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電脳記号の事件簿

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シンボルネットの電脳文明。インターネットは普遍となりて、人類はその内側で暮らしていた。文明には、『電脳記号』と呼ばれる科学物がある。存在記号から動作記号まで、幅広いそれは、魔術に…
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電脳記号の事件簿【1-2】

 探偵事務所。私はソファーに座る。テーブルには薬酒だ。私は格調高い背広を着ていた。市民は普段着を変えない。これは歴史単位の流行だ。 

 猫島めいは私の隣に腰掛けていた。いつものドレスだ。

 私はメモ帳とペンを見ている。よくある掌サイズのメモ帳だ。私はパラパラと白紙をめくる。ペンも、普通の量産品だ。何の電脳的仕組みもない。

「それは何?」

「『宝石』対策の道具だ」

「メモ帳とは古風ね。何か

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電脳記号の事件簿【1-1】

電脳記号の事件簿【1-1】

【1幕1場】

「女の虚栄心は、北風のせいだわ」と女。

「だから貴方が温めて、と君は色男を口説くのだね」と私。

 和服美人が、ソファーで棒付き飴を舐めていた。当たり前のように居座っている。もう30分はそうしていた。彼女は、事務所が生活圏のつもりでいる。

 背の高い女だ。細顔の、長い髪を櫛でまとめている。名前は猫島めいだ。黒い和服には金粉のあしらい。西洋の化粧をしている。金の小鞄を提げていた。

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