プロダクトやサービスをつくる人におすすめの詩たち
この記事は実用的でとっても役に立つ記事が満載になると思われるフルリモートデザインチーム Goodpatch Anywhere Advent Calendar 2021 Advent Calendar 2021 の4日目の記事です。
アドベントカレンダーの頭から今日まではGoodpatch Anywhereのマネージャーチームが担当していますが、ここまでデザインの話が全然出てきていません、なんということでしょう。
トップの画像はコロナでここ数年行けていなかった村上市に帰省したときのものです。城下町なので商いを生業にしている家が多く、伝統ある商家はすべからく字が上手で、飾ってある書や、自分で百人一首の札を書いていたなどのエピソードを聞くに、省みる自分の文字の汚さには辟易するばかりです。僕は一生キーボードとともに生きていきます。
書といえば阿吽、面白いですよね。
そんなことで言葉について考えていきたいと思います。
僕らはクリエイティブ系とくくられることの多い業界であるが故に「言葉を大切にしています」という人は結構多いのですが、そういう人ほど言葉の強さがマイナスに作用してしまっている事が多いようにも感じています。言葉を大切にすることは何も、シリアスでなければいけないということではなく、もっと意識的にポジティブな強さを利用するべきだと考えています。毒にも薬にもなる言葉というものを「必要なときに必要な形で運用する」これが、言葉を扱う者の目指すべき姿ではないかと思うんでうよね。
これは僕らがストレスフルで先の見えない、うまくいくことのほうが少ない現実世界で生きていくためにはとても重要なことです。ビジネスでも野球でも打率3割とか驚異的じゃないですか。失敗して当たり前なんです。なので、うまくいかないときにも自分で絶望に飛び込むような事をせずに、お茶でも飲んで力を蓄え、次に向かう、これは「いざというときの対処法」ではなく、「日常動作として体に染み込ませるべき」だと考えています。
自分のメンタルコントロールをするために、気分を上げるための音楽をプレイリストとしてまとめておく人はまぁまぁ多いかと思います。作ってない人はぜひやるべきです。朝なんて仕事したくなくて憂鬱なのが当たり前なので、無理やりにでもテンションを上げるルーティーンを持っておくのが、社会人という名のアスリートとしてすべきことなんでしょう(仕事が楽しいのが一番だけどね)。憂鬱な朝がくるのをわかっていて漫然と憂鬱な気分に突入していくことこそ怠惰というべきものなのでしょう。
なんどでも言いますが、コラボレーションが必須のモダンな仕事では、自分でメンタルコントロールをする力があるに越したことはないんです。みんな優しいので、そばにいる誰かが「よしよし」してくれることはあると思います。でもそれは誰かにコストを押し付けているだけで、何十回も何百回も無邪気に依存していれば、いつかその人はいなくなってしまうかもしれません。チームを前進させなきゃいけないのに、自分の体調管理ができていないことがその足かせになってはいけないのです(もちろん、頼るべきところは頼りましょう。折れる前に助けを求めるのも必要な能力です)。
話がだいぶ脱線しましたが、何が言いたいのかというと、言葉のプレイリストを作っておくのもおすすめですよということで、やっと本題です。本当はただ自分の好きな詩を紹介したいだけです。興味のない人はここまで離脱していただいて大丈夫です。
それではまずこちらをどうぞ。
中二病に好かれる詩人ランキングトップ3には絶対入るであろう中原中也ですが、中二病とは、自分の心を揺さぶるものをネガティブな方向にだけ恣意的に適用する幼稚なマインドを言うのだと思うのです。
力強い言葉と気持ちの良いリズムが、なにかにつけて、逃げる理由を探し、誰かのせいにする愚かさをストレートに殴ってくれます。殴ったあとに気持ちの良いアンサーを提示し、最後には明日からどう生きるべきなのかを爽やかに示してくれます。
好きな言葉や座右の銘はと言われたら僕は「自恃」と答えます。自恃とは「自分自身をたのみとすること」を指します。チームの中で人と助け合うことが必須の僕らの仕事において、逆説的に一番大事だと思う言葉です。「信頼」が「甘え」と区別しにくい状況において、他者をリスペクトするために必要な気の持ちようが「自恃」だと言えるのではないでしょうか。
次も力強くストレートで殴ってくれる詩です。
こちらのほうがよりわかりやすい表現で僕らを殴ってくれています。色んな角度から、何度も何度も同じことを言われないとやっぱり人には伝わらないんですよね。
