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生活者見立て通信 編集部こぼれ話~#007 “出る杭になりたくない生活者”の処世術~
QOのプランナーがマーケティングに関わる方にお届けしている「生活者見立て通信」。
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本連載は、生活者見立て通信編集部が、執筆に関わったプランナーへのインタビューを通じてこぼれ話を掘り下げる企画です。どのようにテーマを選び、見立てを練り上げたのか。どんな苦労や学びがあったのか―――レポートでは納めきれなかった裏話をざっくばらんに伺います。
第7回のテーマは「“出る杭になりたくない生活者”の処世術」。今回執筆した磯矢さん、寺西さん、河部さん、松﨑さんの4人がインタビューに応えてくれました。
自己効力感や承認欲求・・・「ゲーミフィケーション」の価値を掘り下げる
――今回のテーマに着目したきっかけを教えてください。
磯矢:当初は「ゲーミフィケーション(ゲームデザイン要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用する取り組み)という現象・価値に着目し、どう深めていけるか」をテーマアップ/追求しようとしたのですが、良い見立てに落としきれなかったんですよね。社内の中間発表時に頂いた評価やご意見もいまいち芳しくなかった。そこから白紙に戻すまではいかずとも、これまでの議論をどう活かしながら方向転換しようかと、頭を悩ませていました。
河部:「ゲーミフィケーションの価値ってなんだろう?」と議論を深める中で、自己効力感を高めることや、褒められることがモチベーションにつながるのではという話に移っていきました。
他方、寺西さんから「褒めてほしいけど、人前では褒められたくない」というインサイトもあるのではと、議論が発展していきました。
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寺西:私が属するチームで「人前で褒められたくない」話が出たり、社内研修で中途社員や新入社員の方と「褒められること」について話したりする機会があったので、個人的にはずっと頭の中にあったテーマでした。SHIBUYA109エンタテイメントのZ世代の承認欲求に関する意識調査で、「大勢の前では褒められたくない」人が61.3%という調査も見つかり、個人的にもとても納得感が高かったんです。
松﨑:私も実体験としてすごく共感したのを覚えています。以前社内表彰式で表彰いただき受賞コメントを述べる機会があったのですが「オンラインで顔を出してみんなの前で話す」ことに、なんとなく気が引けてしまい…。その様子を覚えていた河部さんに「そういえば、あまり嬉しそうな顔していなかったよね」と突っ込まれました(笑)。
磯矢:僕はどちらかというと「人前でもっと褒められて評価されたい」と思うけど、松﨑さんや寺西さんから「そうじゃないんだよ」と指摘されて「そういうもんなのか」と(笑)。
寺西:きっと所属する部署によっても差がありそうですよね。お互いの考えや事例、データなどを共有しながらチームで話す中で、これって別にZ世代に限らない話で、実は世代を問わず同じように感じている人がいるのではないかと話が広がっていきました。
人前は嫌だけど、個人的には褒められたい生活者
磯矢:「出る杭になりたくない」「人前では嫌だけど、個人的には褒めてほしい」。そんなZ世代を中心とした生活者のインサイトをネガティブに捉えるのではなく、自分の承認欲求をうまく様々な方法で満たす「賢者」と解釈して、最終的な見立てとすることにしました。
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――最終発表時の冒頭で参加者に「人前で褒められたいか/褒められたくないか」の二択を問うていたのも、いい掴みになっていましたね。
河部:約20名にフォームで2択を聞いた結果、おおよそ半々(やや「人前で褒められたくない」が優勢)ぐらいに分かれました。全体の傾向として、どちらかというと「人前で褒められたくない」と答えた人の中には若者が多いんだろうなという感覚値を確かめられたのは、仕立て直した見立てを精査する上で重要な要素になったかもしれないです。多分、あの時多数が「人前で褒められたい」と答えられていたら、また違う方向になっていたかもしれない(笑)。
松﨑:質問の結果がはっきり白黒つかないから、余計に良かったのかなと思いますね。
寺西: 一般的なマネジメントセオリーとしては「怒るのは個別で、褒めるのは人前で」と言われますよね。ただ、実生活の中では必ずしもこのセオリーが正しい訳ではなく、当てはまらない場面もある。今回の議論で、様々な視点も取り入れながらいろんなパターンを考えていくことが大事だなと、すごく学びになりました。
