なぜ「問い」を決めても探究が進まないのか?
私たちについて
探究学習フィードバックシステム"Qareer(クアリア)"を運営している、芦野と申します。私たちは、「『学ぶと変われる』を全ての生徒へ」というミッションを掲げ、主に高校での授業『総合的な探究の時間』向けのサービスを開発・提供しています。
少しずつですが「日々の様子」「探究学習に関する気づきや知見」などを発信していきます。ご興味あれば、ぜひフォローしてください🙏
全国で多発する「問いが上手く立たない」
さて、今年度も2ヶ月が経ち、多くの学校で『総合的な探究の時間』も本格スタートしているようです。
もちろん進め方は各校それぞれですが、1年間で1テーマを探究するカリキュラムが組まれている場合、まさにこの時期から夏休み前くらいまででテーマ・問いを決めているように思います。
そのような中、全国から聞こえてくる悩みの声がこちらです。
「問いが上手く立たない」
これは、大変悩ましい問題です。
なぜなら、下記の文部科学省『探究における生徒の学習の姿』をみる限り、課題の設定(以降、便宜的に"問い" "問い立て"と表現します)が出発地点です。ここがうまくいかないと、当然探究的な学びも進んでいかない。
以降、ふわっとしたまま学習が進んでしまいます。
もちろん、この図に対する意見も様々あろうかと思いますが、実際に探究的な学びを経験した方や、現場で関わっている先生方であれば、言わんとすることはある程度納得いただけると考えます。
なぜ、多くの高校生が問い立てで苦戦するのか?
なぜ多くの高校生は、問いがうまく立たないのでしょうか。
あくまで探究学習に企業の立場から関わり、全国の高校生や先生方と意見交換する立場からですが、以下3つがあるように思います。
①教わったところで出来るようにならない
問いの立て方の講演を聞いたり、問い作りのワークシートを埋めたら、良い問いは立つのでしょうか?当然そんな簡単ではなく、多くの学校が苦戦している状況に見えます。学校はどのようなカリキュラムで、どう支援すれば良いのか?これがまだまだ業界全体でクリアになっていないように思います。
②良い問いは1発では生まれない
充実した探究学習を終えた高校生にヒアリングをすると、共通して「探究を進める中で問いが変わった」「最初の問いをもとに進めたら、新たな問いが生まれて、深まっていった」と話してくれます。
一方で、散見されるのがテーマ決めから問いだてにそこまで時間をかけないケースです。じっくり時間をかけ、更新されることをむしろ是としながら問いを作るのが望ましい中、むしろ事前インプット等に時間が割かれ、テーマ決めや問い立てを1発で行ってあとは進めるのみ…など。当然、良い問いにならないように思います。
③問う学び方(≒頭の使い方)を会得していない
現在はそこまで極端では無いことを前提に,,,ですが、まだまだ多くの生徒が「教わったことを再現する学び」に多くの時間を割いているのではないでしょうか。
当然これには色々な事情がありますが、高校に入学して『総合的な探究の時間』でいきなり「問いを立てよう!できればありたい姿や生き方を描きながら、繋がりのある問いを立てよう!」と言われても、それはハードルが高いと言わざるを得ません。
なお、この件について、Qareerサポーターが近い世代らしい提案をしてくれました。
たしかに、大人が必死になって「変化の激しい社会だから,,,」「VUCAだから,,,」とか言うより早いかもしれませんね,,,👼
"高校生の問い" あるある課題7選
本題に戻ります。
この探究の過程の最初「問いを立てる」でつまづくと、以降の探究の時間はアウトプット制作に向けた作業になってしまいます。では、学校はどこに注目して、学びを支援すると良いのでしょうか?
