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第3章 シャンパン 泡が紡ぐ祝祭の物語

「なんだ、この圧力は…?」
17世紀末、フランス、シャンパーニュ地方。
オーヴィレール修道院の貯蔵庫で、修道士ドンペリニヨンは、貯蔵していたワインの瓶がいくつか破裂しているのを発見した。
瓶の中では意図せぬ二次発酵が起きていたのだ。
それは冬の寒さがもたらした、予期せぬ出来事だった。

眠りから目覚めた酵母たち

シャンパーニュ地方の冬は厳しい。
秋に瓶詰めされたワインは冬の寒さで酵母の活動が鈍り、発酵が一時的に止まることがある。
春になり気温が上がると、眠っていた酵母が再び活動を始め瓶内で残っていた糖分を分解し、二酸化炭素を発生させる。
密閉された瓶の中ではこの二酸化炭素がワインの中に溶け込み、圧力を高める。
これがシャンパン特有の泡の正体であり、瓶が破裂する原因でもあった。
ドン・ペリニヨンは当初この泡をワインの欠陥だと考えていた。
瓶が破裂するだけでなくワインが濁ってしまうこともあったからだ。
多くの修道士もこの泡立つワインを嫌っていた。

試飲が生んだ歓喜

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え、チップくれるん? ありがとうなぁ! この恩は3日ぐらい忘れへんから🫡