――皆さんのお話を聞いて、全く無関係に見えた「ゲーミフィケーション」と実は根っこは繋がっていたけど見えていなかったインサイトを掘り当てた印象を受けて、面白いなと。改めて異なる視点から議論することの大切さを感じました。
リアルな一次情報にアンテナを張ること
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――見立てを作る上で、普段から心がけていることがあれば教えてください。
河部:自分自身が仕事中心の生活をしていて、ともするとインプット不足になりがちなんですよね。まだ手探り状態ですが、普段から意識しないと何のアイディアも出なくなってしまうので、テーマを持ち込む時に困らないよう、日々の業務の中で感じた関心事や面白そうと思ったことはメモに残しています。
松﨑:私はファッション系に興味があるので、基本的にはそちらをよく見てますかね。あとは、ニュースやネタ一つとっても、捉え方次第で考え方も変わると思うので、そういうところを意識しています。
寺西:私も情報のインプットは日々意識していて、最近個人的にアップデートした点で言うと、私が所属しているチームで毎朝30分ミーティングをしていて、ここで結構世間話をするんです。メンバー同士の年齢が結構離れていたり、関心も違ったりするので彼/彼女らと話すのはいい機会になっています。同じニュースを持ち込んで話しても、やっぱり感じ方や気になるポイント、そこから広がる知識が全然違うんですよね。シンプルですけど、人と話して色んな解釈を聞くのはとても大事だなと感じています。
磯矢:寺西さんの話、よくわかります。私の場合は、仕事とは関係ないプライベートで関わる人と話す時にもいい影響を受けているなと感じていて。実は私、最近地域の野球チームのコーチになりまして、コーチ仲間で行う飲み会で話していて、気になることが出てくることがあるんですよね。うまく口では説明できないんですが(笑)。メディアが語る情報も大事なのに変わりないのですが、やっぱり誰かしら見てる情報なので似通うこともある気がして。他方、リアルな一次情報は他の人には得られづらいので、それがそのまま企画の独自性につながっていくと思うんです。見立て通信に限らないですけど、そういったところが大事かなと。
【生活者見立て通信とは】
QOのプランナーが、定期発行しているレポート「生活者見立て通信」では、世の中の流行やトレンドに関する具体的な「事例・事象」を数多く紹介し、背景にあるインサイトについて独自の視点で「見立て」て、日々のマーケティング活動に活かす「ツボ」を提案しています。
📝生活者見立て通信#007「“出る杭になりたくない生活者”の処世術」_抜粋版資料(PDF)
※背景のインサイトや生活者攻略の“ツボ”等も掲載のある完全版をお求めの場合は、下記までお問い合わせください。
お問い合わせフォーム
*担当者:磯矢 宗治(Muneharu Isoya)、寺西 成美(Narumi Teranishi)、河部 哲成(Tetsunari Kawabe)、松﨑 さくら(Sakura Matsuzaki)
QO株式会社 マーケティングプランナー
磯矢 宗治
2001年に中途採用で大手総合広告代理店に入社。
20年以上にわたり、マーケ・ストプラ部門に所属し、様々な業種・業界のクライアントを担当。
延べ50社以上の企業を担当し、商品企画やコミュニケーション戦略の企画立案など、様々な領域において企業のマーケティングを支援。
2024年1月よりQOに入社し、現職。
QO株式会社 マーケティングプランナー
寺西 成美
WEBを中心としたリサーチ業務に携わった後、2017年に現職のQOに入社。
定量調査を主軸に、日用品、アパレル、官公庁など、幅広い業界やクライアントのマーケティングリサーチ業務に従事。
広告効果測定、市場実態の把握、インサイト抽出といった調査テーマに基づき、リサーチプランニングや分析を行う。
さらに、体系化されたマーケティング論理と、QO内で蓄積されてきたリサーチの暗黙知を基に、リサーチ手法の規格化や新たなリサーチソリューションの開発に取り組む。
QO株式会社 アカウントマネージャー
河部 哲成
2010年にマクロミルに新卒で入社。関西支社で広告代理店を中心にリサーチの営業職として従事。
2015年から東京本社に異動して博報堂を専属で担当。チームリーダー/マネージャーを経験。
2019年からHMM(現QO)に初期メンバーとして出向し、2024年にQOへ転籍。
自身で担当したリサーチプロジェクトは2500件を超え、リサーチにおいてほぼ全ての業界/テーマを経験。
QO株式会社 リサーチプランナー
松﨑 さくら
2018年にQO株式会社(旧東京サーベイリサーチ)に入社。
入社後から現在まで広告代理店の担当として、化粧品/食品/飲料/サービス/通信など定量・定性問わず幅広い業界の案件に従事。
2022年頃からは、化粧品/ファッション関連を中心に得意先課題のヒアリング~ネクストアクションのご提案までを一貫して対応。2024年以降はオンライン常駐も開始。
*QOでは、ともに働くメンバーを募集しています。