
フルート奏者の身体の使い方を解剖学を元に理解しよう!【姿勢の基礎知識】
以前、フルート奏者の肩や腰の痛みは演奏時の立ち姿勢によって起こるという内容を以下の記事で大まかにまとめさせていただきました。
その中で、フルートの演奏姿勢は、座奏でも立奏譜面に対して身体を約45°程度右に開いた状態(左利き用では左向き)に位置し、空中で楽器を構えるため、左右非対称であり非日常的な姿勢を保つことになります。
今回は、以前投稿した内容をより詳しくした内容になります。フルート奏者の身体の使い方を軸にフルートの演奏姿勢を理学療法士の解剖学・運動学的視点からより深堀りし、解説していきます。
※注意
フルートの奏法や練習方法などに関しては述べておりません。演奏するにあたっての身体の使い方、腕の位置など演奏をするための身体の使い方を基盤にしています。
姿勢について知っておきたいこと
まずはじめに、姿勢を考えるにあたって知っておきたいこととして以下の4つのことがあります。
・姿勢の捉え方
・3つの面
・ニュートラルポジション
・支持基底面
これら4つの項目をみて、「知っているよ!」という内容はありますか?知っている内容については読み飛ばしていただいて構いません。
しかし、知らないのであれば理解してもらうと、自分の姿勢が捉えやすくなるかと思います。
姿勢の捉え方とは
姿勢には「体位」と「構え」という捉え方があります。
【体位】・・・重力に対する身体の位置関係のこと
立位:立ち姿勢
座位:座り姿勢
背臥位:仰向けの姿勢
【構え】・・・頭、体幹、上肢、下肢の相対的な位置関係
フルートの姿勢:立って演奏する際は、正面から斜め45°程度身体を開き、フルートを床と水平な位置に構える
楽器演奏に置いて座った姿勢と立った姿勢では、注意するポイントも変化します。立ったときの姿勢と座ったときの姿勢を同じにすればいいといっても考え方は少々異なります。立っているときと座っているときの違いは、脚の使い方と後ほど支持基底面の広さにつながります。と後ほど出てくる支持基底面の広さにつながります。
3つの面とは
姿勢を見るにあたって解剖学・運動学的には、3つの面が存在しています。
「前額面」「矢状面」「水平面」です。
矢状面は、身体を正面、または背面から見たときの面です。

前額面は、右側方・左側方から見たときの面です。

水平面は、頭頂部あるいは足底部から見たときの面になります。

それぞれの面から姿勢を捉えることが自分が今どういう姿勢になっているのかを知ることにつながります。
重心線とは
重心線とは、重心から床へ垂直におろした線のことを呼びます。止まって真っ直ぐに立ったときの重心は、骨盤内で仙骨のやや前方にあります。保持する姿勢や身長により重心の位置は変化します。
重心の位置は男女で異なり、足の裏の位置から成人男性だと身長の約56%、女性だと身長の約55%に位置するといわれています。
一般的なニュートラルポジションとは
まずはじめに、姿勢を捉えるにあたって基本となるニュートラルポジションについて解説していきます。
ニュートラルポジションは、簡単に言うと『バランスが取れた自然な姿勢』です。
・身体内部(心臓や肺など)の働きが最も効率良い状態
・各関節への負担も最小限であり、運動機能も円滑に発揮しやすい状態
になります。人は常に重力にさらされた状態で姿勢を保っていますが、重力によって起こる身体への負担が最小限である状態がニュートラルポジションということになります。ニュートラルポジションの目安となるものとして運動学の世界では、基本的立位姿勢の理想的アライメント(配列)と言われる指標が存在します。これらの指標は、前額面と矢状面の2面にて示されており、赤い点線となる部分が重心線と近似していると言われています。に合わせて以下の図のようになります。(以下の図はinstagram用に作成したスライドです。instagramリンク)


これらの図の指標が1列に並んでいる状態が「ニュートラルポジション」と言われています。しかし、この基準をフルートにすべて当てはめようと思うとなかなか難しいのが現状です。
支持基底面とは
支持基底面は、体重を支えるために必要な床面積及びその範囲のことをいいます。支持基底面内に重心線があることで人間は立っていたり座っていることができます。
立奏での支持基底面は、つま先と踵を結んだ線と足のつま先〜小指側〜踵までを大きく囲った以下の図の緑の範囲が支持基底面となります。

座奏での支持基底面は立奏と異なり、椅子に乗っているお尻の部分まで入ります。以下の青い斜線に当たる部分が座奏での支持基底面です。

これらの支持基底面内に楽器を構えた状態での重心線がとどまるようになっています。
基本姿勢を知った上で…
これまでに解説してきた基本的な姿勢、姿勢の捉え方を知った上で、演奏姿勢を捉えることが重要です。
客観的にでも、自分の演奏を知ることは身体の故障を予防するためにもとても重要になります。私は、楽器奏者の方に正面から、横から、自分の演奏姿勢をスマホなどで撮影して客観的に自分の姿勢をみることをおすすめしています。
演奏している姿勢を客観的に見ることは、演奏会や発表会などの記録以外でほとんどしない人のほうが多いかと思いますが、演奏する動画を演奏している手元だけでなく、全身を写してみるというのをやっていただくと自分が見えていなかった弱点などが発見できるきっかけになるのでおすすめです。
整体サロンHarmoniaでは、演奏姿勢を撮影させていただきコンディショニング後の前後比較も行いますので、ぜひご相談ください。