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「Well-beingを生活者の居場所インサイトから紐解く」プロジェクトの舞台裏

こんにちは!QO株式会社生活者ラボの川口(かわぐち)・木村(きむら)です。生活者ラボは、社内の研究機関として、生活者インサイトを起点とした生活者の課題解決のためのヒントの発見や、アイディア開発のトライアルを行っています。
 
今回、私たちはフリーハンドでWell-beingを紐解く本格リサーチに挑戦し、調査レポート「Well-beingを生活者の居場所インサイトから紐解く」をリリースしました。
本記事ではプロジェクトの背景、企画といった舞台裏をお話しできればと思います。



関心事を持ち寄り、議論を重ねて、テーマが決まった

プロジェクトをスタートした時点では、具体的なテーマは決まっておらず、各自が関心のあるトピックを会議に持ち寄りました。例えばエイジング、コンディショニング、リフレッシュ・ストレス解消、推し活、お金のやりくり、社会貢献など…多種多様な事柄が議題に上がりました。

会議というと、資料を作って議論を戦わすような固い印象を受ける方もいるかもしれません。でも、実際はもっと和やかな雰囲気で、3人でお饅頭を食べながら「長い付き合いの友人たちと会うと、そこでの自分の役割が何となくあって、普段とは違う自分として心地よく過ごせるよね…」など、体験談や気付きを交換しました。

イメージ写真(出典:PhotoACチリーズが撮影した写真)

このような集まりを何度も重ねたことで、日常生活で感じる興味深い兆しについて、率直な意見交換ができたように感じます。


どのように調査に落とし込んでいったのか

各々が持ち寄った関心事は多岐にわたるものの、どれもが「どう生きるか」というテーマから派生したものでした。そこで、Well-being、すなわち「よりよく生きること」について探究することとしました。

次に考えたのは、探究の具体的な進め方です。例えば、「価値観」などカテゴリを限定してワークショップを行う方法があります。この方法ならばWell-beingの構成要素は理解できるかもしれませんが、既視感があり、ワクワク感に欠けます。

一方で、「生き方」をテーマに、自由回答中心のアンケートでリアルな意識や実態を探るのはどうだろうか?これなら、3人で話していたこととは別の方向性の、あるいは予想外の興味深い発見に出会えるかもしれないと考えました。

せっかくなら幸せな生活者に話を聞くために、「そもそも幸せとはどんな状態か」を議論しました。それぞれがどんな時が幸せか考えたところ、メンバーの一人は「絵の練習をしている時が幸せに感じる。理由は、単純にお絵描きする楽しさだけでなく、漫画家になりたいという夢に向かって一歩ずつ前進している感覚があるからではないか」と話していました。
 
ここから、「なりたい自分になるために努力している状態が幸せ」という仮説が生まれました。
 
この仮説から派生して、「必ずしも努力することは幸せの必要条件なのか?」という視点も出てきました。実際に、各メンバーは、家族や親しい友人と過ごす時間の幸せも日々感じていました。このことから、「大切な人との絆」も幸せの重要な要素だと考えました。
 
このように幸せという状態を考察し、生活者の皆さまに「なりたい自分はどんな自分?」「あなたにとって欠かせないつながりとは?」という2つの質問を聞いてみることにしました。


生活者の自由回答から見えたものと感じたこと

生活者174名に、「なりたい自分はどんな自分か?」を伺ったアンケートでは、自分の理想とする状態が一人ひとり違うのはもちろん、なりたい自分の捉え方にも違いがあったことに、私たちは注目しました。回答自分が何かになりたい・何かをしたいというだけでなく、誰かと一緒に何かをしている自分や、コミュニティの中で役割を全うする自分といった、「人とのつながり」を前提とした回答を多数発見できたのです。

