【 noteで学ぶ 世界の名画とアート思考 】 美しすぎる"死"の革命 ─ ジョン・エヴェレット・ミレー『オフィーリア』が現代アートに与えた衝撃
= こんな人におすすめの記事です =
「 “ アート ”や“ アート思考 ” ってどうやら大事そうなんだけど、アートの見方もそもそも何なのかも、全然わからない。…でも、我が子に“ アート教育 ”はさせたい! 」
これ、僕の欲求です(苦笑)。
でも、あるある、ですよね?
ですが、なかなかどこを調べたらいいか分からないし、これらの情報にたどり着けないことがしばしば。
…ということで、このnoteでは、『 世界の名画とアート思考 』を週に1つずつお届けしております。皆様の一助になれたら嬉しいです!
= そもそもアート思考って? =
色々と言われてはいますが、
① 過去の状況を理解し、
② その中にある問題点や疑問を発見し、
③ これまでに無い新しい価値観や方法を提案する
思考法と僕は理解しています。ここを意識しての名画を観察すると、“ あ!この名画はこういう観点でアート思考を取り入れているんだ! ”と理解しやすくなるので、おススメでございます。
= 今週の名画:オフィーリア =
なぜ今、ミレーの『オフィーリア』を知るべきなのか?
ジョン・エヴェレット・ミレーの《オフィーリア》(1851-1852年)は、19世紀のイギリス絵画の中でも、異彩を放つ存在です。緻密に描かれた草花、光と水の透明感、浮かぶ女性の静けさ。その美しさに圧倒される人も多いでしょう。しかし、単なる「美しい絵画」では終わりません。
実はこの作品、当時の美術界を根底から揺るがす"革命"でした。そして現代のアートシーンにも強い影響を与え続けているのです。
では、『オフィーリア』がなぜ革新的だったのか? 本記事では、作品の「革新性」にフォーカスしながら、現代アートとのつながりを紐解いていきます。
アートのルールを壊したプレラファエライト派
19世紀イギリスの美術界では、アカデミックな絵画のスタイルが主流でした。
しかし、若きミレーはそのルールをぶち壊しました。
彼が立ち上げた「プレラファエライト同盟」は、当時の美術教育で重視されていたラファエロ風の様式を拒絶し、**「細部まで緻密に描写すること」「自然を忠実に再現すること」**を掲げました。
これは、ルネサンス前の初期フランドル派やボッティチェリに通じるスタイルであり、美術アカデミーの基準とは正反対の考え方でした。
つまり、《オフィーリア》は、美術史の「型」を破り、新しい表現の可能性を示した作品だったのです。
「死」を圧倒的なリアリズムで描いた革新性
ミレーが《オフィーリア》で実現した最大の革新点、それは**「死の美の再解釈」**です。
19世紀のアートでは、女性は主に**「生の象徴」**として描かれました。ロマン派の作品でも、美しく生きる女性の姿が主流でした。
しかし、ミレーは「美の象徴」である女性を、静かに水の中で死にゆく存在として描いたのです。
しかも、その死は劇的でも悲壮でもありません。オフィーリアは、まるで眠るように水に浮かび、周囲には色とりどりの花々が咲き誇ります。
通常、死をテーマにした絵画は「暗い」「重い」イメージになりがちですが、ミレーは違いました。
極端なリアリズムと色彩の美しさによって、"死と生の狭間の美しさ"を描き出したのです。
この「死を美と融合させる手法」は、現代アートにも影響を与えています。たとえば、ダミアン・ハーストの「The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living(生者の心には不可能な死の物理的存在)」など、「死」を美学のテーマに昇華する表現は、ミレーから続くアートの系譜とも言えるでしょう。
同時代の作品と比べて「異質」だった理由
1850年代は、リアリズムの台頭期でした。同時代の代表作として、
ギュスターヴ・クールベの**《オルナンの埋葬》**(1849-1850年)
ジャン=フランソワ・ミレーの**《種まく人》**(1850年)
があります。
しかし、これらの作品は**「庶民のリアリズム」**を描くものであり、社会的なメッセージを持っていました。一方、ミレーの《オフィーリア》は、文学を主題にしながら圧倒的なリアリズムを追求するという、まったく異なる方向性を持っていたのです。
リアリズムの中でも、単なる「風俗画」に留まらず、「幻想的な要素」を取り入れたことが、ミレーの最大の革新性でした。
現代のクリエイターが学ぶべきポイント
《オフィーリア》は、160年以上の時を超えて、今も愛され続けています。
では、現代のアーティストやクリエイターは、この作品から何を学べるのか?