ここでもやはり、自分でその状況に追い込んでおいて、他のなにかのせいにして、不幸だと嘆くマインドを完全に否定してくれます。水やりしなければ枯れてしまうのは必然なのに、それを人のせいにする??という当たり前のことを、忘れてしまうのです。心という目に見えないものに対して僕らはなんて鈍感なのでしょうか。心にだって栄養は必要だし、強くなるためには筋トレが必要なのです。
特に最後の「感受性」のくだりです。デザインやアートや美を解する者の自負として「感受性」を理由に身勝手な言動をとってしまうことはないでしょうか。そうではなく、ちゃんと守ってコントロールすべきものだとピシャリと言ってくれる気持ちよさがあります。「感受性」に対する誤認は非常に色んな所で目にしますが、自分の感受性が高いと思いこんで他者を見下すような幼稚なことはしないようにしましょうね。
お次は方向性を変えて、
これはMITの石井先生がよく引用してらっしゃる詩です。ちなみに石井先生の講演を聴いていると高村光太郎と中原中也と宮沢賢治がよく登場しますみんなだいすき。
石井先生の言葉を借りれば「造山力」ということになると思いますが、自分の目標を自分で作り、その山を登っていくマインド、本質的にはこれのみが「成長」と言えるのだと思います。僕らもプロジェクトにおいて、お題目として掲げる目標とは別に、チームや個人で「裏目標」を作ろうという話を良くしています。「このプロジェクトを通して自分はこれをできるようになりたい」という、ある種利己的な話にも聞こえますが、要はこれが「ただの仕事」を「主体的に本気で取り組む仕事」にするために必須のことだと感じています。周りの優秀な人に聞くと、普段の仕事に「裏目標」的なものを設定している人は意外と多く「日常の仕事で成長する」ことを心がけている結果なのだと思います。成長できない人ほど「勉強する時間が取れなくて…」などと言ってしまうのですが、成長のための努力の方向がずれているのです。
と言うような感じで、自分の仕事を見定め、主体的に取り組んでたどり着いた地点で、ふと後ろを振り返ったときにそこに道ができていることに気がつく。それくらいの世界を目指していきたいものです。
また、ベンチャーやスタートアップと言われる世界や、UIやUXのデザインの世界において、「整った環境」や「完璧な組織」「キャリアパスというレール」があるというのは完全な幻想です。「そんなものはない」という現実を認めて、自分が道を作るのだという気持ちになれる人の方が健全に成長できると思います。期待するから、裏切られ、絶望する。ここでも必要なのはやはり「自恃」です。存在しないものを生み出すのがベンチャーの仕事です。道、造りました?
最後は漢詩から一つ。
漢詩って情報の圧縮率がすごいと思いません?教科書で読んだと思いますが、杜甫の春望の冒頭「國破山河在(国破れて山河あり)」だけで長編映画が作れるくらいの情報量が詰まっていると考えるとゾクッとしません?
はい、話がそれました。次です。
意味としては、「年月が経てばお前も成長だろうけど、幸福は全然来ないし、災いはたくさん来る。早起きしてよく遅くまで励め。お前に才能があることを望んでいるが、そうじゃなかったとしても、しょうがないから。」という感じです。
当時29歳の陶淵明が子供が生まれたときに詠んだとのことで。20代でこの境地にたどり着くってどんな生き方よと驚嘆するばかりです。
「幸福をつかめるのは準備している人だけ、もちろん来ないかもしれないし、酷いことのほうが多いんだけどね。」というスタンスの持ちかたは現実世界に向き合う上で、とても誠実に感じられます。Hard Thingsという言葉が軽くなっている昨今ですが、襟を正されますね。人事をつくして天命を待ちましょう。あとに残るのは「後悔ないくらいまで頑張ったかどうか」です。
ということで、個人的に好きな詩を4篇ご紹介しました。基本的には辛いときにグーで殴ってシャキッとさせてくれるような詩ばかりですが、自分にとってはそういうのが相性が良いということなのでしょう。Mが過ぎる。
ここで取り上げた詩がそもそもごく一部だったりしますので、ぜひ原典にあたって、自分のお気に入りの詩や、辛いときに読みたい詩を見つけてください。詩集を一冊読んで、気にいった詩が1篇でも見つかれば超ラッキーと思ってくださいね。どうも頭からお尻まで名文じゃなきゃ気に入らない人が多すぎるんですが、それは期待のしすぎです。
ということでAnywhere4日目のアドベントカレンダーでした。
デザインの話ほとんどしない人たちがただ自己開示をしながら頑張っているAnywhereにご興味をお持ちの方はぜひお声がけくださいませ。