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サウナ室の空気汚染が気になるので必要な換気量を調べてみた
こんにちは。サウナが好きすぎてサウナの調査、分析、研究、そして設計をしているPUSAI, inc. の手塚です。
サウナ室の環境は、温度や湿度で評価されがちですが、実は二酸化炭素の濃度も重要な指標です。新鮮な空気をどれだけ取り入れ、汚れた空気をどの程度排出できるかが鍵となります。
サウナの空気質について調べていると、つい仕事部屋の二酸化炭素濃度も気になり、試しにCO2測定器を購入してみました。安価なものなので精度は完璧ではないかもしれませんが、空気の状態を把握する目安にはなるかと思います。
空気環境の大切さ
CO2濃度は不快感だけではなく知的活動にも影響を及ぼします。この数値を目安に、濃度が上昇した場合に換気をしたり、ちょっと外の空気を吸うのに散歩に出たりした方が生産性が上がります。
二酸化炭素濃度の基準値
410ppm:新鮮な空気(外気)
700ppm:室内で推奨されている許容レベル
1000ppm:許容レベルだがこれを超えてくるとや軽い眠気を感じる
1500ppm:息苦しさや不快感あり
2500ppm:健康被害の懸念あり
決して広くはない仕事部屋で窓も扉も閉め切って作業をするとどんどんこの数値が上がっていきます。今まで、「なんか眠くて集中できないな」と思ってたのは寝不足や疲れからくるものではなく、実は二酸化炭素濃度が原因だったという可能性も大いにあります。
気になるサウナ室の空気環境
話を戻すと、サウナ室という小さな空間で、なおかつ複数の人がいるのでCO2濃度が上昇するのは仕方ないことだと思いますが、健康やリフレッシュのために入っているはずが健康被害を及ぼすような汚染した空気の中に身を置くことは避けたいものです。では、サウナ室の二酸化炭素濃度許容値はどれくらいなのか、そして新鮮な空気はどれくらい必要なのでしょうか。いくつかの資料から参考となる数値を拾い出してみました。
日本サウナ・スパ協会の基準値
二酸化炭素の基準値はどれくらいなのか。それについては公益社団法人サウナスパ協会の管理基準に記載がありました。
空気中の炭酸ガス濃度は 1500ppm以下、一酸化炭素濃度は 10ppm以下である こと。
炭酸ガスとは二酸化炭素のことです。換気量についての記述はありませんが、どの程度空気を新鮮に保つべきかの基準については記載がありました。
トランプキンの推奨値
ここからは「換気量」にフォーカスして基準値を探ってみたいと思います。まずは、以前別の記事でも紹介したトランプキンのメモから。
一般的な推奨事項は、1人あたり最低20 CFM(30 m³ / hr)です。ただし、活動的な人の呼気中のCO2レベルが高いため、ジムでは1人あたり20~30 CFMが必要になることが多いため、サウナも同様にいくらか多く必要になる可能性がありますが、これにはさらに研究が必要です。私たちのサウナでの初期測定では、CO2レベルを適切なレベルに保つには、1人あたり20~25 CFMが必要であることがわかりました。換気が多すぎると、熱と湿気が取り除かれすぎてロウリュが減少する可能性があるため、換気量を慎重に調整する必要があることに注意してください。
https://localmile.org/trumpkins-notes-on-building-a-sauna/
サウナ室ではただ座っているだけではなく、熱い空間で心拍数が上がり身体的には活動的な状態になっていると言えます。そのため、一般的な数値とジムのような運動をする場所との間をとって20〜25CFM程度が推奨されています。
ここでCFMというあまり見慣れない単位が出てきました。CFMはCubic Feet per Minuteのことで単位がメートルではなくフィートです。別名「ft3/min」とも表現されるそうです。1分間にどれくらいの空気の量が流れるかを示しています。日本ではm3/minやm3/hなどと表現されることが多いので換算してみましょう。
20~25 CFM → 34〜42m3/h
一人当たりこれくらいの空気が必要ということになります。
沼尻良さんの推奨値