さらに追加で実施した「自分にとって欠かせない繋がりとは何か?」を伺ったアンケートを合わせた合計419名の回答結果を読み解くと、「実はなりたい自分があることと、また好きな人と繋がることの両方の要素が、Well-beingには必要なのではないか」と新たな視点を提示されたような感覚がありました。

調査結果をどう解釈するかの議論を重ねる中で、「自分の理想を実現する場や機会」を居場所と呼べるのではないかという発見がありました。馴染みのある言葉ですが、「ステージとしての居場所」や「心のよりどころとしての居場所」など、テーマを言い表す表現に出会えた感覚がありました。

この議論は特に盛り上がったため、グラフィックレコーディング(以下グラレコ)でビジュアル化してみました。

グラフィックレコーディング


このグラレコにも描かれていますが、「居場所を獲得するのは難しいけど、なぜ居場所が欲しいのだろう」というのは特に気になる疑問の一つでした。そこで、幸せになるために困難があっても居場所を獲得してきた人たちにインタビューをしてみると、生活者がこうありたいという状況になるために居場所を作っていること、を発見できました。

そして、居場所の獲得が難しいことだからこそ、彼らの居場所獲得ストーリーには、Well-beingな状態になるヒントがあると考え、分析を続けました。

探究を通じて、勇気づけられるような発見もありました。生活者の自由回答と自分たちの経験を照らし合わせながら、居場所の使い方を考えてみると、人々は複数の居場所を持ち、それぞれの場所で異なる顔を使い分けているということに気づきました。

素の自分でいられることは幸せですが、なかなか素を出すのが難しいこともあります。顔を使い分けて理想に近づくことで幸せになれるということは、素を出せないことに悩む人に、ぜひ届いてほしいメッセージです。

居場所フォーメーションと居場所インサイト


プロジェクトのこれから

ここまでの探究を通じて居場所に着目することで、生活者のそれぞれが思うWell-beingな状態と、それに紐づくニーズを発見できました。今後はこの発見を以下のように展開していくことも考えています。

①商品やサービスのコンセプト開発
例えば、マッチングアプリで出会い結婚した夫婦向けのクッキングスタジオを考えてみましょう。新しいメニューを学ぶ共通体験を通じて思い出を作り、その後の家庭での料理の動機づけにもなります。このように、クライアント様と共に、「居場所」という視点からコンセプト開発に取り組んでみたいと考えています。

②居場所のインサイトについてのアンケート
このプロジェクトを通じて、居場所が生活者に感情や行動変容をもたらし、Well-beingな状態にする7つのインサイトを発見しました。この7つのインサイトに対する生活者の共感度を測るため、アンケート調査を計画しています。結果がどのように表れるか、大変楽しみです。年齢、性別、家族構成といった属性ごとに特徴が現れれば、新たな洞察を得られる可能性があります。

最後になりますが、今回のプロジェクトでは合計419名への自由回答調査と5名へのインタビューを実施しました。自由回答やインタビュー内容について徹底的に議論を重ねた結果、興味深い発見にたどり着けたと考えています。

振り返ると、プロジェクト開始時にはテーマすら決まっていない状態でした。手探りでの探究は「この方向性で合っているのか?」と不安になることも多々ありましたが、議論を深めていく過程は好奇心にあふれた楽しいものでした。これからも、この姿勢を大切にしながら、生活者インサイトの探索を続けていきたいと思います。

また、グラレコの活用範囲をさらに広げていきたいとも考えています。今回は、議論の盛り上がりを視覚化し、また生活者が居場所ごとに顔を使い分ける様子を分かりやすく表現するために活用しました。文字よりも直感的に伝えられるというグラレコの強みを、今後どのような場面で活かせるか。
この点について、さらなる試行錯誤を重ねていきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。ぜひ「Well-beingを生活者の居場所インサイトから紐解く」プロジェクトの今後の展開にご期待ください!



*執筆者:川口 聡子(Satoko Kawaguchi)、木村 なみ(Nami Kimura)


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