刺しゅうが語る物語〜しあわせ刺しゅう時間13〜
こんにちは、ぷるるです。
刺しゅうの森での楽しい日々を、のんびりお届けするこのシリーズ。
前回はお気に入りのエコバッグに、紋様「むかい鳩」を刺しゅうしました。
完成した鳩は、なかなかのお気に入り。
エコバッグ自体も、お気に入り。
でも自分の中では、バッグの質感と刺しゅうの仕上がりがミスマッチに思え、モヤモヤしたしていたのです。
そうですね、感覚としては「食い合わせ」が近いかもしれません。
美味しいもの同士なのに、一緒に食べると良くない結果になるという、アレです。
食い合わせといえば、『うなぎと梅干し』ですかね。
それなら『キノコとカニ』でどうだ!
・・・自分で言い出したのに、例えにならず申し訳ございません。
とにかくそんな訳で、私は「バッグの反対面にかわいい動物を小さく刺そう!プロジェクト」を立ち上げたのです。
ざらりとした布質には、毛がふかふかの動物が似合うはず!
そして完成したのがこちらです!
布目が荒いので、9号針を使い一本どりで刺しました。
くま本体はロング&ショートステッチ、マフラーはチェーンステッチです。
はしっこに刺したのは、何かを入れても図案が見えるようにするためです。
今度は納得のいく、組み合わせとなりました。
これからはリバーシブル・エコバッグとして、楽しんでいく予定です。
ところで今回、私はちょっと面白い体験をしました。
あのですね、刺していたら刺しゅうのくまたちがおしゃべりを始めたんですよ。
「ぼくたち、幼馴染なんだよ!」
最初に話しかけてきたのは、水色のマフラーをしたくまでした。
「緑のマフラーをしてるのが妹。まあ同い年だけどね」
ほうほう、双子さんですか!ひとりっ子の私は兄弟姉妹にずいぶん憧れたものです。しかも仲良しなら最高ですね。
「でも、この子も兄弟みたいなもんよ。私たちずっと一緒にいるもの」
緑のマフラーをしたくまが、真ん中のくまをばしんと叩きます。
でもその子は口を閉ざして、両手を握りしめていました。
「こいつ、恥ずかしがりなんだよ」
「ほんとは、おしゃべりなくせにね〜」
なるほど、なるほど、緊張しているのですね。
私はどうかリラックスしてねと、赤マフラーくんに告げました。
そして双子の話を聞きながら、針を動かしていきます。
どうして友達になったか、どんな遊びが好きか。嫌いな食べ物は何か、などなど。
でも赤いマフラーのくまは、最後まで黙ったままでした。
慣れるまでに時間がかかるんだよね?
私も同じだから、わかるよ!
これからゆっくり、仲良くなっていこう。
長い付き合いになると思うから。
もしかしたらあらゆる刺しゅうには、小さな物語が隠れているのかもしれません。
伝統的な刺しゅうに、長い歴史が受け継がれているように。
完成後にそんな考えがふと浮かび、私の中にすとんと収まりました。
その物語は私の内面を表している、と考えることもできます。
でも、それだけではない気がちょっとするんですよね。
それぞれの刺しゅうが持つ独自の世界も、ぐんと広がっているのではないか。
そして、誰かに発見されるのを待っているのではないか。
私は自分で図案を選んだ気でいたけれど、本当は刺しゅうの方から誘いを受けていたかもしれない、と。
今までも、これからも。
このあたりは刺しながら、じっくり確かめていきたいと思います。
さあ、次はいよいよ「服に刺しゅうプロジェクト」です!
2023年布カレンダーといい、目の荒い布地はもうこりごり。
そこで、こちらに刺してみようと思います。
ゴルフの練習用Tシャツなんですけど、どんな図柄を刺しましょうか。
胸元にワンポイント?
中央に大きな柄を?
ゴルフにちなむか、関係ないものにするか・・・
どれもワクワクするけれど、せっかくですから耳を澄ませて、図案からのお誘いを待ってみようと思います。
あ、でも来年の布カレンダーも刺したい!
Tシャツと並行して刺そうかな〜。
うれしい悩みがつきない私は、当分刺しゅうの森から出られなさそうです。