逆張り目線の新規事業や新規商品の開発こそ、中小企業のやり方
目が小さくならないメガネ=逆張りの目線で市場創造
様々な消費分野で「主客逆転」の動きが目立っています。例えばお笑いの世界では、当初は印象が薄かった相方(オードリーの若林正恭さん、博多華丸・大吉の大吉さんなど)が「じゃない方芸人」として人気を博しています。化粧品業界でも、著名な俳優よりも身近なインフルエンサーの影響が強まっており、コロナ禍ではノンアルコール派が勢いを増しています。
情報過多の社会では、様々な存在が相対化されやすく、同時にマイナー派の声が拡散されて主流派に転じやすいという特徴があります。まさに日替わりヒーローの時代です。企業もまた、核心的なニーズだけでなく、「じゃない方」の需要に目を向けることが重要です。
ジンズの逆張りメガネ=「目が小さくならないメガネ」
メガネチェーンのジンズは7月4日に、これまでの常識を覆す逆張りの「じゃないメガネ」を発売しました。その名も「目が小さくならないメガネ」(9900円)。一体どこに目を付けたのでしょうか?
近視の視力矯正用メガネは、度数が強くなるほどレンズの厚みが増し、目元が小さく見えてしまいます。そこで、錯視効果を活用したフレームデザインで、消費者の悩みを解消することを狙いました。具体的には、レンズ面を小さくし、フレームに濃いカラーを採用することで、レンズ越しの目が小さくなりにくくなる効果を生み出しています。また、度数の強いメガネのレンズが厚くなるため、メガネの両端にあるリムに厚みを持たせることで、目立たない工夫も施しています。この商品はすでに同社のメガネ商品の人気トップ10に入り、販売の先行きは「視界良好」となっています。
セブン&アイ・ホールディングス=逆張りの豆腐スイーツバー
セブン&アイ・ホールディングスのプライベートブランド(PB)でも、逆張り商品が登場し支持が広がっています。「豆腐スイーツバー ガトーショコラ」では、通常の豆腐バーは白いのに対し、カカオを練り込んで見た目が黒くなっています。取引先が豆腐バー市場に参入しようとしたものの競争が激しいため、カロリーを気にしないチョコ型のスイーツを考案しました。カカオと豆腐の原料である大豆の相性も良く、こうして豆腐スイーツが誕生しました。
この新商品は市場で不発に終わる可能性もありましたが、実験的に販売したところ、女性の支持率が高く全国規模の販売へと拡大しました。甘くなさそうな商売が意外に甘かったのです。
ヤッホーブルーイング=逆張りのゆっくりビアグラス
ヤッホーブルーイングが期間限定で提供した「ゆっくりビアグラス」は超・逆張りの事例です。かつては「一気飲み」など、豪快に早く飲むことが酒飲みの自慢でしたが、最近ではむしろ「飲まない派」の存在感が増しています。そこでヤッホーは適正飲酒を掲げ、公式ビアレストランで飲みづらいビアグラスを提供し、抽選による数量限定のネット販売も始めました。この意外な提案に応募が殺到し、提供期間の延長や増産も検討されています。
バーモントカレー=甘口カレーの市場創造
消費の現場を見ると、逆張りを市場に定着させたヒット商品は多いです。例えばハウス食品のバーモントカレーは、辛いカレーが主流だった市場で甘口をつくり、不動のトップに君臨しています。
ご飯がススムキムチ=甘いキムチの成功
漬物メーカーのピックルスコーポレーションもまた、甘い「ご飯がススムキムチ」で成長を遂げました。これも逆張りの成功例の一つです。
カゴメの「野菜生活100 Smoothie」=飲みやすさへの挑戦
カゴメの「野菜生活100 Smoothie」も逆張り商品として注目されています。従来の野菜ジュースは「健康には良いが飲みづらい」という印象が強かったところを、飲みやすさと美味しさを両立させることで市場を拡大しました。
ユニクロの「エアリズム」=下着市場の逆転
ユニクロの「エアリズム」シリーズも逆張りの成功例です。従来の下着市場ではコットン素材が主流でしたが、エアリズムは通気性と速乾性に優れた化学繊維を使用し、多くの消費者から支持を得ています。
結論
これらの事例は、中小企業が市場で成功するためには、従来の常識にとらわれず、逆張りの発想で新たなニーズを創造することが重要であることを示しています。消費者の潜在的なニーズを捉え、「じゃない方」に注目することで、他社との差別化を図り、独自の市場を築くことが可能です。複眼的な視点で市場を見渡し、新しい価値を提供することが、中小企業の成長に繋がるのです。
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目が小さくならないメガネ:日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGKKZO82495410R00C24A8TB2000/
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