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ただ小さな子供の心に、大人の醜さを溢れるほど押し込んだだけ

何も感じずに済むようにと慌てて閉ざしかけた心に、捩じ込むように言葉が発せられる
間に合わなかった
愚痴という名の汚染廃棄物
こぼすのではない、無理矢理こじ入れるのだ
毒々しい声を浴び、私は汚染されていく
耳にこびりついたそれは、皮膚に染み込み、血管を通して全身を巡る
強制的に受け取らされたゴミ屑
有害物質を何年にも渡って放出し続け、精神に非可逆的な影響をもたらす
ゆっくり、ゆっくりと
腐敗し、傷んでいく
修復は追い付かず、死滅してゆく
心が壊れてゆく
母親ならば誰だって娘を感情の掃き溜めにする
夫、親戚、友人知人、誰彼構わず批判して、陰鬱な世界へ引きずり込む
よくある話 どこにでもある話
けれどそれは、あってはならないこと
特別大きな悲劇は必要ない
毎日コツコツと、相手が自制心を失わない程度の不快感を、相手がギリギリ我慢出来てしまう程度の憂鬱を与え続ければいい
強制的に同意させられるまで同じ話をしつこく、しつこく繰り返し聞かされ、陰気な思考を押し付けられる疲労感
出来るだけ喧嘩は避けたい、自分が耐えていれば済む話だから
そう思う娘につけ込めばいい
そうすれば、ただ「一緒に暮らす」ということだけで、ひとりの人間の心をこれほど蝕むことが出来る
愚痴という名の汚染廃棄物
目には見えない、けれど一生消えない
それだけの重みを持った行為なのだと、気付いてほしかった
毎日毎日、365日、20年以上
長年の蓄積が精神に致命的なダメージを負わせ、人生ごと破壊した
なのにきっと、負わせた傷の深さには死ぬまで気付かない
嫌がる娘に、逃げることが出来ない娘に、ただ愚痴を聞かせ続けただけ
何度やめてくれと泣かれても、聞き入れなかっただけ
ただ、娘が父親を憎むように仕向けただけ
ただ、娘が誰も信じられないように洗脳しただけ
娘の無邪気な子供時代を奪って、その心に大人の醜さを溢れるほど押し込んだだけ

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