。人が歌うより、VOCALOIDという「機械」を使った方が、誰のことにも置き換えられる分、自分ごととして捉えやすいだろうし、カバーもしやすいのでは、とも思っています。

社会問題、人間の問題をテーマにした楽曲や、感情が入っているような作品を作っているボカロPの方々とコラボできないかなと思って、今はDMでご相談を送ってみたりしています。

MIRAIB.のセッションで、サポーターの方々からアドバイスされたのもあって「自分で歌詞を作ってみよう」と思ったんですが、全然思い浮かびません。挨拶文や文章を考えるのは得意なのですが、つい、全部説明してしまいがちなので、歌詞となると、なかなか難しいです。

お年寄りと話すのが好きだという友滝さん。生徒会の副会長就任のあいさつでは「私は、この学校のおばあちゃんのような人になりたい」と語りました。

友滝:学年で生徒会への立候補者が誰もいなくて、推薦投票で選ばれたんです。中学の時に生徒会をやってて大変だったので、高校では立候補しなかったんですが、選ばれたのは光栄だなぁ、と思いました。

会長の所信表明は「改革箱を設置します」「楽しい学校にします」という感じだったので、私は、「楽しいだけじゃなぁ…」と思って「マナーを守る」という方針の内容で話しました。小言っぽい、というか、最近「自分が年老いてきたな」と感じるんです。

同年代よりも、大人と話す方が楽しくなってきました。習い事でやっている乗馬のオーナーの60代の奥さんと話したり。そんな話を学年主任の先生に話したら「それを就任の演説に取り入れてみたら?」と言ってくださって「この学校のおばあちゃんになりたい」と話したんです。

友滝さんは、認知症の方々が暮らしやすい社会の実現に向けて、これからも考え続けます。

キャプション:MIRAIB.実践共有会のスライドより

友滝:高齢化が進むなかで、徘徊する認知症の人たちも増えています。協力して探しに行ったり、事件や失踪を防ぐことができればと思っています。

ネットで認知症のことを調べたり、母と意見交換したりしながら、どうしたら認知症の人やその家族も楽に、前よりも過ごしやすくなるかを考えています。

社会実装で世界を変える。探究活動の部活MIRAIB. とは


探究活動を実践に移し、社会実装する部活動プロジェクト「MIRAIB.(ミライブ)」は、中高生たちが、社会人サポーターのサポートを受けながら、自分たちのアイディアを「社会実装※」していく課外活動です。
<2022年度 実施概要>
事業名:
部活動プロジェクト MIRIAB.(2021年度三菱みらい育成財団助成プログラム)
人数:1校につき生徒有志1チーム以上の参加。1チームの人数は自由(1~4名程度を想定)
参加条件:やりたい企画もしくは、すでに企画案があること
実施方法:2022年度は月1回の交流会(毎月第三水曜16:30-17:30)を開催予定です。活動に関する悩みや進捗確認ができます。
初回のオリエンセッション日時: 6月17日(金) 16:30-17:30(オンライン)費用:無償 ※この事業は三菱みらい育成財団による助成事業です。
お問い合わせ:bi@eduq.jp
 (教育と探求社 ミライブ事務局)



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