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《読書記録》自律する子の育て方
最新の脳研究でわかった! 自律する子の育て方
工藤勇一 (著), 青砥瑞人 (著)
紹介文
キーワードは「心的安全」と「メタ認知」だった!
学校の当たり前を覆し、全国が注目する学校づくりを実現した麹町中の工藤校長。
手をかけるほど子供の自律を阻むというメッセージは驚きと共感を持って、多くの人に広まりました。
今回、脳神経科学の世界で注目を集める、青砥瑞人先生との、「麹町研究」によって、脳科学的にも正しい子どもの育て方があることが立証されました。
これは既存の教育の思い込みを正し、「未来の教育」を模索していくために、旗となるべき成果です。
今回、教育と脳神経科学という異ジャンルの二人が共著として、教育・学力・子育ての大誤解を解きながら、
未来を創る「当事者意識のある子ども」を育てていくためにどうしていけば良いか、
それをわかりやすくまとめました。
全国が注目した、麹町研究の衝撃的な中身とは?
全国の保護者・教育関係者のバイブルとなるべき1冊!
神経科学で教育を紐解く内容で、非常にわかりやすく納得感を得られる本だった。
人の気持ちの動きや行動の変容について、神経科学に基づいた説明がなされている。
例えば、
『こんな声がけは、脳にこういう成分が分泌されるため、
このような心理状態に陥るため、パフォーマンスを発揮できない』
のように、しっかりと科学的な根拠から人の心の動きを説明してくれる。
その上で、子供との関わりの中で最も大切にするべきポイントは下記の2点だ。
・心理的安全性を確保し、自己肯定感を高める
・メタ認知能力を育て、自分自身を成長させる力をつける
自分自身、子供と接する中でドキッとしてしまうような声がけや関わりもあった。
大人の何気ない一言がその子の未来を作っていくということを再認識した。
子供たちに幸せな人生を送ってもらうために、
自分自身の言動に責任を持って、一貫性のある関わり方をしていきたいと心から思った。
ここからは特に取り入れていきたいと感じたポイントを紹介していく。
◾️Use it or lose it
使わなければ失くすだけ
脳の回路は森の獣道と一緒であり、
普段から使っている思考や行動パターンを無意識的に選ぶようになっていて
使っていない回路は閉ざされてしまう。
それを、デフォルトモードネットワークという。
普段から使っている回路を選択するのにはエネルギーを要しないため、
『エネルギー効率が抜群に良い回路』を選ぶようになっている
その人の体験や記憶がその人の脳(思考パターンや言動パターン)を形作っていくが、
一度出来上がった脳を短期間で劇的に変えることは難しい。
脳の癖を変えるには、新しい回路を『意識的に』『辛抱強く』使い続けることが必要で
膨大なエネルギーを要する。
子供の柔軟な脳は、回路の組み替えも起こしやすい。
◾️ストレスに反応しやすい脳とは
脳にはエラー探知機能が備わっていて、
(自分や他者の)失敗や欠けているところを自動検知するようにできている。
子供達は褒められることよりもダメ出しをされることに対して圧倒的に敏感で、
一度否定されたことはネガティブな記憶として強固に保存され、
それが自分の欠点として認識され続けることで『解釈の拡大』がおき、
自己否定的になっていく。
幼少期に過剰にストレスを受ける体験を頻繁にしていると
『Use it ore lose it』の原則に従ってストレスホルモン受容体を発動させる回路の
エネルギー効率が良くなり、結果的に『ストレスに反応しやすい脳』になる。
高圧的に叱られている最中(心理的危険状態)に言われた言葉は
ほとんど頭に残っていない。
残るのは、『怒られた記憶』で、
その時感じたショック、恐怖心、怒り、不安感、恥ずかしさが刻み込まれる。
◾️生産的な脳の状態
適度なストレスホルモンは『生産的な脳』を生み出す。
それはノルアドレナリン(アドレナリン)が放出されるため
脳の感度が上がり、良いパフォーマンスを発揮する。
(火事場の馬鹿力、締め切り前の追い込み、など)
ただ、ノルアドレナリンには弱点が2つある。
1、過剰だと脳の働きに不具合を起こす→攻撃的になる、パニックやヒステリーを誘発
2、あらゆることに感度が上がり、集中する対象がコロコロ変わりやすい
この弱点を補うのが『ドーパミン』で、気の散りやすさを軽減する役割を持つ。
やりたい!知りたい!実現したい!という自分発信の願望や欲求がある時に放出される。
