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Today’s Story & Sweets-眠り男と恋男by座裏屋蘭丸×極上のアップルパイ
久しぶりにアップルパイを焼いた。
偶然、手頃なりんごが手に入ったのがきっかけなんだけど。
傷まない内にレーズンとシナモンを効かせてブラウンシュガーで炊き上げた。
りんご煮が出来れば、ここはやっぱりアップルパイを一度は作りたい。
短時間で出来るアメリカンスタイルのもいいけど、多少手間は掛かってもホロホロと口の中で解ける様な折り込みパイで作るアップルパイが好きだ。
スーパーに行けば冷凍パイシートなどと言う便利なモノもあるんだけど、バターをたっぷり使った風味豊かな自家製折り込みパイは格段に美味しいと思う。
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そういえば昔よく見たアメリカのドラマには必ず出てきたダイナー。渇いた風と少し埃っぽい空気感。
アップルパイはそんな風景に良く似合う。
表紙からそんなアメリカの空気が漂う座裏屋蘭丸氏の『眠り男と恋男』は表題作を含めた5つの短編集になっている。
彼女のデビューから2冊となる作品だが、異国風の美麗な絵とストーリーの巧みさはこの頃から既に健在だが、デビュー当初は《エロスの女王》なる異名?があったようで、今の作品よりこの頃の方が短編ながらかなりの濃度になっている。
この辺りに関しては、ところどころで胃もたれを感じ無くもないけど、そこはまぁ体調とか好みの問題なんだろう…。
とは言え、収録されている5つの話はどれも短編ながら読み応えがあり、特に表題作は《セクソムニア》と言う奇病を発症したロイスとそのロイスに思いを寄せている仕事仲間のジュードの切ない恋の行方を描いたロードムービーの様な雰囲気のあるストーリーになっている。
「意中の男性のハートを射止めるならアップルパイを焼くといい」と言ったのは、白雪姫の魔女のお婆さんだった。
ジュードはロイスの為にアップルパイは焼かなかった。
結局恋を射止めるのは美味しいアップルパイではなく一途な恋心なのかも知れない。
射止めたい恋の相手がいない時には、極上のアップルパイを食べながら素敵な恋の物語を読むのも悪くない。
(Nekozawa23)
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