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【技術ショート】運命を決める三つの扉の物語 - ウェアハウス、レイク、レイクハウス

今回のキーワードはデータウェアハウスデータレイクデータレイクハウスです。


木村洋介は、暗い地下室のような空間に立っていた。
周囲には無数のサーバーが並び、その青白い光が彼の顔を照らしている。

彼は大手IT企業のデータアーキテクトだった。
しかし今、その立場が彼を苦しめていた。

洋介の前には三つの扉が並んでいた。
それぞれにデータウェアハウス、データレイク、データレイクハウスと書かれている。

彼は深いため息をついた。
この三つの選択肢の中から、会社の未来を決める道を選ばなければならない。

最初の扉、データウェアハウスに手を掛けた。
ゆっくりと開くと、そこには整然と並んだ本棚が広がっていた。

洋介は中に足を踏み入れた。
すると、老紳士の声が響いた。

「ようこそ、木村君」

振り返ると、そこには白髪の老人が立っていた。
「私がデータウェアハウスだ」

洋介は驚きを隠せなかった。
「あなたが...データウェアハウス?」

老人は穏やかに微笑んだ。
「そうだ。私は1980年代から存在している。構造化されたデータを扱うのが得意でね」

洋介は周囲を見回した。
確かに、すべてが整然としている。

「ここでは、スキーマ・オン・ライトという方式を採用しているんだ」
老人は本棚を指差しながら説明した。

「つまり、データを入れる前に、きちんと形式を決めておくんだよ」

洋介は頷いた。
「確かに整理されていて、検索も速そうですね」

「ああ、そうだとも」
老人は誇らしげに答えた。

「ただし、新しい種類のデータを入れるのは少し大変だがね」

洋介は考え込んだ。
確かに、既存のシステムには適しているが、柔軟性に欠ける。

彼は老人に礼を言い、次の扉に向かった。

データレイクの扉を開けると、そこは広大な湖のような空間だった。
様々な形や色のオブジェクトが、水面に浮かんでいる。

「いらっしゃい」
明るい女性の声が響いた。

振り返ると、若い女性が立っていた。
「私がデータレイクよ」

洋介は、思わず目を見開いた。
「こんなに...自由な空間なんですね」

女性は楽しそうに笑った。
「そうよ。私は2010年頃に生まれたの。あらゆる種類のデータを受け入れられるのが特徴なの」

洋介は、浮かぶオブジェクトを指さした。
「これらは、全て異なる種類のデータ?」

「そうよ。構造化データも非構造化データも、すべて受け入れるの」
女性は誇らしげに答えた。

「スキーマ・オン・リードという方式を採用しているの」

洋介は、首を傾げた。
「それは、どういう意味ですか?」

「簡単に言えば、データを読み出す時に形式を決めるの」
女性は説明した。

「だから、入れる時は何でも OK。使う時に整理するのよ」

洋介は感心した。
「柔軟性が高いですね。ただ...」

「ただ、整理されていないから、使いこなすのが難しいってこと?」
女性は洋介の言葉を先取りした。

洋介は黙って頷いた。

彼は、最後の扉に向かった。
データレイクハウス。

扉を開けると、そこは近代的なオフィスのような空間だった。
整然とした本棚と、自由に配置された家具が共存している。

「やあ、待っていたよ」
中年の男性が、洋介に向かって歩いてきた。

「私がデータレイクハウスだ。2017年生まれの新参者さ」

洋介は、興味深そうに周囲を見回した。
「データウェアハウスとデータレイク、両方の特徴がありますね」

男性は満足そうに頷いた。
「そう、君の言う通りだ。私は両者の長所を兼ね備えているんだ」

洋介は、具体的な説明を求めた。
「どのような点で?」

「まず、データレイクのように多様なデータを受け入れられる」
男性は説明を始めた。

「そして、データウェアハウスのように、高速なクエリと分析が可能だ」

洋介の目が輝いた。
「つまり、柔軟性と性能を両立できる?」

「その通りだ」
男性は続けた。

「さらに、リアルタイム分析や機械学習にも対応している」

洋介は、深く考え込んだ。
三つの選択肢、それぞれに長所がある。

データウェアハウスの安定性。
データレイクの柔軟性。
データレイクハウスの統合能力。

彼は、自分の会社にとって最適な選択をしなければならない。

洋介は、三つの扉を見比べた。
そして、ゆっくりと一つの扉に向かって歩き始めた。

彼の選択が、会社の未来を決める。
そして、データの新たな時代の幕開けとなるのだ。

洋介の手が、選んだ扉に触れた。
その瞬間、彼の目に決意の光が宿った。

データの海で溺れそうになった男は、今や新たな航路を見出したのだ。


参考


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Puuuii | 伝える技術と心理学で戦うデータエンジニア
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