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ブランディングの基本、ナチュラルプレゼンとは何か
Voicy No.0125 2022年3月2日放送
最も強力なブランディングの武器は
今日はVoicyの『コテツのブランディングと商売の話』に頂いたコメントをきっかけにお話しします。
『コテツさん、こんばんは。
いつも拝聴しております。
飲食店経営をしております。
質問させて下さい。
コテツさんが「おれの言葉で言うとナチュラルプレゼン」と言うことを仰っていましたが、これは、違和感のない自然体な自己紹介の中で
はじめましての方に自身のビジネスに興味をもってもらう為につくるもの。という認識であっていますか?
また、作り方のこつや、重要な枠組み、質問などあれば
ご教授願いたいです。よろしくお願いします。』
ハラさんから質問いただきました。ありがとうございます。
まずナチュラルプレゼンの一歩手前に、一番強力なブランディング、ファン作りの方法とは何かという、とても重要な話をします。
もちろんスマホ全盛ですからSNSは活用したほうがいいし、TwitterもインスタもTikTokもYouTubeも活用したほうがいい。けれども、いちばん強力なファンづくりの方法は、ブランドオーナーが直接語りかけることです。
これは間違いない。
日本やアメリカ、ヨーロッパの先進国で行われている選挙では、どうやって投票してもらうかというと、一番有効なのは本人が出てきてしゃべることです。
「ほんとうにいつも応援ありがとうございます。自分を何とか国政へお願いします」と言って握手して、肩の辺りをぽんぽんとたたき、両手でぐっと握るのが一番有効なのです。
ブランドオーナーも同じ。
本人が腹の底から「オレはこう思っているんだ。こういうことのために、このブランドとビジネスをやっている」と対面で言うこと以上に、威力のある武器はありません。
ネットも音声も動画も文字もいい。
けれども、対面で伝える熱量の差は比べものにならないです。
ブランドオーナーがブランディングをするときに、インスタやTikTokの活用を考えるのもいい。YouTubeも使ってください。Twitterを頑張るものいい。
けれども、一番の武器である自分が、人と接したときに発する言葉とかその温度感、動機、興奮、思いとかをきっちり伝えることをないがしろにしてSNSを頑張っても、しょうがない。
ブランドになって続いているものは、対面によるブランドオーナーの言葉をめちゃくちゃ磨いています。
フランスのハイブランドであるルイ・ヴィトン、ディオール、エルメスは、大体150年~180年の歴史があります。ブランドを続けるために何をしているかというと、ブランドトップが重要なファンの方、熱いお客様と対面してはしゃべっているのです。
数千億売っているブランドが、マジでそんなことをやって意味あるのといわれますが、意味があります。
もちろんコロナがあるから、そういう場を控えたり工夫したりはしていますよ。
そういうことではなくて、コロナの状況に合わせた範囲内で、ブランドオーナーが直接対面で、イベントを行って「私の考えはこうで、皆さまにこのブランドを愛していただいたその先には、こういうものを提供していきたいと本当に思っているんです」と伝えています。これが一番有効なわけ。
ハイブランドは、たとえ売上が数千億円になっても、各国を回りながら重要な顧客やファンの方と直接対面でお話をしています。
藤田ニコルさんが息長く活動できるワケ
これは自分が関わっているわけではありませんが、藤田ニコルさんは、ものすごくイベントをやっています。もちろんコロナの状況に合わせて露出は減っていたけど、写真集を出したりプロデュースしている洋服を出すたびに、草の根運動として対面イベントをしているのです。
だから、にこるんは息長く、強いファンに支えられているのでしょう。
以前コテツがスイーツブランドをやっていたときに、そのフラッグシップ店のカフェで番組のワンコーナーをそこからしばらくやるという企画があり、何カ月間か、にこるんとちょこちょこ顔を合わせていました。
そのときは、彼女はまだ高校生でした。コテツの個人的な見方では、よくいる10代タレントの一人で、息の長いタレントさんになるとは思っていなかったのです。
でも、それから7、8年たってみると、その当時に来ていた女子高生タレントは、にこるん以外の方はテレビの第一線に残っていない気がします。
ナチュラルプレゼン不要の人
前提としてここまで話しましたが、ナチュラルプレゼンとは、ブランドオーナーの口から語られるブランドの紹介のこと。日本人は自己紹介をするときに業種職種の話をしてしまうわけ。
もちろん自分の情報発信やメディアとかで、情報提供を圧倒的な量としてやっているならあまり必要ありません。
でも、そういう名刺代わりの説明が要らない人も実はやっています。
例えば鳥山明さんなら、ほかの方が「この人はドラゴンボールとアラレちゃんの鳥山明さん」と言えばわかる。
なので、多くの人が周知しているヒット作があるとか、現時点でフォロワーがめちゃくちゃいる状態で何らかの情報発信をしている人は、あまりナチュラルプレゼンは頑張っていません。実際は「ああ、どうも」ぐらいの感じです。でも普通の方は、やらないと伝わらないですよね。
ナチュラルプレゼン、どうやってつくるか?
