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ミミクリデザイン代表・安斎勇樹さんに聞く、「共創が生まれる環境について」【前編】

こんにちは。カンバセーションズ原田です。
インタビューサイト「カンバセーションズ」を、「共創のプラットフォーム」にするためのヒントを探す、突撃インタビュー企画。
前回はメディア運営という観点から、inquire inc.代表のモリジュンヤさんにお話を伺いましたが、
今回は、「共創」というテーマについて、「ワークショップデザイン」を掲げるコンサルティングファーム「ミミクリデザイン」の安斎勇樹さんにお話を伺うべく、東京大学本郷キャンパスを訪ねました。

安斎さんは東京大学 大学院でワークショップの研究をされていた方で、現在は東京大学大学院 情報学環の特任助教であると同時に、ミミクリデザインの代表も務められています。
まずは、ミミクリデザインのWebサイトから引用した安斎さんのプロフィールから。

東京大学大学院 情報学環 特任助教。東京都出身。私立武蔵高校、東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。商品開発、人材育成、地域活性化などの産学連携プロジェクトに多数取り組みながら、多様なメンバーのコラボレーションを促進し、創造性を引き出すワークショップデザインとファシリテーションの方法論について研究している。主な著書に『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)、『協創の場のデザイン-ワークショップで企業と地域が変わる』(藝術学舎)がある。

2013年に出版された安斎さんの共著書『ワークショップデザイン論』は、カンバセーションズとは別の文脈でワークショップに興味を持っていた当時、とても興味深く読ませてもらった記憶があります。


そもそも安斎さんはなぜ、「ワークショップ」という手法に興味を持ったのでしょうか。

安斎:東京大学 工学部在学中に、現在の教育に対する問題意識を持つようになり、親に向けて教育関連の情報を提供するサービスを始めたんです。手応えはあったのですが、徐々に「偏差値」や「受験」というものさしが背景にあることへの窮屈さを感じるようになりました。そして、受験というものさしから解放された中学1年生を対象に、ワークショップの手法を用いた学びの場をつくるという活動を個人的に始めるようになったんです。その中である時、吃音で上手く喋れない子がポロッと発したアイデアがみんなから注目され、それがきっかけで見違えるようによく話すようになったという出来事があったんです。その子を劇的に変えた学びの経験というものを目の当たりにして、ワークショップを深く研究したいと考えるようになりました。

現在、ミミクリデザインでは、研究で得たワークショップの知見を活用し、企業や自治体、教育機関などの支援をしているそうです。
最近は、アカデミックな研究の成果を、社会実装されているような方とお会いする機会が、なんだかとても多いです。

ところで、ミミクリデザインは「ワークショップデザイン」というものを掲げていますが、この言葉にはどんな意味があるのでしょうか。

安斎:「ワークショップデザイン」における"デザイン"には、大きく2つの意味があります。
ひとつは、時間の流れというものを意識した上で、どこでアイスブレイクを挟むのか、会場のレイアウトはどのようにするのかなど、さまざまな観点からワークショップにおける環境やコミュニケーションを戦略的に設計していくこと、つまりワークショップの場のデザインという意味合いです。
そして、もうひとつは、プロダクトやサービスを設計するデザインの本来的なプロセスの上流において、多様な視点を取り入れ、合意形成を行っていくためにワークショップをいかに活用していくか、という考え方です。

ミミクリデザインでは、ワークショップを通して、企業の人材育成や理念の共有、新事業・新商品の開発、地域活性化や観光施策、教育の場をアクティブにするための授業プログラムなどを広く手がけているそうですが、ワークショップという手法を導入することで、どんなメリットが得られるのでしょうか?

安斎:ワークショップというのは、そこに参加する10人なり20人が視点を交錯させ、対話や議論を重ねていくことによって意味生成をする場です。
例えば、企業の組織開発に関する仕事として、とある企業の行動理念のうちひとつだけをアップデートし、ポスターをつくるというワークショップを部署ごとに行ったことがあります。こうした機会を設けることで、行動理念をただ上から押し付けられるのではなく、自分たちにとっての意味を生成することができ、結果として理念が組織に浸透していくという側面があります。
ワークショップというのは、自分を主語にすることで、ひとりの人間として何をしたいのか、何を世に届けたいのかという思いをボトムアップで醸成していくことができます。例えば、商品開発のワークショップにしても、そこで出てくるアイデアというのは、「売れるもの」ではなく、「やりたいもの」という個人個人の観点に基づいているケースが多いんです。

そんなワークショップの場を活性化させるために大切になるのは、どんな問いを投げかけるかということ。
それこそが、ミミクリデザインが掲げる「問い」のデザインです。
そして、問いを立てることの重要性は、カンバセーションズが創刊当初から大切にしてきたテーマでもあります。

安斎:ワークショップでは、投げかけるお題、つまり問いの設定によって、議論のプロセスが大きく変わります。また、仮にワークショップが3時間あったとしたら、その中には主題となる問いはもちろん、種をまく問い、参加者を惹きつける問い、揺さぶるための問いなどさまざまなものがあり、「問いのプロセス」をいかにデザインしていくのかというのは、創発のコラボレーションを促す上で大きな軸になるんです。
また、クライアントとのやり取りの中でも「問い」(課題)の設定というのは非常に重要で、先方が問いてほしいと考えている課題自体の設定が良くないケースも少なくありません。現状に対してどんなパースペクティブを設定すると良い答えが導き出されるのか、という観点から「問い」をリフレーミングしていくということを常に意識しています。

ミミクリデザインがなぜワークショップの手法を活用し、「問い」のデザインを掲げているのかがよくわかってきました。
そして、「問い」を起点に共創のプロセスをデザインし、新しい価値を生み出していくことを目指すカンバセーションズとしても、色々と学べる点がありそうです。


ワークショップでなく、インタビューというコミュニケーションを主体としているカンバセーションズには、果たしてどんな可能性があるのでしょうか。
後編は、ワークショップとインタビュー、あるいは編集との関係性という観点から、引き続き安斎さんにお話を伺っていきますので、お楽しみに。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


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