[2021-018] 患者の話は医師にどう聞こえるのか
読了。真面目な医師による患者とのコミィニケーションの在り方についての本ですが、例えば「ユーザの話はエンジニアにどう聞こえるか?」とか、「部下の話は上司にどう聞こえるか?」という置き換えをしても示唆的な内容が盛りだくさんであり、かつ普遍的なテーマだと思う。今日的だと感じられるのは、患者に関わるデータ・エビデンスが爆発的に増える中で、そのパラメーターを意識すること、改善することに重きを置かざるを得ないし、それが、平均的には患者の問題を解決する上で良い方針であるのだけれども、患者自身が抱えている”今ここ”の問題は、コミュニケーションの中から洞察されるが、それがどうしても置き去りになってしまう。これらの行き違いが、エビデンスベースでの処方や診療の足かせになってしまう。というところだと思う。
医師という仕事は200年も遡れば、祈祷師のような部分が多分にあり、患者の様子から状況を判断して、適切な会話と蓋然性の低い処方や処置をしていたと思う。それが近年になって、様々な情報を以前より高い精度で得られるようになってから、科学として成立したが、医師に求められる祈祷師的な部分、それによる効果を除くことが、真に患者の病状の改善にとって正しいのかという際どい問題設定だと感じた。
ここから、情報・数値が示すことの外にある”患者側”の課題に自然科学と大きく相反せず、患者の信頼を得て接するには、どうするべきか?これらの問題がすべて、情報・数値に人間が大きく依存することで解決できるのか?おそらくそれに無理が生じてきているという直感的な問いなのだと思われた。