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読書記録:Razorblade Tears: 人種差別とホモフォビアを正面から取り上げたミステリー

英語の本を読むと日本語の倍くらい時間がかかるが、それでも読むのは好きだ。結局活字を読むのが好きなのだろう。読みっぱなしももったいないので、アウトプットを兼ねて時々みなさんにも紹介していこうと思う。

題名を訳すと「カミソリの涙」という意味のこの本は、アフリカ系アメリカ人作家、S.A. コズビーによるミステリーである。

[あらすじ] アイク・ランドルフは前科者だが、ここ15年は真面目に自分の会社を経営している。しかしある日、息子のイザイアが彼の白人の夫デレクとともに殺害されたという知らせを受ける。アイクがまだ茫然自失の状態であるとき、デレクの父親バディ・リーがやってきて息子たちを殺したのが誰か突き止めようと持ちかける。アイクは性格も人種も違うバディ・リーを信用しなかったが、やがて息子たちへの愛と殺人者への復讐心、そして息子たちを愛しながらも彼らの関係を受け入れられなかった苦しみが二人を結びつける。やがて彼らは殺人の真相に一歩一歩近づいていく。

舞台はアメリカ南部の田舎町で、南部特有の黒人への差別やホモフォビア(同性愛嫌悪)が物語の中心にある。黒人のアイクは人種では差別される方にいるが、非常に強い同性愛嫌悪を持っており同性愛者に対しては差別する側にいる。そのため生前は息子の結婚を祝福することができなかった。アイクとバディ・リーは復讐を果たしていく過程で、二人の間の人種の壁や、自分たちの中にあるホモフォビアに直面していくことになる。それが暴力的な復讐劇に自然に織り込まれているのは著者の力量だ。

題名の中にあるカミソリは父親たちの心に鋭く刺さる悲しみと共に、復讐の暴力を象徴しているようだ。かなり暴力的な場面が多いので、そういうのが苦手な私は薄目で(怖い描写では目がすぐに閉じれるように😅)ささっと読んだ。それでもアイクとバディ・リーの変容に深く心が揺さぶられた。ミステリーファンにもアメリカの人種やホモフォビアの問題を理解したい人にもおすすめの一冊である。

英語の難易度


全体には読みやすいと感じたが、南部の方言やギャング特有のスラングが散りばめられていて、登場人物の会話を理解するのが難しいところはあった。





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