おおおとはじめ

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  • 美しき迷宮とその記述

  • 電脳記号の事件簿

    シンボルネットの電脳文明。インターネットは普遍となりて、人類はその内側で暮らしていた。文明には、『電脳記号』と呼ばれる科学物がある。存在記号から動作記号まで、幅広いそれは、魔術に等しい。 主人公の探偵は、その記号の絡む電脳事件を解決してゆく。

最近の記事

【神話論】

【序論】  これは(1)小さな物語の哲学である。  いかなる諸派の議論も、私と論は必要としている。小さな物語の本懐とは、諸派独自の受け入れにある。論は、まず哲学に触れる人間への、適用を必要としている。  論の基礎として、(2)自己と(3)物自体は同一である。これは(4)「小宇宙と大宇宙」(5)「胡蝶の夢」(6)「霊性」(7)「脱構築」にも通じる。  最初は「小宇宙と大宇宙」だ。部分と総和は、同じである。自己と物自体も同じだ。我々は宇宙に生きている。我々もまた宇宙である

    • 減点会議

       銀河世界。国と企業の線引きは曖昧化していた。とある企業は、人事評価を、加点方式AIで決めている。唯一、それに減点会議だけが干渉できた。  管理職が一人を減点に指名する。これを部内メンバーで多数決した。  その星系支店は節約に努めていた。安物の備品は、最低限のビジュアルだ。二一世紀からデザインは進歩していない。というよりも、地球への愛着心から好まれていた。  会議室も、安物のディスプレイに、プラスチックの椅子と折りたたみの長机だ。ディスプレイには「減点会議」と表示されて

      • 歌舞伎戯曲『清水郷(せいすいごう)』

        【ねらいとあらすじ】  一幕四場。全場面の舞台は、茶器職人ハクチの家だ。  ハクチは、産まれたときのクジで悪党役だ。虐めを受けている。恋女房は見て見ぬふりだ。村人衆は文を見つける。ハクチへ小判を支払いたい、と書いてある。  ハクチは小判を得て帰る。村人衆と悪党役について議論をした。次の悪党役は、ハクチが決めることになる。ハクチは、それが嬉しくて不甲斐ない。  ハクチは恋女房に思いを吐露する。恋女房はハクチを励ました。ハクチは次の悪党役を選ぶと決意する。ハクチは茶器を作

        • 美しき迷宮とその記述[4]

          【4節】  私はその朝を森にある黒い天幕で過ごしました。人形もそこにいます。私は朝食を済ませました。行商人が来たのはそのときです。行商人は安全な順路を示した色付き石を踏みながら、大きな背嚢を背負っています。黒い天幕の周辺は、呪術で罠を張り巡らしてあるのです。行商人は小柄な体躯に不釣り合いの背嚢を下ろしました。行商人はお辞儀をします。行商人は2つの包みを私に差し出したのです。人形にも1つの包みを渡しています。包みの1つはやはり戦技の魔導書です。もう1つは、人形に渡す緑の指輪で

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        • 美しき迷宮とその記述
          3本
        • 電脳記号の事件簿
          2本

        記事

          美しき迷宮とその記述[3]

          【3節】  私は魔導書を使用して魔術と戦技を習得します。  基本魔術は火球です。補助魔術は衝撃波にしておきました。階段の上にいる盾とランプを持つ敵へ、私は火球を投擲します。火球は敵に命中すると、盾を貫通してダメージを与えました。通常は炎を被り体当たりする敵を私は安全に倒せたのです。精神力が回復するのを待って私は階段の途中まで登ります。振り返り火球を火炎瓶兵に投擲しました。火炎瓶兵の1体を倒せました。私は階段を下り精神力が回復するのを待ちます。再度、階段を登ると火球で最後の

          美しき迷宮とその記述[3]

          美しき迷宮とその記述[1,2]

          【あらすじ】  魔女を殺しに魔術騎士は、雪山へ訪れる。雪山には城が出現していた。魔術騎士は、紆余曲折を経て魔女の喉元まで迫る。魔女には子供がいた。魔女は降伏して、戦役奴隷となる。 【1節】  私はこれほどに美しい城を見たことがありません。黒い煉瓦の城です。曇天と雪山に、雄大なる城は見栄えがよい。雪山の峰にそれが寄り添っていました。それは自然と調和しています。曇天は喉を鳴らして雷音を轟かせている。私の目的は突如として現れた城の調査です。これは魔女の仕業で間違いありません。

          美しき迷宮とその記述[1,2]

          電脳記号の事件簿【1-2】

           探偵事務所。私はソファーに座る。テーブルには薬酒だ。私は格調高い背広を着ていた。市民は普段着を変えない。これは歴史単位の流行だ。   猫島めいは私の隣に腰掛けていた。いつものドレスだ。  私はメモ帳とペンを見ている。よくある掌サイズのメモ帳だ。私はパラパラと白紙をめくる。ペンも、普通の量産品だ。何の電脳的仕組みもない。 「それは何?」 「『宝石』対策の道具だ」 「メモ帳とは古風ね。何か仕込まれているの」 「いいや。普通のメモ帳だよ。手品ですらない」  「相手は

          電脳記号の事件簿【1-2】

          電脳記号の事件簿【1-1】

          【1幕1場】 「女の虚栄心は、北風のせいだわ」と女。 「だから貴方が温めて、と君は色男を口説くのだね」と私。  和服美人が、ソファーで棒付き飴を舐めていた。当たり前のように居座っている。もう30分はそうしていた。彼女は、事務所が生活圏のつもりでいる。  背の高い女だ。細顔の、長い髪を櫛でまとめている。名前は猫島めいだ。黒い和服には金粉のあしらい。西洋の化粧をしている。金の小鞄を提げていた。  彼女は記号的な美しさを意識している。猫島めいは、和服美人だ。  昼間の探

          電脳記号の事件簿【1-1】