「開業当時の自分に伝えたいこと」を聞いてみた /香港料理店の経営 マギーさん・浅賀希義さん
開業1年目の方に向けた本インタビュー企画。
インタビューでは個人事業主やフリーランスとして活躍されている先輩方に、開業当時の思い出や苦労、そこからの学びなどを尋ねます。
普段あまり知られることのない開業、そして個人事業成功の秘訣とは何か?を探っていきます。
今回は、横浜市の香港料理店・Maggie’s Kitchen(マギーズキッチン)さん。オーナーのマギーさんは、もともと人に香港料理を振る舞うのが好きで「いつかお店を持ちたい」と思っていたそう。ご主人の浅賀さんはバックオフィス業務を中心にマギーさんを支え、二人三脚でお店を経営しています。現在に至るまでの経緯や、香港料理店を経営する上でのやりがい・苦労についてもうかがいました。
聞き手:工藤京平(freee株式会社)
香港のカフェや食堂で提供される、日常の香港料理
工藤:
Maggie’s Kitchenのお仕事内容を教えていただけますか?
浅賀さん:
主に香港料理を提供しています。妻のマギーは香港出身。彼女はもともと料理が好きで、いつかお店を出したいという希望を持っていました。学校のパーティや子供たち、友人たちにお菓子や料理を振る舞っていたのですが、とても評判だったんです。
私自身も、香港料理が大好きなんですよ。もともと食わず嫌いなところがあって、海外に住んでいても現地の食べ物を試すことはあんまりなかったのですが、マギーと出会って世界が広がりました。
香港の良いところを身をもって知ったので、皆さんにも知っていただきたい。特に、香港料理は日本であまり知られていません。なので、香港料理の良さを広める一助になれば嬉しいです。
私が料理を作れる訳じゃないですし、自分で仕入れするわけじゃないので、バックオフィス業務などでマギーをサポートしたいと思っています。
工藤:
浅賀さんが個人的に好きな香港料理は何ですか?
浅賀さん:
まずは香港焼きそば。卵入りそばを特製香港ソースで炒めたピリ辛焼きそばです。これは普通の中華料理店にはないんです。そしておすすめはチキンライス。シンガポールやマレーシアのチキンライスはジャスミンライスですが、香港の場合は生姜入りのチキンスープで炊いたライス、雞油飯、が多いですね。低温調理したやわらかいチキンに香港特製のネギ生姜ソースをかけて食べます。香港のカフェや小さな食堂では、非常に一般的なメニューです。
もともとはパン屋開業を希望。物件選びで苦戦
工藤:
マギーさんは、どうして日本に来ることになったのですか?
マギーさん:
結婚したから!はははは(笑)
浅賀さん:
いや、違うでしょ(笑)マギーはもともと日本が好きで、私と出会う前に留学の経験もあるんです。
マギーさん:
香港人はみんな、日本が好きなのよ。日本のテレビ番組もかなり放送されてて、ドラマも大好きで。私は高校を卒業して一年くらい働いたんだけど、やっぱり日本語を勉強したいなと思って日本に留学に来たの。
工藤:
お二人が出会われたのはいつ頃なんですか?
浅賀さん:
1992年ですね。私はもともと日本企業でシステム開発の仕事をしていました。新卒で入社した会社に5年勤めた後、縁あってアメリカに渡り、社内のIT管理の仕事をしていました。その会社に勤めていた際、香港に長期出張をしてマギーに出会ったんです。
工藤:
香港で出会われたんですね。ご結婚されて、すぐ日本に戻られたんですか?
浅賀さん:
香港滞在は出張だったので、一旦アメリカに戻りました。その会社には11年勤めたのですが、父親の健康状態の悪化をきっかけに2000年末に日本に戻ってきました。
工藤:
開業のきっかけは、どういうところにあるんですか?
マギーさん:
もともと料理が好きで、本当はずっとパン屋さんをやりたくて。日本創芸学院の「手づくりパン講座」を全課程修了して、「パンマイスター」の資格も持っています。パン教室もできるのよ。
浅賀さん:
それで2016何年頃に、開業のための不動産を探し始めたんです。
パン屋さんあるいは、何らかの料理屋さんをやりたいと思っていました。私はまだ会社勤めをしていますが、子供たちも大きくなって手が離れてきて、マギーに自分の時間ができてきたんです。
工藤:
その時に希望してた物件はどんな感じだったんですか?
浅賀さん:私の地元が横浜市の鶴見なので、まずは鶴見で探しました。でも、なかなか良い物件が見つからなかった。内装、家賃、立地、業態のバランスでちょうど良い物件がなかったんです。それで一度は諦めました。
マギーさん:
でも、昨年の2・3月くらいにまた探し始めて。一緒に居酒屋に飲みに行った時に「これくらいの物件があればいいのになー」って話をしたのがきっかけ。インターネットの不動産サイトに登録して、ちょうどここのお店が出てきたの。
生麦だから、鶴見にも近いなって思って。その日の夜にすぐに見に行って、次の日に連絡して。「あ、これ私の好きなタイプのお店だ」って。主人が来てないのに契約始めた。
工藤:
何のお店をやるか、ちゃんと決めてなかったんですね。意外です。そこでパン屋さんではなく香港料理に決めたのは、どうしてですか?