改めて、ナチュラルプレゼンとは何でしょうか。
初めての方とお会いしたときは、相手が全く邪魔しないで説明できる時間をもらえているわけ。「初めまして、コテツです」の後に1分~3分ぐらいなら自己紹介は聞いてくれます。そのときに話す内容がナチュラルプレゼンです。
そこで日本人は業種職種を話しがちです。そうではなくて、ブランドのあり方やポジション、ほかと何が違うのか、どういう価値を提供しているかというのをお話しすべきでしょう。
「私は高校の国語の教師で、高校生に授業をやっています」
これでは業種職種の説明になってしまいます。
何を大事していて、どんな価値を提供しているかを言うことが、ブランドやファンづくりの第一歩です。
ブランドのメッセージ、あり方、スタイル、センス、哲学に対する共感なので、自分は何々を売っていて、どういうふうにファンの方と関わって、どういう価値を提供したいと思っているのを伝えるのが、ブランドの紹介であり自己紹介なのです。
ビジネスやブランドをやっている方が、会う方ごとにナチュラルプレゼン、セールスしないでどうするのと思うわけ。
最後に「僕の商品はいくらいくらで、今鞄に入っているので、あなた要りますか」というクロージングをかけろとは言いません。あまたある、似たような商品・サービスとどう違うか、普通の方には見分けがつかないからプレゼンするのです。
「美容師をやっています」「パーソナルトレーナーをやっています」ぐらいでは見分けがつかなくないですか。スタイルや哲学やメッセージ、何を重要視しているか。そのブランドの特性は何かを言ってくれないとね。
なので、ハラさんが質問してくださったように、それをまとめてしゃべる。500~1500文字に書きまとめて練習する。そうしてナチュラルプレゼンをやりながら、自分に合った方が反応してくれるようにします。
ブランドの価値を説明しよう。
この自己紹介(ナチュラルプレゼン)にも非常に誤解があります。
全員が聞いてほおっと思うようなものをやろうとすると、最大公約数的なことしか話せなくなるんです。
ブランドというのは好かれて愛着をもってえこひいきされること。
好きだと思ってくれる人と、嫌いだと思っている人がいて全然いい。
それぐらい自分が大事にしていることや哲学、メッセージ性を、きちっと乗せることがいいと思っています。
日本人は、こだわって素材とか製法や作り方の裏側の理屈を言おうとします。けれども、そこは重要ではありません。重要なのは、その商売やブランドをやってファンの方と関わっていく中で、何が価値として実現されていくのかです。
例を挙げたいけれど、自分が関わっている仕事と結構ぶつかるのですごく迷います。
例えば、今都内ではベンチャー企業がやっている電動キックボードがはやり始めています。それを人に説明するときに、「うちは電動キックボードをレンタルする事業をしています」では業務説明です。
ナチュラルプレゼンでブランドとしての価値を説明するとしたら、こうなります。
「東京の渋滞問題。満員電車による通勤地獄。駅から遠いところの価値が低いこと。駅近ばかり住宅も店舗も高い価値だといわれている状況に対する解決策として、ラスト1マイル、ワンマイルモビリティーの未来の標準インフラとして僕はキックボードを広めたい。これによって人々が使える駅からの範囲が広がって、さまざまなビジネスや地域が活性化されて、それにみんな乗ってくれることで渋滞や満員電車が緩和されるのではないか。移動のストレスがそれによってなくなって、満員電車が緩和される新しいインフラをつくり上げようと思っています」。
今の説明は自分が適当にこじつけたので、世の中でそういうサービスを提供している会社が、こう言うかはわかりません。あくまでも一例ね。
自分はお金をもらって商品とサービスとして何を提供しているかではなくて、そもそも何を大事にしていて、ファンの方と顧客が、それを手に入れてくれて自分と関わってくれることで、どういう世の中にしていきたいと思っているか。
あるいは、ファンの心にどういう火を点したいのかという部分が、ブランドのナチュラルプレゼンになります。
コテツのブランド論の中心はポジショニングです。できるだけ競争しないで、スーパーニッチでも、コンセントとプラグ、カギと鍵穴が合わせられればいい。
自分の独自ポジション、ほかとできるだけぶつからないポジションの中で、それがいいねと思ってくれる方とかみ合えばいいので、個性とか差別化とか色の違いを明確に出だしで伝えられることが大事です。
ルイ・ヴィトンの「あり方」
自分は数年前に大学の社会人講座、社会人MBAみたいなものに通っていたときがあり、そこでブランド論の講座がありました。
そこに当時のルイ・ヴィトン・ジャパンの社長でフランス人の方がお越しになり、自社の説明を始めました。その人の言っている自己ブランド説明がすごかった。すごいというのは今だからわかることで、当時は何を言ってるんだと思いましたが。
ブランド戦略の説明後、「今ルイ・ヴィトンは、どういうものをマーケットに刺さるように打ち出していますか」といった質問が出ました。
自分はその社長の答えが聞きたかったので、メモを取るぞ、すごいことを言うかなと思ったら、その方は、「ルイ・ヴィトンは質の高い鞄を今までもつくり続けていて、これからもつくり続けていくことを私は今伝えたい」と言ったのです。
オレはその当時、もっと何かとがっていることがないのかと、ずっこけてしまいます。でも、これが今思えばブランドとして一番大事にしている「あり方」だったのでしょう。
録音の限界が来たので、途中ですがここで終わります。
久々野智小哲津でした。
本文は
コテツがVoicyの「ブランディングと商売の話」で語った内容を
文章化し加筆したものです。
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上のVoicy音声は下のリンクからどうぞ!
https://voicy.jp/channel/2089/284924