① "美の文脈を壊す"ことの重要性
ミレーは「女性の美=生の象徴」という常識を覆し、死をも美の一部にしました。これは、固定観念を壊すことで新しい価値を生むという好例です。すなわち、「美とは何か?」を改めて考え、自分なりの解釈を作ることが重要だといえます。
② 技術×コンセプトの融合
プレラファエライト派のこだわりは、技術的に圧倒的なリアリズムを追求したこと。ミレーはその上で「シェイクスピア×超精密描写」のコンセプトを確立しました。すなわち、高度な技術と明確なテーマを持つことで、作品の魅力は何倍にもなる、といえると思います。
③ 独自の視点を持つ
同時代のアートと比較すると、《オフィーリア》は異端の作品でした。しかし、その異端性こそが後世まで語り継がれる要因になっています。すなわち、トレンドに流されず、自分の視点を大事にすることが、長く愛される作品を生む、といえます。
作品を観られる場所:ロンドン・テート・ブリテン《オフィーリア》は現在、ロンドンの**「テート・ブリテン(Tate Britain)」**に所蔵されています。
実物を見ると、画集や画像では伝わらない、ミレーの筆の細かさ、色彩の深みが感じられるでしょう。
テート・ブリテン(Tate Britain)
住所: Millbank, London SW1P 4RG, UK
最寄駅: Pimlico駅(ヴィクトリア線)徒歩約5分
電話番号: +44 20 7887 8888
結論:『オフィーリア』は、"美の定義を変えた革命"だった
現代でも、多くの人がこの作品を見て「美しい」と感じます。
しかし、それは単に見た目が美しいからではなく、「美の概念そのものを問い直した」作品だからではないでしょうか。
ジョン・エヴェレット・ミレーは、私たちにこう問いかけています。
——「美とは何か?」
と。
* 合わせて読みたい関連ブログ *
本物のオフィーリアをご覧になられていて、臨場感が伝わるブログ、すごく参考になりました!
* 引用
イノベーション創出を実現する「アート思考」の技術
「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考
アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法
= あとがき =
noteをご覧いただきありがとうございます。
会社員の傍ら、上海で塗り絵本作家になりました、KENTA AOKIと申します。日本・中国を拠点に、個展をしたり、アジアやアフリカの子供たちと塗り絵イベントを行ったり、塗り絵本を出版したり、そういった作家活動を行っております。
作家活動を進める中で、美大卒でもない、若輩者の私は、“ アート ”に関して日々色々なことを学び、そのうえでアート作品を創るようにしております。というのも、“ 美大卒でもない ”というのが結構コンプレックスなんです。
ただ、そんなことを続けていく中で分かってきたのは、
「 アートを学ぶ方法って色々あって、美大の知識は勉強したらつけられるかも!? 」
「 アートって実は科学的かつ論理的で、むしろ理系向きかも!? 」
「 アートを届けるには、ビジネスの知識も必要なんだな 」
でした。
学べば学ぶほど、アーティストだけが“ アート ”を学ぶ・理解するのは非常にもったいないなと思ったのと同時に、もっともっと“ アート思考 ”を応用すると、おもしろいものやサービスが生まれるんじゃないかと思いました。
日々本を読み、実戦しながら、学んでいる僕がこれらを伝えていくことで、よりリアリティを持って、学びが共有できたら嬉しく思います。僕と同じ境遇にある方々に届き、共感頂けたら更に嬉しいです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。