この書物はエッセイ集ですが、興味深い内容が潜んでいました。
私たちは、書き言葉が本格的に普及する前の、話し言葉を生きる時代の言語感覚を、すっかり忘れています。声によって語られるコミュニケーションの現場では、無意識に、身体的な同調が果たされているようです。
この引用がある長いエッセイの「語ることは耳傾けること」には、W-J・オング『声の文化と文字の文化』からの引用も出てきます。
話し言葉の会話は、一回限りの出来事であり、その時空と身体が同調して、私たちは、無意識に、言語共同体との絆を深めていたのです。
以上、言語学的制約から自由になるために。