「釜石ラーメン物語」を観てほっこりした話
「釜石ラーメン物語」という映画をレンタル屋さんで見かけて、なんとなく借りて観ました。
釜石って、岩手県の釜石市です。
製鉄業で栄えて、ラグビーで有名な海沿いの町です。
その釜石にある小さなラーメン屋を舞台にした人情コメディです。
なんでこの映画を観ようかと思ったかというと、自分が子どものとき、夏休み、冬休みの長期の休みになると、この釜石市にある親戚の家に預けられていたからです。
母親の実家があったのが釜石の小佐野、そして従兄弟の家が釜石の小川にあったんです。
で、この映画の舞台となるのが、小川にあるラーメン屋の「小川食堂」。というので、自分にとってとても懐かしい風景が映画の舞台になっていたからです。
そしてもうひとつ。監督、脚本が今関あきよし監督だからです。
8ミリフィルムカメラで自主制作映画を作っていて、大林宣彦監督に見出され、「アイコ十六歳」で商業映画デビューされた監督です。この映画で富田靖子さんがデビューされたのでした。富田靖子さんは、のちに大林宣彦監督作品で、自分たちを熱狂させる女優になるんです。
また佐藤藍子さん主演の名作SF映画「タイムリープ」を制作された方です。
自主制作映画から商業映画の監督へという、8ミリ映画を作っていた自分たちが観ていた夢を実現された監督さんです。
その方が、こういう地方を題材にした映画を造るというので、どんな作品になっているんだろうという興味で観ました。
主人公は正実という背の高い女性。どっかで観たことがある女性だなと思ったら、「仮面ライダーゼロワン」で仮面ライダーバルキリーに変身する井桁弘恵さん。井桁さんといえば、「乗って発見!」ってホンダの車のCMで活躍していますね。
ゼロワンの時には共演者がみな背が高かったの小柄だなと思ったのですが、このように田舎を舞台にした映画に出ると、背が高く見えますね。170センチのようですが。
その主人公が3年ぶりに釜石に戻ってくるわけです。小佐野駅に到着。
なぜもどってきたかというと、父親が病気で倒れたという噂を聴いて、様子を観にきたというわけです。
駅から店までの途中で、顔なじみの町民役として藤田弓子さんがちょい役で登場。正実がどんな人か知らせるだけで藤田弓子さんを登場させるとは、ぜいたくな使い方ですね。
ラーメン屋の父親役が利重剛さん。
利重剛さんの母親は、「金八先生」などの脚本を書いたことで知られる小山内美江子さん。このあいだ亡くなられました。「金八先生」の脚本で有名ですが、「ウルトラQ」の「あけてくれ!」など、初期円谷プロ作品も担当していた方です。
そしてその息子さんの利重剛さんも、若い頃からいろんな作品に俳優としても出演する一方、自分で映画を作り「ザジ ZAZIE」とか「BeRLiN」など、自分たち映画青年にグサリと刺さる映画を作ってきた方。
自分の中で利重剛さんって、若いイメージでしたが、このぐらいの役を演ずる年齢になったんですね。
ストーリーとしては、父親と妹がやっているかつて人気だったラーメン屋に、家出していた喧嘩っ早い長女が戻ってきて、かつてのラーメンの味を取り戻すことで、家族が戻り、町を元気にするという物語。
「カルメン故郷に帰る」とか寅さんのようなベタベタな昭和ペーストのコメディ映画です。
現在、釜石ラーメンというのが人気になっているみたいですね。釜石でラーメンが美味いって、聴いたことがなかったです。吉里吉里まで行って、吉里吉里善兵衛という店で、海の幸がたくさん乗った磯ラーメンは昔から有名でしたが。
この映画では、同じく最近人気になってきた、秋田県横手の十文字ラーメンも話題として出ています。
ちなみにこの映画で撮影したラーメン屋さんは、店の名前は変えてあるけど実際にあるお店のようです。「三重食堂」というお店のようですので、今度釜石に行ったとき食べてみたいです。
小川食堂の常連として渡辺哲さんが出ています。「ガメラ 大怪獣空中決戦」とか「ゴジラVSメカゴジラ」で自衛隊員として怪獣と戦っていて、「仮面ライダーゼロワン」では頑固な寿司職人の役をやっていた方。
その古くからの常連客が、釜石にもあるファミリーレストランのレシート裏にラーメンの味を取り戻すためのヒントを書き、幻のラーメンの味が復活していきます。
びっくりしたのが「小川湯」という看板が出てきたこと。え、小川に温泉や、銭湯とかあった? 小佐野にあった銭湯は子どものときよく行ったけど、小川にもあったんですね。今は廃墟らしいですが。小川は、新日鉄で働く人の社宅街がたくさんあったから、銭湯があっても驚かないですが。この看板を観に行かなければ。
そしてラーメン屋の父親がお世話になっている病院が、小佐野にある「せいてつ病院」。そこの先生を演じているのが村上弘明さん。岩手県の陸前高田出身の俳優さんですね。ご存知、「(新)仮面ライダー」スカイライダーですね。
この映画のDVD、おまけについているメイキングには、仮面ライダーバルキリーの変身ポーズをとって説明する井桁弘恵さんに、自分のときはこうだったよ、とスカイライダーの変身ポーズを取る村上さんが入っています。村上さんのスカイライダーの変身ポーズ。これ、貴重ですね。サブスクでなく、レンタルDVDで観て良かったな~、と。ぜひ村上さん、令和ライダーに出てほしいです。
そのほかこの映画には、日本酒の浜千鳥とか、中村屋の海宝漬とか、虎舞いなど、釜石の名物もちらちら出てきて、いかにも釜石という感じです。
そして、どうして家出したのか、どうして美味しかったラーメンの味が失われたのかが明らかになるんですが、原因は、津波で母親を失ったから、と。
行方不明になった母親を、子供らのためにとすぐに亡くなったとして手続きした父親、それが許せない姉の気持ちのすれちがい。それがきっかけになり、姉が家出となったと。コメディでありながら、13年前の津波の傷跡が根底にある、と描くのがいいですね~。
姉が戻ってきて、母親のラーメンの味を取り戻そうとすることで、次第に家族のつながりも戻っていく、という家族の再生の物語になっています。
メイキングを観ると、今関あきよし監督、利重剛さんや、出演されている方から意見をもらいつつ作っている感じですね。エンディングの部分とかも、なんか自主制作で作っているような雰囲気。
なんか自主制作をしていていた自分には、懐かしい感じのする映画でした。
こういう地方を舞台にして、地方を元気にする映画、どんどん作って欲しいですね。
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