日本のお父さんお母さんは子供以上に自分自身を大切にしてあげてほしい。~島村華子著「自分でできる子に育つ ほめ方叱り方」を読んで~
一言で言えば「親を救済する本」。
いわゆる子育てのマニュアル本だと思うとこの本が期待している本質から外れる。
形の上でも実践しないよりは幾分マシだろうが、この本に書いてある内容を方法論のみ聞きかじってその通りに実践する事に執着するのは返って親側のストレスになりかねない。
寧ろこの本の期待するところは「親の救済」。
親も一人の人間。
子も一人の人間。
そんな当たり前のこと過ぎて誰も意識しないような、でも当たり前だからこそ最も大切なことを改めて意識し直す。その切っ掛けと、「そこに至る為の」方法論。それが著者のねらいのはず。
少なくとも自分はそう感じた。
タイトルにもある通り、かなり具体的なシチュエーションを想定して、且つ具体的なほめ方・叱り方の声掛けの言葉を用いて記載されているので、かなり分かりやすいし、すぐ実践に移せそう。
だからこそ、かいつまんで読むと逆に本筋から外れた子育てのマニュアル本として読み違えてしまう可能性がある。
「親は無くとも子は育つ」
その通り。子は独立した一人の人間なのだから。
だから親は親として子育てに対しての、遠い未来の結果に対して未知数の責任を一身に背負いこむ必要も無い。そんな事を考えていたら心身を病んでしまう。
そう、この本にある内容を実践するのに最も肝要なのは、常に親は一人の人間として健やかな心身であること。
そうでないと、本の内容を正しく実践出来ない。
心身を健やかに…というのは言うは易く行うは難し。…ではあるのだが、その具体的な方法論自体が無い訳ではない。
読み進めるにあたって、親が(もちろん子も)心身を健康に保つ為に自分が独学で学んだオーソモレキュラー(分子栄養学)そしてそこから派生した藤川メソッドが有用なのではないかと思った。
これは飽くまで自身の体験だが、からだの健康の為に実践していた食事法が、精神面、つまり心に恐ろしく好影響を与える事を身をもって実感出来たのだ。
オーソモレキュラーをトンデモ科学と見る向きもあるが、少なくとも自分には効果覿面だった。お手軽だった事も奏功した。方法はいたってシンプル。
・糖質を極力とらない(血糖値の乱高下による感情の起伏を減らす)。
・タンパク質を(プロテインを使ってでも)積極的にとる(精神安定に不可欠な神経伝達物質の原料になるものを積極的に体に入れる)。
・ビタミンB群、C、D、E、鉄、亜鉛、マグネシウムを閾値までとる(神経を作るための新陳代謝の際、補酵素として働くものを必要最低限量よりも積極的にとる)。
これだけ。
特に産後の女性は最も精神に影響を与える鉄とタンパク質が決定的に不足している。それを日々の食事からだけで補うのは不可能だと思う。ましてや子育ての時は尚更自分の食事は疎かになりがち。
もっと親は、子供以上に自分を大切に思う必要があると思う。自分を大切に思う事こそ、子を大切にすることにつながるのだから。
心の安定を図るのに食べ物の話?
と訝るかもしれないが、口から入る食べ物こそが心を作っている。
西洋医学が蔓延り過ぎたせいで、まるで首から上と下は切り離された別物のように思ってしまいがちではあるが、精神を司る脳も臓器の一つなのだから、食べ物の影響を(良くも悪くも)受けるのは当たり前のはず。その当たり前の事を我々は意識しなければ精神の安定は図れない。
親の心身さえ安定すれば、この本に書かれていることを実践する事は遥かに容易くなる。
そして親の心身が健康なら、自ずと子の心身も健康になる。幸福感(飽くまでも「感」)も増す。
この本に書いてあることは子供をコントロールする術ではない。
コントロールするのは、どこまでも親である自分自身。
そして、まず愛するのは自分自身のからだとこころ。
その事を忘れない様に実践できれば、これほど親を救い、子も幸せにしてくれる本も無いと思う。