探究学習フィードバックシステム"Qareer"を運営していると、当然、多くの高校生の探究を見ます。そして遠隔・非同期・テキストだからこそ見えることがあります。日々高校生の探究に触れ、その探究にフィードバックしてくれるQareerサポーターの仲間たちと話すと、次の7つの傾向があるようです。
1)問い以前に、興味関心に無自覚
そもそも興味を持てることにまだ出会えていなかったり、自分自身の問題意識に無自覚なパターン。学校から課されたから作業的に問い立てを行っている程度にも見えます。
<例>この前授業で聞いた〇〇について
2)テーマに対して曖昧な問い
せっかく興味のあるテーマがあっても、探究のスタートを切れないパターン。大枠は決まっているものの、問いが曖昧なため、何について考えるかが定まらずに探究が進んでいかないように見えます。
<例>地域活性化、気候変動対策
3)大きすぎる問い
テーマが決まり、問いの形にもなっているものの、扱えるサイズになっていないパターン。ざっくり先行研究や既存事例を調べ、“調べ学習で終わらざるを得ない“ようにも見えます。
<例>どうすれば少子化は止まるのか?心理的安全性のある環境とは?
4)調べたら分かる問い
文字通りで、検索したらすぐ答えの出る問いで動き出してしまうパターン。調べて答えがわかり、それをまとめて終わりがちです。むしろこれは問い立てをする過程での「調べ学習」と言えるかもしれません。
<例>〇〇文学の起源とは?
5)目指すゴールが曖昧な問い
個人的に、もっと議論されるべきと考えるのがこの観点です。
前述の1-4までを考慮した上で一定の質の問いが立てば、自ずと探究が進んでいく印象があるのではないでしょうか。しかし、その探究で目指すゴール(目標,理想像)が曖昧なため、「どこに向かってるのかわからなくなる」「何が実現すると自分自身で『良い探究』と言えるのかがわからなくなる」パターンも相当数見かけます。
本来的には、この点にしっかり向き合うことで、「自分自身の価値観」「ありたい姿」等を考えるきっかけになるように思います。しかし、現実にはなかなか丁寧に考える時間が無いようにも思います。下記例のように、あなたにとっての「活性化とは何なのか」、「効率良いとは何なのか」に向き合わないといけないのですが、これはなかなかに時間がかかります。
<例>〇〇地区はどうすれば活性化するか?、〇〇の内容を効率よく習得するには?
6)主観のみを拠りどころにした問い
直感的な問題意識や、魅力的な理想“のみ“でスタートを切り、少し進んで色々わかると「そもそも問題ではなかった」となるパターン。下記例でいうと、そもそもフードロス削減は進んでいた、というものです。上記4と同様で、そもそも問題ではなかったことがわかる過程自体が、問い立てをする通過点と言えそうです。
<例>〇〇におけるフードロスを削減するにはどうすれば良いか?
7)本人にまだ迷いがある問い
上記1〜6で問いに関する"あるある課題"を記載しました。しかし、問いだてがうまく進んでいない場合、高校生本人も「これで良いんだっけ」と気づいているようにも見えます。
悩ましい点として、学校の『総合的な探究の時間』をベースに探究を進めると、どうしても有限の時間で取り組むことになります。具体的に言えば、アウトプットする時期が指定されています(ex.9月に中間報告、2月に論文提出、3月に発表等)。アウトプット制作の時間切れがちらつき、「問い自体に迷いがあっても、いくしかない」パターンは、大変悩ましいように思います。
今後も、noteに様子をアップしていきます
もちろん将来的には適切な手順を踏んで統計的にも分析できればと考えていますが、あくまで記載した7点は様々な探究を見た中で捉えた傾向です。一方で、探究学習を経験した方や探究学習を支援する先生方であれば、ある程度納得いただけるように思います。
では、学校はどのようにこの「問い立て」を支援すれば良いのでしょうか。カリキュラムの工夫、体制の工夫、関わり方の工夫…様々な観点で、まだまだ工夫の余地があるように思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
今後も活動の様子に加え、上記のような観点で好事例を収集して発信できればと考えます。ご関心あれば是非フォローいただけると嬉しいです🙏🙏🙏
一人でも多くの高校生が、探究学習を通じて『自分は学ぶと変われるんだ』と感じる機会になるよう、これからも取り組んでまいります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?