(前略)もし3人の男性が同時に入浴し、1時間の間に10分ずつサウナに入浴すると、1人の人が1時間入浴したのと同じことで、この場合も1リットル以上の腕がサウナの内部に発散されることになります。汗を含んだ空気は、素早く外に排出しなければなりません。サウナでの必要換気量は、少なくとも60m3/hは必要だと言われています。
サウナを作る上での必読書「サウナを作ろう」では、3人がサウナに入る場合の例として、60m3/hという数値が出てきます。つまり一人当たり20m3/hというのが一つの基準となります。
ラッシ・リッカネンさんの推奨値
例えば、4名用のサウナには、毎分1440Lの空気が必要です。これを1時間あたりの空気交換率で考えると、3回から6回の空気交換が必要とされます。
「フレッシュエアーを取り入れる方法」の項目内にその記述があります。毎分1440Lを換算すると、一人当たり毎分360Lの空気が必要ということ。360Lをm3に換算すると0.36m3です。さらに毎分を1時間あたりの数値に換算すると21.6m3/hとなります。
薪ストーブの場合
今まで何度もお伝えしてきた通り、薪ストーブと電気ストーブでは換気の考え方が異なります。薪ストーブだとそれ自体が空気を引っ張りますので、空気の動きはシンプルです。
薪ストーブは動力付き排気装置として機能します。100~600 CFM の排気気流を生成して、古い空気 (CO2、湿度) を排出します。これにより負圧が発生し、新鮮な空気供給口から新鮮な空気が引き込まれます。
電気ヒーターではそのようなことはできませんし、サウナ室の外部から燃焼空気を供給され、そこから燃焼空気を受け取る薪ストーブでも同様です。そのため、これらのサウナでは、古い空気を排出するために機械式排気送風機が必要です。
このように、電気ストーブの場合では機械式の排気が推奨されています。正しい位置に給気口、排気口を設置し、なおかつ排気は機械換気にする。その能力を選定する時に上記のような数値が参考になります。
排気ファンの機器選定
排気機の仕様書を確認すれば「有効換気量(m3/h)」の記載がありますのでそれを参考にしてください。もし、ダクトが長かったり曲がりの数が多い場合は有効換気量が不足しますので、そういう場合は専門家に検討を依頼しましょう。
まとめ
一人当たりに必要な換気量を、単位を揃えて比較してみるとこのような結果になります(サウナスパプロフェッショナル公式テキストには換気量についての記述は見つけられませんでした)。
トランプキン:34〜42m3/h
沼尻良さん:20m3/h
ラッシリッカネンさん:21.6m3/h
このような結果から、間をとって大体30m3/h程度を目安にするのが良いと思います。例えば、3人程度なら90m3/h、4人程度なら120m3/h程度の有効換気量が必要と考えます。強弱で制御できたり、給気側で風量調整できる可能性があれば少し余裕を見込んでおくことが望ましいでしょう。
空気は目に見えないものなので、計画したものが本当にその通りに動いているかどうかを確認するのは難しいです。サーモグラフィで物体の温度は測れても、立体的な熱の動きまでは確認できないからです。また、CO2濃度も高温なサウナ室に機器を持ち込んで測定するのが難しいですし、きっと上下で数値も異なるでしょう。
もしできるとしたら、サウナ室内の空気をビニール袋などに閉じ込めて、それをすぐさまサウナ室外に持ち出し、CO2測定器を突っ込むとどうなるか実験をしてみたいものです。
また、排気口から排出された空気は汚染されているはずなので、外部フードから出てきた空気のCO2濃度を測ることで換気計画がうまくいっているかどうかを確認することもできるかもしれません。サウナ室内の空気環境を確認するため、そのようなテストも実験的にやってみたいと思います。
ちなみに、こちらが簡易的な二酸化炭素濃度測定器。小型で持ち運びが便利なので、今度プライベートサウナなどに持ち込んで試してみようと思います。
参考文献
サウナの建設に関するトランプキンのメモ
https://localmile.org/trumpkins-notes-on-building-a-sauna/
サウナ及びスパ営業施設における 衛生確保に関する自主管理基準/公益社団法人日本サウナ・スパ協会
https://www.sauna.or.jp/pdf_files/2019_kanrikijyun.pdf