[2021-11] 認知バイアス 心に潜むふしぎな働き
読了。とても良い読後感。前半は科学説明的に始まり、徐々に後半、読み物的、実証的ではないが、そうではないかという著者の主張という流れだと思う。前回紹介した意思決定理論と続きで読んだことで重複した内容を異なる視点で論じられており、その意味でも理解しやすい内容だった。
この著作に限らず当たり前だが感じることに、翻訳本よりも、日本の研究者がネイティブな日本語で書いた文章のほうが、その意味について深く記述されているのを読み取ることができるというふうに感じる。なるべくわかりやすく記述しようというのが読み取れる。amazonのレビューでも、この分野においても、外国人の翻訳書に日本人の人気が集中しているように見て取れるが、これもカテゴリ分けによる認知バイアスがまさにそこで起きているように思う。
※それについて自虐的な説明は無いですが、私はそう感じました。
内容は認知バイアスについて網羅的に説明されている。チャルディーニの”影響力の武器”で出てくる話もあるし、ベイズについも少しでてくる。行動経済学・認知科学・社会心理学・言語学・脳科学などは、そのアプローチの仕方、問題の捉え方は違えど研究対象は同じだと思う。人間は人間がなぜそう行動するのか?考えるのか?ということを解き明かそうとし、しかしそれはまだ道半ば。不思議といえば不思議だし、当たり前といえば当たり前かもしれない。その中に入り込んできた統計的なAIというシステム、それと脳のシステム1、システム2についての著者の主張には、感ずるところがある。また、認知科学・そのバイアスについて知るとそのメタ化による新たなバイアスや新たな認知が生じる意味で、その多層化は現代に始まったことではないが、その人間の中にだけ展開され、それを正確に書き述べることも、伝え聞かせることもできない変化が結果や創造性につながるのかなと思ったりした。読みやすいのでオススメです。