浅賀さん:
区役所に相談に行ったところ、パン屋さん・お菓子屋さんをやる場合、今の店舗はダメだと言われました。設備の区画が非常に厳しいんです。また、例えばパン屋さんをやる場合、オーブンを入れる場所など色々考えないといけない。
でも、小さなレストランや喫茶店の業態であればこの店舗でも問題なかったんです。
おかげさまでようやく常連の方も増えてきました。お客様同士のつながりでご来店いただくことも多いです。
工藤:
つながりというのは?
浅賀さん:
たまたまご来店くださったお客様がソーシャルメディアで拡散して、そこからまた別のお客さんに来ていただくことがあります。
マギーさん:
あと食べたらまた来てくれるよね。リピーター。おいしいーって友達連れてきてくれたり。
工藤:
お客さんのつながりでどんどん広がっていってるんですね。
開業して良かったことは、こだわりが実現できたこと
工藤:
開業して良かったこと、お二人で飲食店を始めて良かったことをお聞きしたいです。
マギーさん:
日本で飲食店やベーカリーを開くのが夢だったので、その第一歩として開業できたことに大きな達成感を感じています。開店以来多くのお客様に来店いただき、常連のお客様も増えてきました。香港の料理を楽しんでいただけること、地元岸谷・生麦のコミュニティの活性化に貢献できることに大きな喜びを感じています。
浅賀さん:
作るものへのこだわりが実現できたことです。Maggie’s Kitchenには、こだわりが結構あるんですよ。例えば、美味しいコーヒー。ペットボトルや紙パックのコーヒーじゃなく、ちゃんとしたコーヒーを出すことにこだわりを持ってます。お酒も同じです。特にビールは、新鮮で美味しくて、当然衛生面にも配慮したものを提供しています。
浅賀さん:
私にとっても開業は大きなチャレンジでした。実際に開業をしたのはマギーですが、初めての経験でもあったので敷居高く感じていました。開業の手続きを通して私にも達成感があります。
また、マギーはこれまで子育てに時間を割いていましたが、今は自己実現にフォーカスできるようになりました。それをサポートできたことも非常に嬉しいです。
工藤:
マギーさんをサポートできることが、浅賀さんにとっての喜びにつながっているのですね。
freeeを使うことで時間を捻出できた
工藤:
開業後に、悩みやご苦労はありましたか?
マギーさん:
飲食店の経営は初めての経験だったので、慣れるまでは手探り。店舗づくりと運営に多少苦労しましたが、良い経験でした。
浅賀さん:
私の場合は、時間の配分かな。日中は会社員として働いているので、何か作業をする場合は夕方以降か土日です。私は他にも、バンド活動や俳優さんのライブサポートなど、本業以外にも活動をしているので、クラウドでいつでも柔軟に作業できる会計freeeには非常に助けられています。
浅賀さん:
Maggie’s KitchenはAirレジを使っているのですが、連携システムの広告で会計freeeを見つけたんです。その流れで開業freeeも知りました。会計システムを急いで決めないといけなくて、併せて開業届も出す必要がありました。ちょうどfreeeは全て揃っていたんです。
工藤:
税務署のサイトから書類をダウンロードして、直接書こうとは思わなかったんですか?
浅賀さん:
それはないですね。その場合、色々調べないといけないじゃないですか。開業freeeは、色々ガイドしてくれます。順番に必要な項目を入れていけば、自動的に開業届が出来上がっている。これ、使わない手はないですよね。
本当に1時間もかからず、30分くらいで全部できましたから。出てきた届出をそのまま税務署に持って行きました。
時間配分を最適化するためにも、事業計画書でタスク確認を
工藤:
開業当時の自分に「これだけはしておいた方がいいよ」とアドバイスをするとしたら?
浅賀さん:
「もう少し余裕を持って準備をした方が良い」と言いたいですね。余裕を持たず、店舗を契約して2ヶ月も経たないところで開業しました。通常は、もっと準備に時間をかけると思うんですよ。何とかなりましたけど、「もう少し時間があれば…。」と思うことはあります。
現在もですが、ホームページの作り込みや集客など、マーケティングに力を割けませんでした。なので、「時間配分のバランスを考えて準備をした方がいいよ」とアドバイスしたいです。
工藤:
開業時の時間配分は、多くの方が直面する課題かもしれませんね。ご経験を踏まえた上で、どんな工夫をすれば良かったと思いますか?
浅賀さん:
事業計画書を作り込むなど、向かうべきゴールや、進捗を確認する物差しを作っておけば良かったと思います。
飲食店の開業には、想像以上に事前準備が必要です。必然的に「やらなくても開業できること」が後回しになってしまう。私たちの場合は、それが広報やホームページの整備でした。
事業計画書で全体像を描いた上で必要なタスクを全て洗い出し、できるだけ余裕を持って開業することが大事だと思います。
食を通して香港と日本の架け橋になるような事業がしたい
工藤:
今後の展望をお聞きしてもいいですか?
マギーさん:
食文化を通じて香港と日本の架け橋になるように、お店を広げていきたいです。今までプロモーションや広報が後回しになっていたので、これからはソーシャルメディアでの発信やホームページ作りに力を入れていきたいと思っています。
浅賀さん:
メニューや店舗も拡張していきたいと思っています。何十店舗もなんて考えてないですよ。例えばベーカリーだけで別店舗を展開するなどです。ベーカリー商品も、おかげさまで評判が良いので。ただその時も、可能な限り「香港」をからめていきたいです。香港の日常の食文化を発信するアンテナ基地になれればと考えています。
工藤:
香港料理を通じて、日本と香港の架け橋になるなんて本当に素敵ですね。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。
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