つまり、心理的安全性を保ちつつ、
ドーパミンとノルアドレナリンの両方が分泌された状態が最も効率的な脳で、
生産性が飛躍する状態と言える。
教育においては、『これをやりなさい』『こうあるべきだ』の押し付けではなく、
子供の『やりたい』という自主的な気持ちを引き出すことが重要。
日本の教育現場ではこの部分があまりにも軽視されている。
◾️ストレス耐性
ストレスをストレスと感じにくい脳を作るためには、自己肯定感を上げることが大切。
そのためには子供時代に否定されない環境を作ってあげることだ。
具体的には、
・否定されない
・自分の意思が尊重される
・失敗が咎められない
・他人と比較されない
・できていることを評価される
・成功体験を積むことができる
・自分の成長を実感できる
自己肯定感を高めるには、
どんなに小さくても、自己決定の機会を与えていくことが重要。
それは、自分にOKを出す感覚になるためだ。
頭ごなしに叱らないこと、(導きや選択肢があっても最終的には)子供に決めさせる、
この二つを常に意識して関わっていく。
◾️教育の本質
デンマークのサッカー協会10ヵ条
1.子どもたちはあなたのモノではない。
2.子どもたちはサッカーに夢中だ。
3.子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
4.子どもたちから求められることはあってもあなたから求めてはいけない。
5.あなたの欲望を子どもたちを介して満たしてはならない。
6.アドバイスはしてもあなたの考えを押し付けてはいけない。
7.子どもの体を守ること。しかし子どもたちの魂まで踏み込んではいけない。
8.コーチは子どもの心になること。しかし子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない。
9.コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ。
10.コーチは子どもを教え導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ。
教育の本質とは
・自分の力で自分を成長させられる術
・幸せな状態を作り出せる術
を学んでもらうことである。
その実現に不可欠な『状態』が、『心理的安全性』
その実現に不可欠な『スキル』が『メタ認知能力』
と言える。
メタ認知能力とは、端的にいうと
自己を俯瞰的に捉え、自己について学ぶ機能である。
ポイントは2つ。
・自己の捉え方(自分の思考パターンや脳の特性、自己変容の軌跡を俯瞰的に捉える)
・自己について学ぶ
メタ認知ができない大人が、自力でメタ認知ができるようになることはない。
(そのために思考の伴奏者としてのコーチングが存在)
まずは自分に向き合う訓練から始めて、それが自然とできるようになったら
点と点をつなぐ練習をする。
そこから小さな成功体験を積み重ねることで、
自発的に自分の課題を見つけて対策を考えられる自走型の人間になる。
メタ認知の際に気をつけるのは
『反省しないこと』
『自分を責めない事』
子供達は、本人が望まなくても学校や友達から外部評価を洪水のように浴びている。
大切なのは、自分に関する情報や評価を『自己否定の材料』に使うのではなく
『自分の成長の糧』に変えていく意識の改革。
そのためには多くの人が常識だと思っている思考の大前提を上書きしていく必要がある。
《例》
理想的な人間を目指せ→人間は所詮でこぼこだよ
気合いで乗り切れ→頑張れないのが普通だよ
とにかく、否定しないことが重要。
大人は
・子供にありのまま受け入れさせて
・それをプラスの方向に変化させるにはどうするかを本人の力で考えてもらう
ことを導く必要がある。
◾️言葉の威力
褒める行為は大切だが、結果ではなくプロセスに目を向ける。
結果ばかりに注目していると、良い結果が出なかった際に自己否定的になったり
他責な思考パターンになってしまう。
ピグマリオン効果(教師期待効果)というものがあり、
99%が問題行為だとしても、残りの1%をちゃんと褒めてあげる事で、
新しい言葉が入ってきて、そこに意識が向くようになる。
一方で、逆のピグマリオン効果もある。
ネガティブな情報を大人が言語化する事でマイナス方向のピグマリオン効果が働く。
日本の教育現場ではほぼこちらの力が働いている。
大人は言葉、言語化の威力をもっと自覚するべき。
その効果を働かせてまで伝えたい言葉なのか、しっかりと考えて発言する必要がある。