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#227 高齢の妻殺害事件 

こんにちは
tatsuyaです。

本日は、「高齢夫婦の殺害事件」についてのニュースを紹介したいと思います。

高齢の妻殺害事件 よぎる介護、最悪の決断 「妻に犠牲になってもらわねば」 同居の息子を頼れず

法廷に現れた男(87)は落ち着いていて、60年近く連れ添った妻(当時81)を手にかけたようには見えなかった。妻はまだ介護が必要ではなく、50代の息子2人も同居していたが、将来の不安が男を凶行に駆り立てた。東京地裁で開かれた4日間の裁判員裁判で浮かんだのは、4人家族の住む一軒家で「孤立」した男の姿だった。

事件は2023年12月、夫婦が長年暮らした都内の自宅で起きた。「早くした方がいいんじゃないか」。午後1時ごろ、まだ昼食をとっていなかった妻に男が声をかけた。

妻は高齢になってから入浴の頻度が減り、テレビを夜中まで大音量で見るなど生活の乱れが目立ち始めていた男が注意するとたびたび口論になった。この日も妻は「まだ遅くない」と反論し、玄関付近でいつもの言い争いが始まった。そのとき男の頭を埋め尽くしていたのは、かねて感じていた介護の不安だった。

妻は1年前に通院の道すがら転倒し、家でも壁を伝って歩いていた。認知症ではなく、身の回りのことも自力でできるため要介護認定は受けていなかったが、いずれ介護が必要になる。これまで家事は妻に任せきりで、米を炊いたこともない自分に務まるとは思えない。ふと結論がよぎった。「妻に犠牲になってもらわなければ」

通 報

妻の両肩を両手でつかみ、2人で立つには狭いトイレ前の廊下に押し込んだ。「少しの力でも効果的なのは狭い場所。暴れ方も少ないだろう」。倒れた妻の首に両手をかけ、体重をかけながら絞めた。「途中でやめれば言語障害が残り、介護の負担が増すかもしれない」。力をこめ続け、反応がなくなってからようやく手を離した。

子どもたちに順番に電話をかけ、妻の息がないことを伝えた。その後に自ら通報し、居間の机に「妻を殺害しました。申し訳ございません」と書き置きを残した。気が付くと警察署の中にいた。手錠をかけられた記憶は抜け落ちていた。妻は搬送先の病院で死亡が確認された。

殺人罪に問われた男の公判で垣間見えたのは、互いに干渉しない家族の姿だった。夫婦は1965年に結婚し、3人の子どもをもうけた。きちょうめんな夫と、おだやかでのんびりした妻。性格の違いから口げんかは絶えなかったが、子どもたちにとっては「日常の光景」だった。

長女が結婚を機に家を出てから25年以上、夫婦は独身の長男・次男と4人で暮らしてきた。妻は専業主婦で、男が定年退職してからは年金生活。夫婦の会話は少なく、食事や洗濯はそれぞれで済ませていた。郵便局員の長男も夫婦とほとんど交流せず、派遣社員の次男は仕事から帰ると自室にこもった。兄弟の折り合いも悪かった。

孤 立

ひとつ屋根の下で、それぞれが孤立した家族。男にとって心の支えは近所に住むおいだった。年齢が近く、話も合ったが、事件の2カ月前に急逝。男は眠れなくなり、体重も激減した。妻も自身のきょうだいと新型コロナウイルス禍で疎遠になっていた。

「互いに干渉しないのは楽だが、寂しい一日を送らせてしまった。私は家の責任者に本来なってはいけなかった。全部私の責任だ」。被告人質問で弁護人から妻への思いについて聞かれると、男は自らを責めた。

子どもが同居していても、年老いた親の孤立感や介護への不安感が払拭されるとは限らない。内閣府による2021年の高齢者調査で「孤立していると感じること」が「時々ある」か「常にある」人は2割を占めた。将来の介護の不安点を複数回答で尋ねた22年調査では「特に理由はないが不安」が3割で上位。いずれも子どもと同居する人と全体の結果に大差はなかった。

20年の国勢調査で、50代の未婚者のうち親と同居しているのは137万6千人(49.8%)と単身世帯(38.4%)の1.3倍で、10年前から10ポイント増えた。男のような環境は今では珍しくない。

東京地裁は9月の判決で「殺意は強固だ」としたうえで「長年人生を共にした夫から突然首を絞められた衝撃や無念さは察するに余りある」と指摘。「妻の無念に思いを致したり後悔の念を抱いたりしているようには見えない」などとして懲役8年の実刑判決を言い渡した。身じろぎせずに裁判長を見つめていた男は控訴せず、判決は確定した。

事件の1カ月前、長男は男から「家を売って老人ホームに入りたい」と相談を受けていた。退職して両親の面倒をみる決意を固めていたが、その前に事件は起きた。「なぜ待てなかったのかと悔やまれるが父にとっては非常に長かったのだろう」と苦悩に思いをはせた長男。次男にも「父を責める気持ちはない。家族の責任」と後悔ばかりが残った。「なぜこうなる前に話し合って止められなかったのか」。家を出ていた長女はやるせなさを募らせた。

「終活」「親の介護、兄弟、不仲」――。男のタブレットに深夜から未明にかけての数々の検索履歴が残されている。公判中、終始淡々としていた男にひとりの裁判員が妻の気持ちについて尋ねた。「どう思っているのか、私も一番聞きたい。50年以上一緒におり、みなさんが思うほど仲が悪いわけではなかった」。その声は泣いているように聞こえた。

2024/11/24 日本経済新聞

妻は認知症ではないものの、転倒からくる虚弱か軽度認知障害(MCI)の状況だったのか自立した生活を送れるのには不安が生じている状況であったようです。

それに対して、もともと夫婦仲はそこまで悪くはないがよくもない状況。

息子たちは同居しているものの、それぞれが干渉しない関係性。

この先、介護の不安があったというものの、夫自身も家事ができるか不安がある中で、妻を殺害する選択をした。

この問題の本質は、この先の「介護の不安」よりも現在の「孤立」が問題だったのではないかと思う。

単なる「夫婦間の問題」ではなく、社会全体で孤立や不安を解消するためのサポート体制を築けるか、家族を支える仕組みを考えていかなくてはならないと感じました。

以上です。
最後まで読んで頂きありがとうございました。

それではまた、次回お会いできれば嬉しいです。

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tatsuya@(通所介護×介護報酬)/理学療法士
「制度に関して興味がでた」「介護保険をもっと知ってみたい」と思っていただけましたらサポートをして頂けるとありがたいです! 今後も介護報酬の改定が施設にとって少しでもプラスになるように継続して行なっていきたいと思いますのでよろしくお願いします!